8月頭に言及したエセックス大学のサマースクールですが、先日修了証もらえました。テストはかなり自信無かったですが、無事修了できてよかったです。ぐふふ。
とはいえ、計量分析のトレーニングは全く足りてないので、集中的にやる時間がほしいです。次はICPSRかな。
さて、今回は領土と紛争の関係について。日本も北方領土・尖閣諸島(釣魚島)・竹島（独島）と領土問題を抱えているが、世界的に見て領土問題は全然珍しくない。領土問題が国家間紛争や内戦に発展するケースは数えきれないほどある。当然のことながら、領土と紛争の関係は、国際政治学の主要な関心の一つとなっている。
紛争のタイプにはいろいろあって、領土を争うもの、政権を争うもの、資源を争うものなどなどがある。このうち、領土を巡る紛争がエスカレートしやすく、紛争も大規模で長続きしやすいことがわかっている（例えばGoertz and Diehl 1993）。そりゃそうだろって感じもするが、だから紛争の争点（issue）は紛争研究においてすごい大事だよね！って、例えばDiehlなんかは主張したりする(Diehl 1992)。
では、なぜ国家は領土を巡って争うのか。この問いに対してはいくつか説明の仕方がある(Toft 2014に依拠)。まず、領土には戦略的・生来的価値があるからだ、という答え方がある(いっぱいあるけど、例えばHuth 1998)。あるいは、象徴的な価値があるから、という説明の仕方もある（Hassner 2003）。Fearonなどは、領土は分割不可能だと考えられがちだからだとしている(Fearon 1995)。戦争やる気満々だぞ！という評判(reputation for resolve)を築くためだという主張する人もいる(Wiegand 2011)。領土は紛争の機会を国家や政治的指導者に与えるからだという主張もある(Toft 2002)。いずれも、理論的・経験的に根拠のある主張である。
というわけで、領土問題の解決は、紛争発生の蓋然性を低める上で、極めて重要である。GiblerとMillerは民主主義と領土紛争を結びつけていて、民主国はそもそも領土問題が解決済みであることが多いので、結果として民主国は戦争において、短い期間で勝利を収めることができるのだ、と議論している（Gibler and Miller 2013）。彼の一連の研究は、民主的平和論への挑戦でもあるけれど、領土問題が解決される条件を特定しているものであるとも言える。領土と紛争の関係についての研究は、今後も重要性を保ち続けていくだろう。
Diehl, P. F. (1992). What are they fighting for? The importance of issues in international conflict research. Journal of Peace Research, 333-344.
Fearon, J. D. (1995). Rationalist explanations for war. International organization, 49(03), 379-414.
Gibler, D. M., & Miller, S. V. (2013). Quick victories? Territory, democracies, and their disputes. Journal of Conflict Resolution, 57(2), 258-284.
Goertz, G., & Diehl, P. F. (1993). Enduring rivalries: Theoretical constructs and empirical patterns. International studies quarterly, 37(2), 147-171.
Hassner, R. E. (2003). “To halve and to hold”: Conflicts over sacred space and the problem of indivisibility. Security Studies, 12(4), 1-33.
Huth, P. (1998). Standing your ground: Territorial disputes and international conflict. University of Michigan Press.
Toft, M. D. (2002). Indivisible territory, geographic concentration, and ethnic war. Security Studies, 12(2), 82-119.
Toft, M. D. (2014). Territory and war. Journal of Peace Research, 51(2), 185-198.
Wiegand, K. E. (2011). Militarized territorial disputes States’ attempts to transfer reputation for resolve. Journal of Peace Research, 48(1), 101-113.
とはいえ、計量分析のトレーニングは全く足りてないので、集中的にやる時間がほしいです。次はICPSRかな。
さて、今回は領土と紛争の関係について。日本も北方領土・尖閣諸島(釣魚島)・竹島（独島）と領土問題を抱えているが、世界的に見て領土問題は全然珍しくない。領土問題が国家間紛争や内戦に発展するケースは数えきれないほどある。当然のことながら、領土と紛争の関係は、国際政治学の主要な関心の一つとなっている。
紛争のタイプにはいろいろあって、領土を争うもの、政権を争うもの、資源を争うものなどなどがある。このうち、領土を巡る紛争がエスカレートしやすく、紛争も大規模で長続きしやすいことがわかっている（例えばGoertz and Diehl 1993）。そりゃそうだろって感じもするが、だから紛争の争点（issue）は紛争研究においてすごい大事だよね！って、例えばDiehlなんかは主張したりする(Diehl 1992)。
では、なぜ国家は領土を巡って争うのか。この問いに対してはいくつか説明の仕方がある(Toft 2014に依拠)。まず、領土には戦略的・生来的価値があるからだ、という答え方がある(いっぱいあるけど、例えばHuth 1998)。あるいは、象徴的な価値があるから、という説明の仕方もある（Hassner 2003）。Fearonなどは、領土は分割不可能だと考えられがちだからだとしている(Fearon 1995)。戦争やる気満々だぞ！という評判(reputation for resolve)を築くためだという主張する人もいる(Wiegand 2011)。領土は紛争の機会を国家や政治的指導者に与えるからだという主張もある(Toft 2002)。いずれも、理論的・経験的に根拠のある主張である。
というわけで、領土問題の解決は、紛争発生の蓋然性を低める上で、極めて重要である。GiblerとMillerは民主主義と領土紛争を結びつけていて、民主国はそもそも領土問題が解決済みであることが多いので、結果として民主国は戦争において、短い期間で勝利を収めることができるのだ、と議論している（Gibler and Miller 2013）。彼の一連の研究は、民主的平和論への挑戦でもあるけれど、領土問題が解決される条件を特定しているものであるとも言える。領土と紛争の関係についての研究は、今後も重要性を保ち続けていくだろう。
Diehl, P. F. (1992). What are they fighting for? The importance of issues in international conflict research. Journal of Peace Research, 333-344.
Fearon, J. D. (1995). Rationalist explanations for war. International organization, 49(03), 379-414.
Gibler, D. M., & Miller, S. V. (2013). Quick victories? Territory, democracies, and their disputes. Journal of Conflict Resolution, 57(2), 258-284.
Goertz, G., & Diehl, P. F. (1993). Enduring rivalries: Theoretical constructs and empirical patterns. International studies quarterly, 37(2), 147-171.
Hassner, R. E. (2003). “To halve and to hold”: Conflicts over sacred space and the problem of indivisibility. Security Studies, 12(4), 1-33.
Huth, P. (1998). Standing your ground: Territorial disputes and international conflict. University of Michigan Press.
Toft, M. D. (2002). Indivisible territory, geographic concentration, and ethnic war. Security Studies, 12(2), 82-119.
Toft, M. D. (2014). Territory and war. Journal of Peace Research, 51(2), 185-198.
Wiegand, K. E. (2011). Militarized territorial disputes States’ attempts to transfer reputation for resolve. Journal of Peace Research, 48(1), 101-113.