今世紀に入ってから、成り行きで経理部長から再び東京本社の人事部長になって今日に至ります。

今日のリポートは、二期目の人事部長になってすぐ起きた騒動のことです。

 

私が特に神経をとがらせたのは、新卒の採用活動でした。

経団連に睨まれるような事態を引き起さぬよう、大阪本社の人事部長と東京と大阪の両採用課長とで綿密に打合せを行いました。

会社説明会の開催に始まり選考解禁日より前の採用活動は、東京と大阪の採用課を事務局として東京と大阪の営業本部と管理本部が別動隊となって行っていました。

しかし、東京本社の人事部では給与課長のT君が採用活動に何としても関わろうと、おかしなことを画策しました。

T君は、周囲に「人事部長からの指示」として「インターネットで受け付けたエントリーシートを在籍学校ごとにファイリングするように業務フローが変更になった」と吹聴しました。

そしてT君の出身校の学生のエントリーシートは、彼が管理するように勝手に変更していました。

会社の本当の管理フローは、エントリーシートは学生の希望職種ごとにファイリングし、採用課長が一括管理することになっていました。

しかし、押され弱い一面があった採用課長は私に確認することなく、この“変更”を真に受けていました。

 

選考解禁日より数日前に、T課長による勝手な“変更”が露見しましたが、それは採用課のある社員の機転によるものでした。

その日の午後、受付からの内線電話が採用課へ入り「採用担当のT社員へ学生が会社訪問に来ている」とのことでした。

この内線電話を受けた採用課の社員は、T君ではなく、私と打ち合わせをしてた採用課長へこのことを伝えてくれました。

採用課長は「学生の会社訪問は営業本部宛のはずなのに…」と訝しがりました。

私は「なぜT君なの?彼は給与課長やで」と質しました。

そして私は、その学生のエントリーシートを見せるように求めました。

採用課長はT君の席へ行き、持っていたエントリーシートをすべて回収しました。

私がその学生のエントリーシートを見たところ、T君の大学の後輩で営業職希望でした。

しかし、その大学OBは営業部門にもおり、私は急いでそのOB社員に内線電話を架けて「急で申し訳ないが、学生の会社訪問の応対をしてくれないか?」と頼み、快諾を得ました。

これにより、選考解禁日より前に人事部の人間が学生と接触する事態は回避できました。

 

採用課長には「特定の大学のエントリーシートをなぜT君が保管していたのか?」と質したところ、逆に「部長の指示で変更になったはずでは?」と聞き返されました。

採用課のメンバー全員に「誰が変更を指示したか?」と尋ねたところ、最終的な出所はT君であることがわかりました。

T君へは後で厳重注意することにし、人事部全員を着席させ、改めて「エントリーシートは採用課長が管理するものであり、採用課では希望職種ごとにファイリングする」と改めて周知しました。

 

その後、会議室を予約してT課長を呼び出しました。

私「君の大学の後輩のエントリーシートがなぜ君のとこにあったの?」

T「採用活動は人事部を挙げて行うものではありませんか?」

私「選考解禁日を知ってる?」

T「そんなの守っている会社なんてありません」

私「もしその学生が週刊Bから頼まれて『人事が出てきたら報告する』ってなっとたら、どないなった?」

T「どの会社でもやっていることで問題ありません」

私「週刊Bにデカデカ書かれ、当社は経団連から睨まれるんやで」

T「そんな記事見たことありません」

私「私はいろんな会社の人事部長同士で情報交換してるんや」

T「でも、採用は営業本部なんかに丸投げするものじゃありません」

私「君は給与課長や、採用のことは私と採用課長に任して給与に専念して」

T「僕だって人事部の一員です」

私「今回は特例で厳重注意や」

T「納得いきません」

私「君は会社を重大リスクに晒したさかい、本来なら処分モンや」

T「え・・・!」