調査報告書要旨のほか全文が開示されていないのは残念です。ステークホルダーに対する説明責任としては、開示すべきではないでしょうか。

特に、報告書(要旨)を見る限り、今回の事態を不祥事ととらえている割には、その原因分析が甘く、何から何まで前の理事長とその時の法人局長(のみ?)が悪かったといわんばかりの要旨です。

 

しかし、「このような取扱いは、本法人が教育という公益事業を行う学校法人であることこと(ママ)に鑑みると到底これを容認することはできず、この取扱いが継続したからといって、これが本法人の慣行であるとして適法、妥当であるということはできない」(4ページ)と、私立学校における慣行すら糾弾するような厳正な委員会です。

 

結果として(足し算の結果)4億円にも及ぶ不適切な会計処理の原因と責任の所在についても極めて明快に指摘しているのではないかと推測されます。まさか、それは依頼されたことではないとは言わないと思うのですが(要旨1ページによれば、第1回として対象事項を絞り込んでいる様子がうかがえますが、全体として何を依頼されたのか、全くわからないという不親切な内容です)、水田さんをその適法性に疑義がある緊急動議で解任する迅速すぎる対応の割には(報告書提出から解任までに水田さんを除く理事には当該報告書が配布されて、事前に賛成理事が検討していたのか?招集通知には報告書の検討は議題にあがっていたのか?謎だらけです。)、その他の理事の責任が全く問われていないどころか、4頁で問題とされている功労金支出のきっかけとなっている「終身処遇」を決議した平成16年当時の理事会のメンバーである上原明氏(大正製薬ホールディングス代表取締役社長・大正製薬株式会社取締役会長)が、当時の理事としての監督責任を問われることなく、理事長に就任するという事態に、やや驚きを覚えました。

他の理事も、誰も、解任どころか辞任もしていないようです。

 

要旨報告における格調の高さからすると、会計調査委員会は、公益事業である学校法人の理事の厳格な(業務執行・監督)責任を前提としているとしか思えないのですが、その原因究明はしていないのでしょうか。外部の素人目にみても、仮に一般企業で代表取締役がこのような不祥事を起こしたら、取締役会構成員の監督義務違反(善管注意義務違反や忠実義務違反)が問題になるように思われます。学校法人はそうでないと解釈する積極的な根拠も法令上見出しにくいように思いますし、近時の法改正で理事の忠実義務を確認する明文規定が設けられている背景からしても、法が予定する理事の責任をあまりに軽くみてはいないのだろうかと疑問すら感じます。これまでの動きを主導されてきたのが、私立学校法の名著を書かれている小野理事なのですから、複雑な気持ちになりますね。

 

一体、どういう原因究明に基づき、水田さんだけ解任という結論が導かれたのでしょうか。少なくとも、新体制はステークホルダーに対してその説明を果たす責任を負うのではないのでしょうか。そもそも、この要旨報告、原因究明の記載もなければ、再発防止への提言すらありません。全文レポートにはきちんと記載されているのではないかと勝手に期待していますが、公表されない様子で、非常に残念です。

さらにいえば、第2回調査の内容や調査結果報告予定くらい開示しなければ、水田さんの解任で、あとは興味がなくなったかのようにすら映ります。 

 

原因究明と再発防止策こそがいわゆる第三者委員会設置の最終目標であることが一般ですが、全容解明前に緊急動議で一人理事を解任し、そのままにするのでは、コンプライアンス貫徹という観点から足りないように思われます。会計調査委員会のそもそもの目的は一体なんだったのでしょうか。まさか、調査報告書を裁判上、みずからの主張を補強する証拠として利用するためにお金を使って委員会を設置したわけでもないと思うのですが。

 

文科省は、これでよしとするんでしょうか…。