自治医科大学の学生生活 Part5 医師国家試験の合格率に関して② | KMMのブログ

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人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

昨日のブログに引き続いて、本日も自治医科大学の医師国家試験の合格率の高さに関して、卒業生の立場から考察してみようと思います。

 
④ 義務年限の存在
自治医科大学はご存知の通り、卒業後一定期間、出身県の医師が不足している地域などで働くことを義務づけられており、これを義務年限といいます。自治医科大学では在学年数の1.5倍の義務年限が課せられます。普通に6年で卒業すれば9年間で義務年限は終了しますが、留年などして在学年数が伸びると、その分義務年限も伸びます。学生の間、義務年限を伸ばしたくないという心理が少なからず働くので、他の医学部の学生より留年などに敏感になっているとは思います。
また誰かが留年したり国試に落ちたりすると、僻地勤務に少なからず影響を与えます。
例えば2年ごとに僻地診療所勤務が交代する予定となっていた場合、もし2個下の後輩が留年やら国試浪人などで医者になるのが1-2年遅れてしまうと、予定通りの僻地診療所勤務の交代が出来なくなり、先輩が僻地診療所勤務の延長を余儀なくされるなどの事態が起きる可能性もあります。もちろんあらゆる可能性を想定しながら各県やりくりしていますが、基本的には留年や国試浪人などはせず、予定通りに上がってきてくれることを期待されています。
義務年限の存在が、留年してはいけない、国試浪人してはいけないという学生の潜在的な意識を生み出している部分はあるように思います。
また自治医科大学側も予定通りちゃんと6年で、各県に医師を送り返さなければいけないという使命感を持って、勉強や実習に取り組ませているというのはあると思います。
 
⑤ 医学教育センターの存在
学年が上がるにつれ、成績が下位の学生が特にお世話になるのが医学教育センターです。
私も成績がいい方ではなかったので、6年生の時はとてもお世話になりました。自治医科大学のいいところとして、成績が下位の学生を放ったらかしにせず、何とか最低限のレベルにまでは押し上げようと、医学教育センターの先生方を中心にしてくれること、これは本当に学生の立場からしてもありがたいことでした。
私も5年生の総合判定試験で合格ラインを下回っていたので、6年生の時は、毎週何曜日かの夜に補講を受けていました。(確か20-30名ほどの学生で受けていた気がします)
補講では、医学教育センター長の先生から色々な質問をされます。された質問で、一つ覚えてるのが「遠位指関節が腫れる病気はなに?」で、答えは変形性関節症(へバーデン結節)と乾癬性関節炎なのですが、関節が腫れる病気と言えば国試的には関節リウマチが有名です。でも実臨床では関節リウマチよりはるかに変形性関節症の患者さんの方が多く、関節リウマチは近位指関節や中手指節関節が主に腫脹し遠位指関節はほとんど侵されない。このように関節の腫れてる部位で疾患が鑑別できるのでしっかり観察するように、みたいな解説をしてもらった記憶があります。
少人数の補講で、色々な質問をされましたが、一つ一つの質問が、実臨床と繋がりを持っていて、勉強になるというか、記憶に残る質問であったように思います。補講を含めた医学教育センターの先生方の協力は、医師国家試験の合格において非常に心強いものであったと、今振りかえると感じます。
 
⑥ 寮生活
私はやはりこれが一番大きい理由じゃないかなと思っています。(あくまで個人の感想にはなりますが)
まず自治医科大学はとても狭いコミュニティーです。学生が勉強する場所は、6年生でいうと自分の部屋、勉強会室(6年生になると勉強会室という、6人くらいの学生で1部屋、全20室程の勉強会室という自習室みたいなものを与えられます。寮の中にあり、勉強会室には各個人の机が用意されています。)、ラウンジと呼ばれる共有スペース、図書館、近くのファミレスか喫茶店(駅前にタリーズがあります)、だいたい皆さんこの辺りのどこかでは勉強しています。なので、試験対策など含め、情報共有がとてもされやすいです。またみんなが勉強している姿が嫌でも目に入るので、勉強しなきゃという感覚が自然と芽生えます。また寮生活なので、成績が下位の学生には、みんなで協力して勉強を教えてあげようみたいな空気が自然と生まれています。また周りがどのくらい知識を持っているか、勉強しているかがすぐに把握できるので、自然と自分の現在の置かれている状況も認識できます。
医学部での勉強は、医学部に入るための勉強とはまるっきり違います。医学部に入るための勉強では、「周りと同じ勉強をしてたら絶対合格しないよ」みたいなことを言われるかと思いますが、医学部での勉強は、周りと同じように勉強すること、これが一番大切です。医師国家試験は9割受かる試験です、みんなと同じような出来であったり、ちょっと劣ってるくらいの出来では、絶対に合格します。大きく集団から外れた者だけが不合格になる試験です。なのでみんなで勉強して、みんなで支えあって、みんなで合格しよう、みたいな自治医科大学の雰囲気が、やっぱりいい結果を生み出すのだと思いますし、それはきっとみんなが寮生活をしているという狭いコミュニティーであることも大きな理由になっていると思います。
 
長々と書いていきましたが、ここまで深く自治医科大学の医師国家試験の合格率の高さを分析した記事はないんじゃないかなと我ながら思います笑。謎に包まれた自治医科大学の中身を何となくでも知ってもらえたのではないでしょうか。
今後も適宜、自治医大のあれこれや、僻地医療について思うことなど書いていこうと思います。
 
自治医大の豆知識: 記念塔という13階建ての建物がある。(私が在学していた時は栃木県では二番目に高い建物と教えられました)
 
ではでは