読了後にまず思ったのは、物語の余韻にいつまでも浸っていたいということ。次いで、物語に漂う空気にいつまでも読み耽っていたいということでした。
家庭の貧しさから進学を断念し、田舎のとある村で小学校教師として赴任することになった主人公・林清三。明星一派を敬愛し、文学をこよなく愛した青年の心情と、細やかに描かれる田舎の心象風景とが絶妙に溶けあい、『田舎』という長閑な雰囲気の物語には、ある種の残酷なまでの現実味が加わります。
"Artの君"を巡る親友・加藤郁治との三角関係には、実篤の『友情』を思い浮かべました。
進学や、文士として第一歩を進めようとするかつての同級生たちに羨望を抱く一方で、現状に甘んじている同僚の教師たちの生活ぶりを目にするにつけ、清三の心に生じた焦りの気持ち。
縁もゆかりもない田舎の土地で教師を勤め、さまざまな想いのうちに身を沈めていく林清三の生涯を思えば、ただただ感涙にむせぶ他ありません。
物語の進み方や、それを通して描かれる主人公の生き方は、苦労じみていながらも非常に共感できました。
本作『田舎教師』は、私にとってとても好きな作品であるとともに、もう一度愛読したい作品の一つなのです。
