友達から「経済的相互依存が紛争を抑止するっていう実証研究ってどれくらいあるの?」と聞かれたのだが、実際どうなんだろうか。不勉強なもので、体系的にサーベイしたことがないので、よくわからない。

経済的相互依存が深化すると国家間紛争が減るとする人たちは、それが紛争のコストを高めるということを前提に議論している(はず)。貿易や人の交流などで経済的・社会的な利益を得ている国家は、あえて紛争を引き起こしたりはしないかもしれない。逆に上記の主張に懐疑的な人たちは、経済的相互依存なんかで戦争が防がれるんなら、第一次世界大戦も第二次世界大戦も起きてねーだろ!などと述べたりする(Gaddis 1987とか)。確かに反例はたくさんある。

で、体系的な実証研究はというと、僕の知ってる限り経済的相互依存と平和に正の相関関係があると示している研究の方が多いような気がするけど(e.g. Gartzke et al. 2001。あと他の研究でもよく統制変数に入ってる)、逆もあったり(例えばBarbieri 1996)、無相関のものもあったりと、全体としてはよくわからんことになっているはず。

一方で、紛争が独立変数で経済的相互依存が従属変数になっているような研究もある。紛争が発生している、または紛争が発生しそうだと予期されていると貿易が減るとか、そんな感じである(e.g. Long 2008)。最近はどういう時に経済的相互依存が紛争を減らすのか、その条件付けや過程が議論されている印象である(Kastner 2007, 2009)。

ちなみにではあるが、上記で述べた通り、経済的相互依存→紛争と、紛争→経済的相互依存という両方の因果関係がありうる。この場合、単なる回帰分析では不十分で、リサーチ・デザインを工夫しないと(計量分析で操作変数法を用いたり、事例研究で過程追跡したり)、誤った因果推論をしてしまうことになる。

あと、近年は概念的にグローバリゼーションの方が注目されていて、経済的相互依存がグローバリゼーションのsubsetに過ぎないからか、経済的相互依存を正面から扱っている研究が減ってきているような気がする。ただ、断定的なことは言えないので、もうちょっと調べてみようと思う。

なんか、今までの記事で一番中途半端な感じになってしまった気がする……。
不勉強を恥じて、精進していく所存だが、このブログの主目的は備忘録なので、更新することをお許し願いたい。

Barbieri, K. (1996). Economic interdependence: A path to peace or a source of interstate conflict?. Journal of Peace Research, 33(1), 29-49.
Gaddis, J. L. (1987). The long peace: Inquiries into the history of the Cold War. Oxford University Press on Demand.
Gartzke, E., Li, Q., & Boehmer, C. (2001). Investing in the peace: Economic interdependence and international conflict. International organization, 55(02), 391-438.
Kastner, S. L. (2007). When do conflicting political relations affect international trade?. Journal of Conflict Resolution, 51(4), 664-688.
Kastner, S. L. (2009). Political conflict and economic interdependence across the Taiwan Strait and beyond. Stanford, CA: Stanford University Press.
Long, A. G. (2008). Bilateral trade in the shadow of armed conflict. International Studies Quarterly, 52(1), 81-101.

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