11/18(木)、生徒さんのご縁を得て、2階15列上手にて。よくご一緒する先輩ヅカ友のHさんと。






コロナ明けの頃に、植田先生が実際にドイツで観て、これを日本でやりたいと持ちこんだ作品とのこと。原作ありなので、一番大変なところは訳詞だったでしょうか。なにしろ、歌う歌う歌う。セリフの途中から歌い出すよくあるミュージカルや、一呼吸置いたところで歌い上げるナンバーというわけでもなく、マジでセリフが歌。


実体験を書いたと言われている『若きウェルテルの悩み』をベースに。

「Goethe!Goethe!」と連呼するプロローグは原作のまま?時期的には日本なら夏目漱石とか森鴎外とかが該当すると思いますが、彼らを扱ったドラマは無くはないと思うものの、ミュージカルに仕立てて(たとえば)「ナツメナツメ」と連呼することはまずないと思われます。ドイツ人のゲーテに対する親しみ度合いがわからないから、日本人的にはなんとも斬新な世界観に思えます。彼の書いた詩は歌曲になっているものも多いし、ご本人を主人公にしてミュージカルをやろうなんてのも、『若きウェルテルの悩み』がそもそも自伝ぽい作品だからそこまで不自然な発想でもないのかな…?


ゲーテは1749年生まれ、1832年83歳で亡くなったということなので、歴史的にはフランス革命を挟む時代、ドイツのフランクフルト出身の詩人、文学者。貴族でもないし、貧乏でもないので、ヨーロッパを席巻した革命とそれに続く戦争の嵐とは縁は薄かったもよう。

この人が高名過ぎて、ドイツ人と言えばゲーテという苗字が多いのかと思いきや、保有者(その苗字の人)は多くはないらしい。


このあとネタバレとなります。

ご了承の上お進み願います。



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さて作品ですが、一幕始まってからしばらくは、歌のセリフがなかなか入ってこなくて苦労させられました。このままラストまでわからないというのはさすがに辛いな…と思ってましたが、耳が慣れてくるものなのか?途中からはスンナリなじんで聞こえてきて最後まで集中して見ることができたのが不思議。軽快なポップス調の音楽で、一度聞いて歌えそうではないものの、抵抗感なく身体に入ってきました。しかし膨大な量の歌詞(セリフ)、よくも覚えられるものと感心。


侑輝大弥くん、ひとこゲーテの上司?ケストナー役で、ロッテと結婚することになるので、すごく出番が多く目立つ役。二番手半くらい?融通のきかない堅物感が似合っていたけど、歌はもう少し、いやけっこう?がんばってほしい感じではありました。

ほのかちゃんはゲーテの同僚のイェルザレム。人妻と恋に落ちて自殺してしまう、この物語の核の一つとなる重たい役。道ならぬ恋に苦しむさまはビジュアルの美しさと相まってインパクトはありました。露出の多さからいうとこの二人の役は、チェンジでもよかったのかもしれませんが、適材適所だったかな。

イェルザレムの恋人の人妻役は、なんと美空真瑠。男役にしてはやや小柄でかわいい系だなーと思ってましたが、娘役自然でよかったです。歌もうまい拍手

合間合間に劇場をモチーフにした心象場面がありまして、後半に突然ステージ上に現れる、真っ赤な衣装を着た女王様然とした人物が強烈びっくり!『悪魔城ドラキュラ』で新公主演を果たした夏希真斗でしたね〜。カツラもかぶってるし化粧も常とはあまりに違うため、出演者のリストと番手と身長を頭の中でシャッフルして、正体にたどり着きました。そう思って見ても、なかなか本人の顔が浮かばないほど化けてましたね〜。とにかく、かなりの爪痕を残した役でした。


原作の『若きウェルテルの悩み』では、ゲーテがロッテと知り合った時はすでに婚約者がいたので、つまりゲーテの方の横恋慕。これだと人妻に恋していたイェルザレムと設定がほぼかぶっちゃうから、少し変えたのかしら?このミュージカルのような設定だと、ケストナー(侑輝大弥)は恋人どうしを引き裂いた悪者のようだし、ほかに愛する人のいた女性と結婚しても、このあと支障なく結婚生活がおくれるものなのか?ことあるごとに美咲ロッテは夫からイヤミを言われたり脅されたり拗ねられたり、果ては浮気をされたりしないものか?と心配になるような筋書きでしたね。家族のために結婚すると言ってたし、ひたすらの我慢を重ねる不幸なことにならなければいいが…と。

単純なハッピーエンドでないから将来のなりゆきは気にかかります。


芝居の最後は、ゲーテの成功に浮かれる場面でしたし、冒頭でロッテが原稿を出版社に持ちこんだ結果というふうに繋がっていたので、こちらの二人はだいじょうぶそう。

ケストナーとロッテの家庭が穏やかでありますように。