どうもお久しぶりです。留学準備で結構忙しくしてます。
8月中旬に渡米するのですが、寮の選考に漏れてしまったようで、off campasでなんとか探してくれと言われました。地味に危機です。

さて本題ですが、ここのところ実験のプロジェクトを進めていて、実験の論文を結構読むようになりました。
というわけで、最近読んだ論文で面白かったものを紹介します。

最近読んだ中だと、Busby et al. (2017)は楽しい論文でした。この論文は政治的な意見は政治と全然関係の無い出来事に左右されるのかを検証しています。そして、アメリカン・フットボールの試合で、勝ったオハイオ州立大学では試合の前後で大統領への支持率が上がり、負けたオレゴン大学では下がるという実験結果が報告されています(ただし効果は長続きせず、試合の一週間後にはその効果はすでに確認できなくなっていたとのことです)。この結果が日本にも適用できるとするならば、この前実施れた世論調査で安倍政権の支持率がどの社でも軒並み上がってたらしいですが、安倍政権が実施する政策が評価されているわけではなくて、単にワールドカップのコロンビア戦で勝ったからかもしれませんね(ちなみにこの論文はとっても短くて、たった5ページしかありません。Journal of Politicsは近年、重要な発見を簡潔に報告するShort Articlesを多く掲載しています。短い論文は気軽に読めるので結構好きです)。

あとBarabas and Jerit (2010)も面白かったです。この論文は同じ仮説を同じようなデザインでサーベイ実験と自然実験で検証した場合に結果が異なるのかについて議論したものです。そこでは、サーベイ実験では情報を与えた場合には被験者の政治的知識が増加し態度が変化したが、自然実験の場合にはそのような効果は確認できなかったと書かれています。サーベイ実験の場合にはトリートメントの効果を強制的に入れられるけれども、自然実験の場合にはもともと政治的知識が多かったり政治に関心のある人にしか情報が届かないからこういうことが起こるのでは、と議論しています。実験は外的妥当性が問題とされることが多いですが、同じ「実験」という名のつくものでも顕著に結果が違うということがありうるというのは結構面白かったです。

政治学における実験は非常に奥が深いということを感じる毎日です。


Barabas, J., & Jerit, J. (2010). Are survey experiments externally valid?. American Political Science Review, 104(2), 226-242.
Busby, E. C., Druckman, J. N., & Fredendall, A. (2017). The political relevance of irrelevant events. The Journal of Politics, 79(1), 346-350.