さてさて、長らく「スカンジナビア紀行」と題して書き続けてまいりましたけれど、
オスロ3泊、移動のフェリーで船中1泊、コペンハーゲンで3泊、帰国便で機中泊、
都合9日間の旅の思い出話は終了ということに。


で、最後の最後にちと雑感めいたことを記しておこうかなと思うのでして、
もっぱらコペンハーゲンのことになります。


これはオスロの印象が薄いとかそういうことで無しに、
コペンハーゲンの方が強烈に過ぎたというだけのこと。
それも良い印象でなしに悪い方なのでありますよ。


フレデリクスボー城 を訪ねる朝のこと。
ホテル最寄りのVesterport駅に行ったところ、何かしらの違和感を抱いたわけです。
日本ではおよそこうではない…と当たり前に思っていることが、どうやら当たり前でないようす。


駅のあちらこちらに投げ捨てられたゴミが見受けられるのですね。
う~む~と思いながら到着したエストー(列車)に乗り込み、つらつら考えてみるわけです。


日本は例えば東京のような大都会であっても、他の国の都市と比べて格段に片付いている、
整然としている、きれいである…とはよく言われるところですし、その通りだとも思う。
一方で、街並みが美しいと言われるような街でもタバコの吸い殻はそこここに落ちていますし、
紙屑なんかもちらりほらり…という状況はこれまでたくさん目にしてきました。


ですから、Vesterport駅でたまたま見かけた状況で、
コペンハーゲンがどうのとか、デンマークがどうのとか言ったとしたら申し訳ないかなと
思い掛けたところで、列車がお隣のNørreport駅に停車して愕然としたのですね。


列車内から見て駅のホームがゴミだらけ!

ベンチの下などは押し込んであるんじゃないかと思うくらいに、です。
目立つのは某ファストフード店の紙袋だったりするですが、
食べてそのまま放って行くのでありましょう。
ともかく写真に撮っておけばよかったと変な後悔をしたくらいという。


このNørreport駅にはエストー(近郊列車)のほかに地下鉄も通っており、
ストロイエ辺りまで歩いて出るにはひとつの玄関口みたいなところで
もともと人通りは多いものとは思います。


ですが、後に帰国便に乗るためここを通る地下鉄で空港へ出ようとした時、
ここの地下鉄路線に乗ってる人々がどうもちと危うさ含みとの直感に捉えられたのでありますよ。


例えばの話ですが、ニューヨークなんかを歩いていて、
ふと足が止まり「この道、入るとまずそうだな…」というふうな直感。
どれほど当てになるのかは、本当に怖い思いをしてみないと分かりませんから、
遠慮しておきたいですが、「君子危うきに近寄らず」という言葉が思い浮かんだりしたわけです。


こうしたことからさらに思い出してみると、
コペンハーゲンの街中の至るところに(本当に何度も目にしましたが)

「スリに注意!」の貼り紙がしてあったなぁと。


さらには、出発前の事前学習?でデンマーク映画の「幸せになるためのイタリア語講座」と

「未来を生きる君たちへ」(このタイトルと内容のギャップったら…)の2本を見たときに、
「これもまたデンマークの現実なんだろうな」と思ったことがよみがえってきたりも。

試みにですが、Amazonで「デンマーク」を検索してみますとこんなタイトルが並んでいます。

  • 消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし
  • デンマーク流「幸せの国」のつくりかた
  • 格差と貧困のないデンマーク-世界一幸福な国の人づくり
  • 世界一幸福な国デンマークの暮らし方
  • なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか
  • 平らな国デンマーク-「幸福度」世界一の社会から

デンマークに行ったと言ってもたかだかコペンハーゲンに3泊したくらいの旅行者が
当然に即断を下せるものではありませんけれど、先ほどの書籍タイトルが本当ならば
たった3日、4日の滞在でも「おお、素晴らしいところだな」という

一端くらい見えても良さそうなもの。


ですが(目の付けどころの問題と言えばそれまでですが)、
散乱するゴミやあちこちで見かけた「スリ注意!」の貼り紙から

デンマークという国の幸福度は推し量りようもなかったかような。


逆に、ゴミがほとんど無くってきれいな街に住まっていられる点での幸福度は
日本が一番ではないですかね。


もちろん住んでみて初めて分かることは山のようにあるでしょうし、
繰り返しになりますが今回見聞きしたことはほんの、ほんの一部分ではありますが、
考えるにどこかしら部分的に取り出して「この国はこんなにいい国です」といっても、
やっぱり部分的なことでしかない。


日本の街がきれいだとして、

日本が手放しでいい国、すてきな国と言えるかは全く別問題ですし。


部分であたかも全体が勝ったの、負けたの言ってたり、

またそれに踊らされたりするとすればそのことがどれほどばかばかしいことであるかを

思わずにはいられないなぁと。


…とまあ、旅日記の最後に

それに相応しいんだか相応しくないんだか(当然、後者でしょうけれど)ということを
長々書いてきましたけれど、デンマークにはまた別の機会に行かなくちゃと思ってはいます。

オーデンセなどの他の都市や風力発電で有名なロラン島などにも脚を伸ばしてみれば、
また別に側面が目にとまることもありましょう。


そうそう、ノルウェーの方にしたって、オスロだけではやっぱり片手落ちで
少なくともベルゲンは訪ねておかねばと思うところです。


欲張りの種は尽きないところながら、
いろんな意味で楽しみも刺激もあったこたびのスカンジナビア紀行の方は
これをもって全巻のおしまいでございます。