先週連絡が来て、今年11月にカンザスで開催するPeace Science Society(International)(以下、PSSI)の年次大会にプロポーザルが採択されました。Peace Science Society(International)はJournal of Conflict ResolutionとConflict Management and Peace Scienceという、紛争研究・平和研究をしている人なら定期的に読んでいるジャーナルを発行している学会です。有名な学会なので、アメリカに来てからずっと参加してみたいと思っていました。

今回は共著でポスターです。PSSIは3月に行ったInternational Studies Associationと違って小規模で、参加者は毎年数百人だそうです。来る人みんなすごい人たちばっかりなので、今から緊張してます。また、実は今までポスター発表をしたことが無いので、作り方勉強しないとなと思っています。

ところで、(このブログを読んでいる人は大学院生含め研究者の人が多いとは思いますが)なぜ研究者は学会に行くのか?と疑問に思う人がいるかもしれません。

自分の研究を発表することの意義は比較的自明のことだと思いますのでそれ以外のことで言うと、個人的には市場調査とコネクション作りの意味合いが大きいと思います。

ここでいう市場調査は、「自分の分野で今どんな研究が行われているのかを知る」という意味で使っています。学会は基本的に、未公刊の研究が発表される場です。学術雑誌で公刊される前の段階なので、理論や分析が未発達なものも多いですが、そのぶん多くの新しいアイデアに触れることができます。「なるほど、今の研究の最先端はこういう方向性か」という感覚を得られます。

学術雑誌で発表されたものは、査読プロセスに時間がかかるため、研究のアイデアとしては数年前のものであることが多いです。一つを例を挙げると、ついこの前How Do Observers Assess Resolve?(Kertzer et al. 2019)という論文がBJPSからFirst Viewで公開されましたが、その筆頭著者であるハーバード大学のJoshua Kertzer教授は、このプロジェクトを始めたのが5年前だと自身のTwitterで述べていました。もちろんジャーナルの論文を読むのは研究活動に欠かせませんが、それだけだと研究動向にキャッチ・アップするのは難しくなります。だから学会に参加する必要が出てくるわけです。

コネクション作りとしての学会の役割も非常に重要だと思います。誰が自分の研究関心と近いことをしているのか知り、また自分のやっていることを他の研究者に知ってもらうことで、情報収集のスピードと効率が上がりますし、また共同研究の機会も増えます。また、同じコミュニティに属していると他の研究者から認めてもらうことは、研究はもちろん就職活動においても大きなメリットです。

この二つが大きいと思いますが、それ以外にも学会参加を毎日研究するインセンティブとして利用することもできます。同じ考えの人は多いと思いますが、自分みたいに締め切りが無いとひたすらだらけてしまう人は、学会で発表する機会を設けて無理やり研究する状況を作ることで、研究を進めるモチベーションを上げられます。

他にもメリットはたくさんあると思いますが、いずれにせよ学会発表は研究活動の重要な一部分です。とはいえ、かくいう自分も学会発表の経験は数えるほどしかないので、毎年行くのを当たり前にしていきたいと思います。とりあえず、夏の間はPSSIのポスター作成を頑張ります。

Kertzer, J. D., Renshon, J., & Yarhi-Milo, K. (2019). How Do Observers Assess Resolve?. British Journal of Political Science, 1-23.