吾輩は銀ポットである
1858年英国倫敦生まれ。2004年に今の持ち主に出会う。 彼は「現時点の所有者」ではあるが「ご主人様」ではない。 あくまで私がMaseterであり、彼はButler/Servantである。 そんな私から見た持ち主(じょるじゅ)の日常を記す。
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吾輩は銀ポットである。
名前は「じょせふぃぬ」という。


仏帝国皇帝ナポレオンの夫人の名前によりて命名されにけり。
生まれは英国倫敦市、時は1858年なり。
英国出身なれど仏国人の名前をつけられたり、「ジョゼフィーヌ」でなき点はさておく。
かつては英国貴族の家庭にて愛用されしものと思えども既に遥か過去のことなれば記憶も曖昧なり。


(以下口語文にて)
数年前に日本国に渡り、2004年の2月に今の持ち主(「じょるじゅ」と呼称する)の手に渡った。

じょるじゅとしては「割れないティーポットがほしい」と思っていたようだが、そのような理由で私に目をつけるとは何とも生意気な話である。どうやら私の優美な体型、華麗なる装飾模様、高級感漂う断熱用の象牙、150年近い歴史の風格を漂わせる木製の取っ手、磨き上げられた直後の麗しい姿に一目惚れしたものと思われる。

南青山の骨董品店の地下室のテーブルに座って私を眺めること10分以上、私からすれば彼の瞳の中にそれまでの人生の全てが透けて見えるような気がしたが、最後は思い切ったようである。その時の決断力を褒め称えるべきか、究極的に愚かな衝動買いというべきか、私には今のところ分からない。
それからしばらくの間、じょるじゅは「23万の銀ポット買った♪」とあちこちに吹聴していた。

私は彼の職場に連れて行かれて写真まで撮られて社内報に載ったり、上司や友人の家に連れて行かれてはお茶会の主役を担ったり、はてまた職場の人の誕生会のためにお茶を入れたり……当初思っていたよりもいろんな人と接する機会があった。
思い返してみると「こすったらランプの魔人が出てきそう」「銀ポットで入れると何か違うの?」「カレー入れたらおいしそう」「溶かして銀の延べ棒にしてやる」etc...2年余りの間にいろいろと言われた。

折に触れて、じょるじゅは我が物顔で誇らしげにしていた。一時期は思い上がって「銀ポットのご主人様」気取りにもなっていたが、最近は謙虚さも取り戻しつつあるようで、私のことは「時代の預かり物」と再認識するようになってきた。

始めに確認しておくが、あくまで私が主人であり、じょるじゅが執事である。
(「じょるじゅ」の名前は「キャンディ・キャンディ」から拝借することにする)


私の日常といえば平日は1,2回、休日は5回以上も仕事をしなければならず、多忙を極めている。優雅な貴族生活とは程遠く、甚だ遺憾である。毎日愛用されることはポットとしては冥利かもしれないが、もう少し丁重に扱ってほしいものである。
時々眼を光らせてじょるじゅを睨んではみるものの、長期間磨かないで放置されると私の体は輝きが鈍ってしまうため、なかなか思うようにいかない。

出会った当初からすれば扱い方もかなりぞんざいになり日々の不満は募るばかりであるが、他方で観察対象として面白い同居人に恵まれたので、しばらくここにその記録を残すことにする。