登記簿上は、水田宗子氏であることは周知のことと思います。昨年11月30日に退任されたことになっているにも関わらず、です。

 

代表権の所在は極めて重要な問題です。代表権のない者によって招集された理事会決議は無効でしょうし、代理権を有しない者がそんなことするべきではありません。そして、ある者が代表権を有する者と適法に確定した場合、それは登記されてしかるべきです。

 

現在、小野元之理事が理事長代理という肩書で代表権を行使し、卒業式、入学式であいさつし、理事会も招集しているようです。しかし、登記がされていない。

 

なぜなのか?適法かつ適式な代理権であれば当然代理権を登記できるのではないか?という素朴な疑問を持っている方が多いのではないか、と思います。

 

7月に学校法人の代理人(上野弁護士)が東京地方裁判所に提出した上申書によると、学校側は、「理事長代理」は実務上登記できないと裁判所に説明しているようです。

 

しかし、代表権の所在を明らかにするのが法の建前です。法と実務が合致していないということでしょうか。本当なんでしょうか。

 

という疑問が生じるのは、他大学で「理事長代理(代行)」が登記されている例があるからです。城西大ではできないが、他の大学ではできるのは、法務局による扱いの違い?

 

「役員に関する事項」欄の理事長○○○○の記載の下の欄に、

「代表権の範囲

理事●●●●は理事長の職務を代理してこの法人を代表する」

 

登記されている例があります。城西大学でも、水田宗子という記載の下の欄に、同様に小野理事が登記されてしかるべきではないのでしょうか。

 

これは、小野理事がいう「理事長代理」とは違うのでしょうか。弁護士さんが裁判所や文科省に対して提出している書面ですから、事実確認しているはずだと思いますが、外部からみていると、他大学との取り扱いの相違を説明できないし、理事長代理について代表権の範囲として登記できることくらい、監督官庁の文科省は知っていて当然だと思いますが、なぜ、城西大の未登記を数が月にわたり放置しているのでしょうか、理解に苦しみますね。 

 

また、大学が提出した書面によると、文科省の担当者が理事長代理は登記できない旨の説明を了解して、登記事項証明書の未提出の状態を認めているとのことです。さらに???です。他大学では登記できているのに城西大ではできない理由って何なのでしょうか。

 

理事長代理の選任が寄附行為に従っていないからではないか?と推測していたのですが、学校法人が裁判所に提出した上申書では、寄附行為13条、15条、16条に基づいて代理としての権限があると言っておられます。他方、一緒に出された文科省提出済みの書類では選任条項が5条2項の「準用」になっています。一体どちらなんでしょうか・・・。根拠がばらばらに見えます。

 

なお、「準用」とは、本来予定していない場面であるため、ある条文を適用できないが借用することを意味します。寄附行為5条は理事長を選任する規定でした。理事長の規定を「準用」して代理になることができるのでしょうか。それが許されるなら、そもそも寄附行為に別途理事長代理について規定を設ける意味はほとんどないよう思われます。法解釈上の論点を提供しそうですね。

 

また、11月30日に「就任」となっている書類が出ているのですが、一緒に提出している「就任承諾書」では12月1日からの就任を承諾しています。

 

会計調査委員会の調査が進んでいるそうですが、そもそもそれを誰が依頼したのかもよく分かっていません。理事会決議がないようなので(水田さんは理事ですが、知りませんでした)理事長代理の権限に基づくものなのではないかと推測されますが、未登記なのですから、その実体法上の権限の正当性についてもきっちり確認したうえで判断をしていただけるのでしょうか。委員会の存在の正当性の源泉です。

 

代表権の所在を証明するものが存在しないのですから、水田理事長時代の「不適切」(不正・不当・不適切…という言葉遣いに要注目であることは以前指摘しました)を指摘するのであれば、現時点での不適切(しかも法令違反の可能性を考えると、「不適切」では済まないかもしれない)も見逃すことは許されないでしょう。

 

動きを見守るものとしては、他人のコンプライアンスに意見する重責を担う会計調査委員会が自らの存在基盤のコンプライアンス上の問題も意識したうえで、きちんと対処してくれていることを願うばかりです。