先に霧ヶ峰から蓼科湖までビーナスライン を通り抜けたと言いましたけれど、
実は途中でビーナスラインを少々外れた寄り道もしておりまして、
その一つが北八ヶ岳ロープウェイに乗りに行った…というお話になります。


北八ヶ岳ロープウェイ


それにしても今回行ってみて「おや?」と思いましたのは、ロープウェイの名称なんですね。
「ピラタス・ロープウェイ」と呼ばれていたのが、いつの間にかですが、

「北八ヶ岳ロープウェイ」と変更になっていたようで。


元々の「ピラタス」はスイスのルツェルン近くにあるピラトゥス山に因んで付けられたもの。

この地とピラトゥス山との何かしら類似性があるのかは知らないことながら、
名称が変わった今となっても山麓駅ではアルプホルンの音色やヨーデルの歌声が流されており、
係員の人たちもスイスなんだかチロルなんだかという民族衣装らしきものを纏っていたりする。


こうしたそれらしき演出しきりなところからすれば、要するに「ピラタス」とは

商売上のキャッチフレーズ的なものだったのでありましょう。


それが「北八ヶ岳ロープウェイ」になったというのは、ロケーションからすればもっともな話だなと。
八ヶ岳と呼ばれる山塊は、真ん中辺の夏沢峠を境にして南八ヶ岳、北八ヶ岳と分けられて、
南が岩稜を頂くアルペン風な険しい山々であるのに対して、

北は森と湖水に囲まれた穏やかな山容と一般に言われているようです。


確かに南の方は主峰の赤岳(2899m)を始めとしてゴツゴツとした岩肌を見せているのに対して、
木々に包まれた北横岳(2480m)や蓼科山(2530m)はずいぶんと違う雰囲気でありますね。


で、北八ヶ岳ロープウェイは北横岳の中腹くらいのところまで登って行くのですが、
近付いてみれば遠目で見るのとはまた違った趣であるなぁと思うところです。


ロープウェイ山頂駅(2230m、ちなみに気温は5度と案内表示されてました)の目の前は
坪庭と名付けられた周回散策路になっていて、ここがまさに遠目の印象、
北八つの一般的な印象とは異なる溶岩台地なのですよ。


坪庭


と、初めて来たかのようなことを言ってますが、もうかなり昔のことながら前に一度、
ロープウェイとは反対側から峠越えで登ってきて、北横岳の頂上を踏み、
帰りにロープウェイで下ったことがあります。


そのときにも気付いたのが、山肌のところどころが白髪交じりのようになっている現象。
「縞枯現象」と言って、何でも100年を超える単位で順々に枯れていくという、

とても珍しいことなのだとか。


北八ヶ岳の縞枯れ現象


ですが、ここでは顕著に見られるようで

北横岳と向かい合って縞枯山と名付けられた山もあるほど。


たぶん縞枯山


その縞枯山と北横岳の鞍部に山小屋があったっけと、
周回路からはちょっと外れて木道を辿った先にコーヒー休憩で立ち寄ることにしました。


コーヒーで休憩@縞枯山荘

かつて山登りにもちいとばかり励んだ頃は小屋泊まりもしましたが、
山の中のことですから平地の旅館のようなわけにはいかないことが多々あって、
今ではついつい楽ちんで便利な方に目が向いてしまいがちながら、
山小屋もいいよなぁ…と思ったものでありますよ。


縞枯山荘からの木道


再び木道を辿って坪庭周回路からロープウェイ乗り場の方へ帰っていくと、

大きな展望も戻ってきます。


坪庭からの眺望


右はじにちょこっと見えている建物がロープウェイ乗り場、

自然保護団体との間でずいぶんともめた経緯があるそうですが、

眼下に広がる八ヶ岳の裾野(写真の左中央から緩く下りカーブを描いています)は

一面の原生林に覆われて、実に見事。


ながら、つくづく日本は可住面積が小さかろうと思うところです。

(切り拓いて宅地にせよなどとは、全くもって言うつもりはありませんが…)


正面に見える山塊は南アルプスで、

肉眼ではひと山奥に日本第二の高峰、北岳(3193m)も見えてました。

右手奥には中央アルプスが見えています。


こうした眺めをお手軽に目の当たりにできるのもロープウェイのおかげなんですが、

どこまで自然を保護して、どこまでだったら目をつぶるか…みたいなことに思い至ると

複雑な気分にはなりますですね。