皆さんご無沙汰しております、北テキサスの限界院生です。
こちらテキサス州デントンは稀にみる寒波により路面凍結、今週月曜から木曜まで休校という、何ともテキサスらしいカオスな状況になっております。
前回からずいぶん間が空きましたが、その間いろいろあったので久々の更新となります。

1. 論文が採択された

同じく北テキサス大学のPhil Paolino教授との共著論文がForeign Policy Analysisというジャーナルに採択されました。「次のブログの更新はこの論文の結果が決まってからにしよう」と思っていたら、なかなか連絡が来ずヤキモキしてました(笑)。いろんな人からサポートを受けているのに結果が出せない自分に嫌気が差してましたが、目に見える結果が一つ出せて少し安心してます。論文化されたものをお目にかかれるのはもう少し先ですが、プレプリント版はこちらからアクセスすることができます。

それでこの論文の内容なんですが、やってることは非常に単純で、Jack Levyらが2015年にAmerican Journal of Political Scienceで発表した観衆費用についての実験結果が再現できなかったというものです。彼らいわく、言行不一致に由来する観衆費用には二種類あり、一つはFearon(1994)以来定着した考えになっている、武力行使の威嚇を行って、そのコミットメントを破った(backing out)場合に発生する観衆費用です。もう一つは、「武力行使はしないよ」という約束をし、それを反故にした(backing in)際に発生する観衆費用です。後者がLevyらが新しく提示したもので、彼らのサーベイ実験ではbacking inすることで指導者に対する支持が有意に下がるいう結果が得られています。これと似たような発見は、後続のQuek(2017)でも確認されています。

それに対し我々はLevyらの研究の再現実験を行ったところ、backing inしたことで支持が下がるという結果は再現できず、むしろ少し支持が上がるぐらいの結果が得られています。ただし、上がるという結果はモデルによって統計的に有意だったりそうじゃなかったりするので、頑強とは言えないです。ただ、いずれにせよ、支持が「下がる」というエビデンスは一貫して得られませんでした。

我々はこの実験結果の差は、実験を行ったときの外部環境の違いによるものだと推測しています(Levy et al.の実験は2014年の4-6月でオバマがシリア介入のコミットメントを遵守しなかったのが記憶に新しい時期、我々の実験は2021年7-8月でアメリカのアフガンからの撤退が実施されていた時期)。もしそうだとすれば、backing inによって発生する観衆費用はbacking outとは違い、いつでもどこでも発生する類のものではないことになります。

backing inによる国内観衆費用の土台が危ういというのは国際平和を希求する我々にとっては困った話で、なぜかというと「我々の要求を呑んでくれれば、あなたの国を攻撃することはないから安心してね」という平和・安心供与のコミットメントが信憑性を持ちにくくなるからです。だとすれば、どうやったら平和へのコミットメントを他国から信用してもらえるのか。博士号を取得した後、数年かけて答えを見つけていこうと思っています。


2. インタビューに呼ばれた

就活の方はどうなってるかというと、60校以上に応募して最近まで全く鳴かず飛ばずでしたが、2週間前にようやくとある大学からインタビューのオファーがあり、先週月曜にZoom面接を受けてきました。今はジョブ・トークに呼ばれるかどうかの結果待ちです。まだ何の保証もないので大学名は出さないでおこうと思いますが、思いもよらないところから来ました(笑) ちなみにその面接はいろいろと面白いことがあったので、落ち着いたらこのブログでも詳細を書こうかなと思っています。ここからオファーが来ないとテニュア・トラックの職を得るのは望み薄になってはしまいますが、贅沢言っていられないので引き続きVisitingのポジションだろうがなんだろうが応募していく所存です。


3. 博論の一章をジャーナルに投稿した

最後に博論がどうなっているかですが、three-essay formatのコアである三章分は完成し、そのうちの一章を完成させてジャーナルに投稿しました。今までチャレンジしたことのないレベル感のところに提出したので良い結果が来るかは不明ですが、個人的には結構いい出来だと思ってるので、結果が楽しみです。博論自体も今は序章と終章を書き上げている段階で、それも大体終わったので、遅くとも5月には博論のディフェンスができそうです。母が「あなたが博士号を取るまで私はコーヒー断ちをする」とかいう謎の誓約をして急かされていたのですが、ようやく大好きなコーヒーを飲ませてあげられそうでよかったです(笑)



将来は何も約束されていないものの、ようやく研究者人生も軌道に乗ってきたかなと感じています。今回の論文一本で満足せず、今後も爆裂に研究して業績を積み上げていきたいです。
というわけで今回は以上です。ではではー。