Book's Cafe【hi-lite】店主のページ

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実在しない架空の古書カフェ・ハイライトの店主のページ。
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読了後にまず思ったのは、物語の余韻にいつまでも浸っていたいということ。次いで、物語に漂う空気にいつまでも読み耽っていたいということでした。

家庭の貧しさから進学を断念し、田舎のとある村で小学校教師として赴任することになった主人公・林清三。明星一派を敬愛し、文学をこよなく愛した青年の心情と、細やかに描かれる田舎の心象風景とが絶妙に溶けあい、『田舎』という長閑な雰囲気の物語には、ある種の残酷なまでの現実味が加わります。


"Artの君"を巡る親友・加藤郁治との三角関係には、実篤の『友情』を思い浮かべました。
進学や、文士として第一歩を進めようとするかつての同級生たちに羨望を抱く一方で、現状に甘んじている同僚の教師たちの生活ぶりを目にするにつけ、清三の心に生じた焦りの気持ち。

縁もゆかりもない田舎の土地で教師を勤め、さまざまな想いのうちに身を沈めていく林清三の生涯を思えば、ただただ感涙にむせぶ他ありません。


物語の進み方や、それを通して描かれる主人公の生き方は、苦労じみていながらも非常に共感できました。
本作『田舎教師』は、私にとってとても好きな作品であるとともに、もう一度愛読したい作品の一つなのです。

一子相伝のように代々受け継がれてきた秘密と、それをとりまく人間模様。
『こんなお伽話のような話を誰が信じることができる?』という松平さんの言葉どおり、
これはある種の壮大な、お伽話なのだと思います。

秘密を守ろうとする側と、秘密に対峙し戦う側。

読み終えた後で無性に、父の眠る墓参りへと行きたくなったのは、
きっと私だけではないと思うのです。
物語は各駅停車の電車のように。誰かが言った『一駅ごとに、乗り降りする人の分だけ物語がある』という、言葉を思い出した。

この物語の人物たちは、一期一会というのを超えて偶然の出会いと別れを紡ぎ出しています。

この物語の中にあるのは、『偶然』に象徴されるリアリティを持ったファンタジーだと、私は思うのです。

読了後、心に直に手を触れられたような温かみの残る作品です。
横溝正史作品には、個性的で魅力的な名前の人物がしばしば登場する。

青沼静馬、降矢木一馬、東海林日奈児、東海林月奈児…

きっと、こうした古めかしくて洒落たネーミングも、私が横溝正史を好きな理由の一つなのだろうと思うのです。

表題作『迷宮の扉』は東海林竜太郎の遺産を巡る殺人劇を描いたもので、登場人物に複雑に絡む近親憎悪の念以外には、取り立てて目新しいモノもなければ、いたってオーソドックスな事件かもしれない。

しかし人物のネーミングも手伝ってか、憎悪や野心といったものが益々おどろおどろしいものに感じるのです。
文庫化を待って長らく買い渋っていた本であり、それでも読みたいという衝動についぞ単行本を購入した本でもあります。

このボリュームの本では自分には珍しく、1日半であっという間に読み終えてしまいました。
有川流『ラブコメ炸裂』…とは全く違ったテイストで、本作のテーマは成長と家族愛でしょうか。

それでも、誠治が千葉ちゃんに言った『ノーカン』は、さすが有川ワールド!と。

読了後は、家族に薦めたくなりました☆
ずっと待ち続けてようやく手に入れ、たった1日半で読み終えたこの本は、今は私の実家の本棚に。

大切に置かれていると聞きました。