7月5日で割り振られていた夏学期のTeaching Assistant(TA)の仕事が終わりました。先日もちょっと書きましたが、今回のTAは1回分自分で授業しなきゃいけなかったりで結構大変でしたが、なかなか良い経験になりました。

ところで、アメリカの大学でTAがどんな仕事してるのか、日本ではあまり知られてないような気がします。なので、今回はTAの具体的な仕事内容について、自分の経験を踏まえながら紹介したいと思います。上から下に行くにつれて大変度が上がっていきます。ただ、北テキサス大学の政治学部での話なので、他の大学では全然違うことやってるかもしれません。そのへんはご容赦ください。

1. 授業に出席・試験監督
一番シンプルな仕事ですね。学生の様子見て授業内容をどのくらい理解できてるか確認したり、授業前後で質問に来る学生がいるのでそれに対応したりします。

あと試験日には試験監督以外にちょっと仕事が増えたりします。問題用紙を印刷したり、試験でマークシート(うちの大学ではscantronと呼んでます。最初なんのことかわからなかった)を使う場合には、各問題用紙にマークシートを挟んだりして配りやすくしたり、試験後はマークシートをテスト・センターに持っていって採点してもらったりします。

2. オフィス・アワー
TAは授業内容や授業運営で質問がある学生のためにオフィス・アワーを開くことが義務づけられています。どのくらいの時間オフィス・アワーを開くかは、先生によって方針が違います。週1回1.5時間でオッケーという先生もいれば、週2回2時間ずつを要求する先生もいました。また、オフィス・アワーの時間帯は都合が悪いという学生には、別の日や時間帯にアポイントを取ってもらって対応することもあります。

ただ基本的にオフィス・アワーの間に学生はほとんど来ません。試験前後は、試験内容や範囲の確認や、試験の点数への異議申し立てなどで来る学生が若干増えますが、それ以外は平穏そのものです。なので、オフィス・アワーの時間はほぼ自分の研究・勉強に当てられるので、あまり負担になりません。

3. メールへの対応
先生や学生からメールがコンスタントに来るので、それに返信します。授業によってどのくらい来るかは変わりますが、平均取ると1クラスにつき週に10~20通くらいでしょうか。ただ、入れたての頃にオンライン課題のシステム・エラーが原因で一日に50通ぐらいメールが来たことがあり、その時はすごいめんどくさかったです笑 ただ、TAやりたての頃は結構ストレスに感じてましたが、長くやってるとだいたいパターンわかってくる(e.g. 課題が開けない、表示されている課題・試験の点数が正しくない)ので、余裕を持って対応できるようになります。シラバス読んでないと思われるような学生からの質問も非常に多いので、シラバスの内容を頭に入れておくと対応がしやすくなります。

4. 試験問題・課題のチェック
先生から試験問題や課題のチェックを頼まれることがあります。試験問題の場合は、文法の間違い・スペルミス・問題文で不明確なところなどが無いか、正解とされている選択肢が本当に合っているかどうかを確認します。自分が春学期に担当したリサーチ・デザインの授業では、ラボ・セッションのハンドアウトの結果をSPSSで復元できるかチェックするということを行っていました。SPSSに触るのは久しぶりだったので、勉強になりました。

5. 試験・課題の採点
このへんから段々大変になってきます。マークシートの試験やオンラインのクイズであればTAが採点する必要はないのですが、先生によっては記述式の問題を採用しています。その場合、先生からもらったルーブリックをもとにTAが採点します。ルーブリックには採点基準が明記されているわけですが、すべての可能性を網羅するのは無理なので、TAの裁量に任されている部分もあります。その場合、採点結果に納得できない学生に対応するのはTAの仕事になります(もちろん先生が介入する場合もありますが)。したがって、TAは自分の中で採点基準を明確にし、それを説明できるようにしなければなりません。当然、授業内容がわかってないと一貫した説明が出来ないので、学生も不満をためることになります。なので、1点目と関連しますが、授業に出て学生と一緒に講義を聞くのは、わりと重要です。

6. レビュー・セッション
秋学期のTAで、試験前にレビュー・セッションを開いてくれと頼まれたことがあります(1時間×2)。レビュー・セッションはその名の通り、試験範囲内で学生がよくわからないところについて質問してもらって、それについて教えたり一緒に議論したりする場のことです。正直パニックでした(笑)。というのも、US Political Behavior and Policyの授業で、それまで国際関係や比較政治、もしくは方法論についてはある程度勉強していたものの、アメリカ政治は自分にとってなじみの無い領域でした。なので、教科書やスライドを読みこんで、理論から例としてくる法案に至るまで調べて、その上でどんな質問が来そうかリストアップして対策してました。当日はまぁなんとかなったものの、同じ授業のアメリカ人のTAが一緒にいてくれなかったら乗り切れてなかったでしょう。コースワークと平行してレビュー・セッションの準備をしていましたが、結構負担になってました。

7. 試験問題・課題を作る
これもUS Political Behavior and Policyでの仕事でしたが、中間・期末試験の選択式問題を作るように指示されたことがありました。これもなかなかきつかったです。教科書やスライドを見て問題を作ってましたが、授業内容にあまりなじみが無く、問題文やダミーの選択肢をうまく作れないなと悩むことが多かったです。他のTAはわりとすぐ作れたみたいでしたが、自分は毎回8時間ぐらい持っていかれてました。あと自分は経験したことがないですが、他のクラスでは毎週のクイズをThe Texas Tribuneを基にTAが作成していたみたいです。

8. 先生の代わりに授業をする
最後に、先生が学会等でその日に授業できない場合には、TAが代わりに授業することがあります。自分は今まで2回そういった経験がありますが、1回はリサーチ・デザインの授業で内容もほとんど理解できてますし、しかもラボ・セッションで話すこともあまり無かったので楽でした。もう1回はこの夏のUS and Texas Governmentでしたが、こっちは正直パニックでした(2回目)。準備期間が1週間ぐらいしか無く、トピックがアメリカおよびテキサスの議会についてだったので全く詳しくなく、スライドはあるもののどうやって授業を進めていけばいいのか途方にくれていました。まぁ、悩んでところで、スヌーピーよろしく「配られたカードで勝負するしかない」ということで、アメリカと日本の議会制度を比較したり(e.g.両方ともbicameralismでHouse of Representativesは任期が短い)、たまたま議会におけるrepresentationの図がたくさんあったのでそれについて議論したり(e.g. 女性議員の比率が低いのは、incumbent advantageやgender stereotypeで説明できる?)して、なんとか時間を埋めました。自分から論点を持っていって学生に投げかければ、意外とこっちのペースで授業が進められることに気づいたのは収穫でした。



他の仕事を忘れてるかもしれませんが、だいたいここに書いた内容で網羅的になってるはずです。おそらくここで書いたTAの内容は日本の(少なくとも一部の)大学とあまり変わらないと思います。ただ日本人留学生にとって辛いのは、当たり前ですがこれらの業務を全て英語でこなさないといけないところです。留学する前に、留学相談をしていた先生にTAをやることになりそうだと伝えた時、「あー、英語力伸びるからいいんじゃない?」と言われましたが、実際に体験してみてなるほどなと思いました笑

外部資金やFellowshipでTA義務が免除されている留学生も、特にトップスクールでは多いと思いますが、自分はTAの仕事ができていることをありがたく感じています。自分はどうやら時間がある程度制約されている方が効率的に研究できる人みたいなので、TAがちょっと忙しいぐらいの方が研究が進んでるなと感じることが多いです(だから夏学期のTAが終わって逆に不安です笑)。また、TA自体も教育業績になりますが、そこで経験を積んでいけば、1コースを丸々担当するTeaching FellowやInstructorとして雇用される可能性が高まります。履歴書でシグナルできることが増えますし、なにより給料が増えます。なので、研究に費やす時間が減ったとしても、Ph.D.の一年目にTAとして経験を積むのは悪くないなと思っています。

ちょっと長くなりましたが、普段アメリカの大学院生がどんなことやってるのか少しでも伝わったら幸いです。ではでは、また。