自分には

1歳半の娘がいる.

 

自分と妻と娘の

3人暮らし.

 

 

 

 

 

娘は歩く楽しさをしったばかりで

部屋中をぱたぱたと駆け回っていた.

 

アンパンマンに夢中で

家中にあるアンパンマンのおもちゃを

片っ端から遊んでいった.

 

 

 

 

そんな娘が,

父親の自分を

世話するようになった.

 

 

 

 

 

 

トイレへ移動しようとすると

さっと駆け寄り,

自分の手をにぎる.

 

そのままトイレまで誘導し,

トイレのドアを開け,

自分がズボンをおろして

便座につくまで目を離さない.

 

便座につくのを確認すると

ささっと外に出て,

自分にばいばいと手を振りながら

ドアを閉める.

 

 

 

トイレをしている間も,

「とんとんとん」

と声をあげながらノックして,

ドアを開けようとする.

 

 

「大丈夫,」

と中から応えると

 

「ぱぱ,といえ(トイレ),いなーい」

と母に報告する声が聞こえてくる.

 

 

 

終わると

また駆けつけて,

自分の手を引き,

ベッドまで案内する.

 

 

ベッドの上を

ぽんぽんと手でたたきながら,

「ぱぱ,いす」

といって座るまで確認する.

 

 

 

*************

 

 

 

食事を食べようとすると

スプーンをもたせてくれるし,

 

食べ終わった食器を回収したり,

(落としてこぼすことも)

 

 

妻が1人買い物にいくと

「私が世話しなきゃ」とばかりに

自分のもとへ絵本をもってやってきたりもした.

 

 

 

まだ小さいのに

自分なりに空気を読んで

家族に貢献する

娘に驚いた

 

 

 

 


 

だいぶ日が経って回復したある日,

妻と僕は,

買い物にいく車中で

言い争いをした.

 

 

 

娘はうしろで黙っていたが,

ショッピングセンターに着くと,

両手で私達の手をとった.

右手に自分の手,左手に妻の手.

 

これまでそんなこと

しなかったのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

療養中,

娘の存在はいろんな意味で大きかった.

 

 

 

自分にとって

笑いと明るさをもたらす存在だったが,

そのエネルギーが病床の身にとって

負担になることもあった.

 

 

 

結局しばらく後に,

自分から

娘を離してもらうよう

妻に頼むことにもなる.

 

 

 

 

 

そんな

勝手な大人の事情に

振り回されながらも

 

 

 

 

娘は

明るく笑い

大声で泣きながら

劇的に成長していった.