ご無沙汰しておりました。
アメリカの大学では春学期も終盤戦です。

前回の更新から空白の期間何をしていたかというと、International Studies Association(ISA)Midwest Political Science Association(MPSA)という二つの学会の年次大会に参加してきました。ISAは4月6-9日、MPSAは4月14-18日の日程で開催されました。自分はISAではペーパーの発表、MPSAではペーパーの発表とラウンドテーブルでの討論をしました。

自分の経験上、政治学の国際学会は全体的にゆるい(発表者はおろか司会や討論者が不在のことがある、事前にペーパーを送らないなど)ので正直あまり期待していなかったのですが、思いがけずめちゃめちゃ楽しかったです。参加してよかったなと思いました。

まずペーパーの発表についてですが(ちなみにISAとMPSAで発表したペーパーは同じです)、今回は観衆費用と大衆のパーソナリティの関係についてのもので、パイロット実験の結果について報告しました。これから本実験を実施する予定なので、その前に実験デザインについてコメントもらうのが目的でした。

結論から言えば両方の学会でとても有益なコメントをもらうことができました。まず、ISAの方は、The First Imageというタイトルのパネルで発表しました。ここで国際関係論にあまり詳しくない方に説明すると、国際的な現象を説明する時のアプローチとして大まかに分けて第一イメージ、第二イメージ、第三イメージの三つがあります(詳しくはWaltz 1959)。第一イメージは個人的要因による説明、第二イメージは国内的要因による説明、第三イメージは国際的による説明のことを指します。例えば、A国がB国に戦争をしかけたことを説明したいと思ったときに、それぞれのアプローチの例を挙げると、

・A国の政治的指導者が好戦的だったから(第一イメージ)
・A国が権威主義体制だったから(第二イメージ)
・A国とB国の国力が(不)均衡だったから(第三イメージ)

といった具合です。ざっくりですが。

それでISAの話に戻りますが、自分は観衆費用や評判、より広く言えば危機交渉、強制外交、国際協力に興味があり、必ずしも第一イメージに分類される研究に詳しくありません。その点、ISAのパネルでは普段から第一イメージを主戦場としている研究者ばっかりが集まっていたので、「パーソナリティってIRでどれだけ重要な要因なんだろうね?」「causal chainの上流すぎてあまり直接的な影響は与えてないように思える」といったコメントをもらい、「なるほど、第一イメージの人からは自分の研究がこう見えるのか」という気づきが多かったです。

他方、MPSAでは方法論的なアドバイスをたくさんもらいました。ISAでのパネルでは討論者含め、普段から(サーベイ)実験をしている人はいなかったのですが、MPSAではそのような討論者にめぐまれたので、「その理論的な議論だったら別の質問項目を入れた方が良いのではないか」「性格によってサーベイに参加する人が違ったりしないの?」といったコメントをもらいました。UNTは観察データを使って計量分析する人が多いので、実験のデザインについてアドバイスもらえる機会が得られたのは非常に大きかったです。

また、MPSAではHow to Survive Graduate School?というラウンドテーブルのパネリストとして参加しました。この話をもらった時は断る理由もなかったので引き受けましたが、正直「Surviveしてる途中でSurviveしきってないんだから自分に聞くなよ」と思ってました(笑)それでも、自分の経験を交えて実践的なアドバイスをなるべく面白おかしく伝えたり(成功したか不明ですが)、また他のパネリストと「Surviveの定義は?就職先どんどん減ってるし、アカデミアに残ることだけがSurviveなのか?」「コースワーク終わってABD(All But Dissertation)になった後のモチベーションの上げ方は?」といった点について議論できたのはとても楽しかったです。これから博士課程への進学を考えている学部生も何人か来てたので、彼らにとって有意義な話を出来ていたらよかったなと思っています。

というわけで、ISAとMPSA両方とも自分は楽しめました。研究のネタがあるかわかりませんが、可能なら来年も出たいですね。
今回はこのへんで。ではでは。

Waltz, Kenneth Neal. Man, the state, and war: A theoretical analysis. Columbia University Press, 1959.