たまたまですが、いわゆる名探偵モノの映画を2本続けて見たのでして、
ひとつは「シャーロック・ホームズの冒険」、もうひとつは「金田一耕助の冒険」であります。


いずれも公開当時は「トンデモ映画」に位置付けられて、
それが故に未見のままだったですが、まあ時期を得てということになりましょうか。


「シャーロック・ホームズの冒険」との邦題だけを見ると、
コナン・ドイルによる同名の短編集があるわけで、正当モノかと思ってしまうところですが、
ネス湖のネッシーと思しき怪物の謎を解くという奇抜さがトンデモない部分でもあったろうかと。


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原題は「Private life of Sherlock Holmes」であって、

(ノベライズの邦題は「シャーロック・ホームズの優雅な生活」)
これをビリー・ワイルダーが撮ったというだけでも話題性ありと思うんですが、
元々は(4時間とも言われる)超々大作の予定がほどほどの長さに切り詰められてしまったあたり、
全体的なまとまりにもいささかの齟齬を生じてトンデモ扱いになったのやもしれません。


見る限りではパロディーというより、パスティーシュなのではとも思いますですね。

劇中のホームズ曰く、出版された事件に記録から思い浮かべるホームズ像は
ワトソン博士による脚色たっぷりだと憤る場面があって、
「それじゃあ、本当のホームズはどんなだったの?」とプライベート・ライフが語られるてな大枠。


いわゆるシャーロキアンであればお楽しみ要素満載なのかもですがで、
ただ何となく好きで読んでる、好きで見ているくらいでは
あんまり突っ込んだところは分かりませんでしたですね。


ですが、断片的なのも含めていくつか盛り込まれた事件のうちで最大のネス湖がらみの大事件では、
とある女性がキーとなって、しかもこれが悪事にかけてはホームズが一目置いて見逃す?てな場面が。
これはホームズが唯一の女性好敵手と認めるアイリーン・アドラーの存在を脅かすものとして、
シャーロキアンには実に刺激的なエピソードなのではと思ったり。


とまあ、こんなふうにホームズの方はさほどでもないトンデモだったですが、
一方、「金田一耕助の冒険」、こちらの方のトンデモぶりはなかなかに凄まじいもの。
確かにパロディーなんでしょうけれどねえ。


刺激的な事件がないときのホームズは

その平々凡々たる時間をコカインで紛らしたりしますけれど、
金田一(TVシリーズで当たり役となった古谷一行)の方も相当に常軌を逸したふうですね。


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警察署に等々力警部(田中邦衛)を訪ねては、

「何か事件はありませんか?あるでしょう?」とすり寄る金田一。
今は大型窃盗団の事件にかかりきりと言う警部に対して
「きっとどこかにおどろおどろしい殺人が隠されているでしょう?」と言ってきかない金田一。


どうやらこれまでの数々の猟奇殺人は、

まるで金田一の求むるところに応じて行われたかのようですね。


また、場面のところどころに

これまで解決した事件の数々を思わせるモチーフが挿入されるのはまだしも、
全く金田一と関わりない角川映画の一場面(「人間の証明」とか)やら、
果てはマキシム(コーヒーです)やハウスデリシャスカレーのCMをパクったシーンなどまで

出てくるという何でもあり状態。


楽屋落ち的にあれこれ気付けば、それはそれで面白いということにもなりましょうけれど、
あまりにやんちゃな作りには付いていきにくく、いささかもてあまし気味にも

なってしまうところかと。


節度ある良質のパロディー…てなふうには、言うに易く行うに難いところとは思うものの、
付いて行くのに疲れてしまうようだと、これもまた見る者おきざりということになりましょうかね。