えっ?!ここが?という安宿に連れてこられたという、ローマの話の続き であります。


レセプションと思しきところで、マフィアの雰囲気を漂わせた強面のおじさんに
(イタリアで誰彼なくマフィアと言っては申し訳ないですが)
やおらぶっきらぼうにひと言、言葉を投げかけれたのですね。


「ぱっさぽると!」


何だかだと舞い上がっていたのか、その時はこれが何のことやら分からない。
向こうはしきりに「ぱっさぽると」を繰り返していましたが、
そのうちにだんだんと単なる音の羅列としか思えなかったのが

ひとまとまりの単語になってきました。

「パスポートのことか」


ヨーロッパでは国々によって言葉は違うものの、
例えば英語からの類推で意味合いを推測できる可能性があるといったことに

当時は想像もつかず、とんだ手間暇がかかってしまいました。


ところで最初に案内されたのは、ダブルベッドひとつの部屋。
友人と顔を見合わせつつ、このときばかりは何故かはっきりと「No!」と。

後から知ったことですが、イタリア語で否定を表すには英語と同じ綴りの「No」ながら

「ノ」と短く言うようで。

ですが、このときにはそんなことは知りませんから、英語的に「ノー」と強めに伝えたことが、
イタリア語的には大層強調された意思表示と受け止められたかも。
即座にツイン・ベッドの部屋へ案内されましたですよ(「あるじゃないか!」)。


それにしても、シャワーはあるけどろくにお湯もでないような宿ではなかったかと。
でも、他にローマの宿の記憶がないからにはここに2泊くらいしたんでしょう。
他に探すのが億劫だし、どうしてもここじゃあダメとまでは思いませんでしたし。


ですが、旅全体を振り返ってもこのローマの宿が一番ひどかったなあと。
あとはどこをとっても「ローマよりまし」なのですから、
この経験をいち早くしておいて良かったと今となっては思うところでありますよ。


で、ローマではどこへ行ったろうかと考えるわけですが、
たぶんヴァチカンには行っただろうなぁとかコロッセオを見たろうな、
トレヴィの泉にも立ち寄ったろう…てなふうな記憶具合。


どうも宿の印象があまりに強烈だったからでもありましょうけれど、
宿のこと以外にローマで記憶に残っていることといえば、セーターを買ったということでしょうか。


ロンドンですでに感じていたのですが、2月のヨーロッパは漠然と想像した以上に寒いということ。
ローマに行けばいくらかは暖かかろうという予想は甘い見込みであったようで、
この先スイスでスキーをすることを考慮しても、ここはひとつセーターを1枚
現地調達しておこうと考えた次第。


で、テルミニ駅の近辺でまずはウィンドウショッピングとしゃれ込み、

気に入ったものを調達したところ、ずいぶんと後になって日本でも普通に知られるようになった

「Kappa」というブランドでありました。


体育座りしている人が背中合わせになっているロゴをご存じの方も多いものと思いますが、
見た目気に入ったものながら「かっぱとは何ぞ?」と思ったのが正直なところ。


他にエレッセとかの品物が置いてあって「それなら知ってる」というのもあったものの、
如何せんお高いものでしたので「Kappa」を取ったわけですが、
それでも当時のイタリアの通貨単位はリラでありました。


これまたご存知のとおり、日本円に対してイタリア・リラはかなり大きな数字に換算されます。
この旅の当時は100リラで15円くらいになりましょうか。

(その後どんどん価値が下がって、やがてユーロになりましたが)


ですので、仮にこのレートでもって7,000円相当のセーターを買うとすると、
イタリア・リラで46,000リラくらい払うことになるのですから、
結局のところ何だかかなり高価なものを買ったような気になったものです。


しかしながら、そのセーターはスイスのスキー場で活躍したのみならず、
帰国後もその後何シーズン、もしかして何十シーズンも役立ってくれたので

結果的には非常に安い買物したことになりますけれど。
(探してみると、まだ押入れの中に眠っているかもしれない…)


というようなローマ滞在を過ごして(って、観光ネタがちいともでてきません…)、
テルミニ駅から列車でフィレンツェへと向かいました。(つづく)