昨日、合同指導があった。これは、自分の研究について報告して、同じ領域(自分の場合は国際関係領域)の諸先生方から、集合的にシバかれるというイベントである。なんか、今までに経験したことないほど緊張してしまい、報告の直前には吐きそうになるぐらいだったが、なんとかかんとか乗り切れた。修論提出まで気を抜かずにいきたい。

合同指導で忙しくて更新滞っていて申し訳ありませんでしたが、今回は、民主的平和論と経済制裁の関係について。民主的平和論とは、民主国同士は戦争しないという経験的観察である。どういう因果メカニズムで民主国同士が戦わないのかは実際よくわかっていないのだが、ともかく民主国同士は戦わないという観察自体は相当頑健なものである。他方、経済制裁は、他国の望ましくない行動を抑止あるいは変更させるために行われ、外交や軍事介入などとともに、第三者介入(third party intervention)の手段の一つであると考えられている。

経済制裁については、そもそも効果あんの?といった類の議論が活発であるが、どういう国がどういう相手国に経済制裁しようとするの?といった議論もある。Lektzian and Souva(2003)やCox and Drury(2006)は民主的平和論を拡張して、民主国同士では経済制裁しないという主張を展開している。民主国は概ね、共通の利益を共有し、政治的制度によって指導者はその権限を制限され、高い水準の経済的交流があり、そのすべてが民主国同士の戦争を妨げる要因となりうる。同様のロジックが、経済制裁にも当てはまるのではないか、というわけである。上記の研究は、ともに民主国同士は経済制裁を行わないという分析結果を報告している。これらの研究を批判しているのがHafner-BurtonとMontgomeryである(Hafner-Burton and Montgomery 2008)。らは、先行研究の理論的・方法論的な問題を修正すると、民主国同士では経済制裁をしないという傾向は見られなくなる、と主張している。さらに最近の研究では、Wallace(2013)が同様のリサーチ・クエスチョンで研究しており、民主的平和論と経済制裁のproponentsもopponentsもちょっと極端で、もっと穏当な議論や分析が必要なんじゃないと主張している。

民主的平和論の主張をそのまま経済制裁に持ち込むという発想はちょっと安直なように感じるけど、どういう国が、どういう国に対して経済制裁を行うのか考える手がかりとしては、なかなか面白いんじゃないかなと思う。

あんまり議論されていないように思うのは、第三者介入の手段にもいろいろあるけど、ある時は非軍事的な手段(経済制裁とか)を選び、ある時は軍事介入を選び、またある時は複数の手段を組み合わせて用いるのか、という論点だと思う。なにか理由があって、「経済制裁じゃなくて、外交による解決を目指そう」「軍事介入ではなくて、経済制裁にしよう」とか考えるはずなんだけど、いくつかある手段から一つないし複数を選ぶ動機が、これまでそんなに議論されてこなかったように思う。僕があまり知らんだけかもしれないけど、外交的手段による第三者介入のデータセットもできたのもここ十年以内のことだし(Regan et al. 2009)、まだまだ開拓されていない分野のように思う。

おそらく、国家は第三者介入の手段を自由に選べるという前提があるから、これまであまり研究されてこなかったのかもしれないが、僕はそんなことないと思う。国家は第三者介入を検討する際に、どのような手段が一番効果的なのか吟味しているはずであり、どのような戦略的環境に置かれているかがその判断に大きく関わってくるはずである。そこがわからないと、それぞれの手段の有効性を見誤ることになるから、大きな研究の重要性を有しているんじゃないかなー、と個人的には思う。

Cox, D. G., & Drury, A. C. (2006). Democratic sanctions: Connecting the democratic peace and economic sanctions. Journal of Peace Research, 43(6), 709-722.
Hafner-Burton, E. M., & Montgomery, A. H. (2008). The hegemon's purse: No economic peace between democracies. Journal of Peace Research, 45(1), 111-120.
Lektzian, D., & Souva, M. (2003). The economic peace between democracies: Economic sanctions and domestic institutions. Journal of Peace Research, 40(6), 641-660.
Regan, P. M., Frank, R. W., & Aydin, A. (2009). Diplomatic interventions and civil war: A new dataset. Journal of Peace Research, 46(1), 135-146.
Wallace, G. P. (2013). Regime type, issues of contention, and economic sanctions: Re-evaluating the economic peace between democracies. Journal of Peace Research, 50(4), 479-493.