今日は学術雑誌について。自分がやっているような紛争・安全保障研究だと、結構有名なものとしてはInternational Security(IS)Security Studies(SS)Journal of Peace Research(JPR)Journal of Conflict Resolution(JCR)がある。しかし、ちょっと読んでみるとわかるが、前者二つと後者二つでは毛色がずいぶん違う。

 

ISとSSで出版されている論文は、そのほとんどが定性的な研究である。ゲーム理論や計量分析を用いた論文は、たまには見かけるが、ほとんど見かけない。どの論文も端的に言って、文字ばっかりである。一次史料をふんだんに利用した歴史研究もよく見かける。政策提言をする論文は多い(特にIS)。これは、ジャーナルの目的と関係している。ISのSubmission Guidelineを見ると、あまりにもテクニカルな論文は載せないよ、と書いてある。専門的な知識が無くてもアクセスできるような知を生産し提供する目的があるからだろう。自分が書いているペーパーは定性的研究のそれなので、投稿するとしたらこちらになるだろう(実証のクオリティがまだまたなので、ほぼ間違いなくrejectされるだろうが)。

 

一方、JPRやJCRに載るような論文は、そのほとんどが計量分析やゲーム理論を用いている。これらのジャーナルでは議論が一般的で汎用性の高い理論的・実証的な論文が多く出版されている。他方で、テクニカルな論文も多く、最近まともに読めるようにはなってきたが、それでも「これはどういう統計モデルなんだろう?」とか、「計算複雑すぎて均衡導きだせる気がしない……」といった論文も少なくない。

 

このように、国際政治学の分野だと目的や分析方法によって棲み分けがされている。欧米で出版されている政治学関連の学術雑誌だと、トップのものはもう定量的研究ばっかりで、定性的研究は残念ながら隅に追いやられている。APSR、AJPS、JOPといったトップジャーナルは読み手を極大化したいと考える傾向が強いので、一般的な議論がしやすい定量的分析の論文を採択しやすいのだろう。そういう意味では、ちゃんと定性的研究のプラットフォームが存在する国際政治学は、定性的研究者にとっては比較的恵まれた分野であると言えるかもしれない。

 

ただし、じゃあ定性的研究と定量的研究で全然対話がないのかといったら、そんなこともない。ISやSSの論文でJPRやJCRの論文が引用されることは多いし、逆も然りである(Bennett, 2015)。どちらの方法にも長所と短所があり、両者が相互補完的な関係にあるという理解が浸透している国際政治学の現状が反映されているのかもしれない。

 

いずれにせよ、ジャーナルの性質を把握することは、知識を得る上でも大事なことだし、自分の論文を投稿する際にも極めて重要なことである。

 

Bennett, A. (2015). Found in Translation: Combining Discourse Analysis with Computer Assisted Content Analysis. Millennium-Journal of International Studies, 43(3), 984-997.