3/17(月)14時公演

よく観劇をご一緒するお姉様をお誘いしました。

ノゾミストでは確保できなかったため、ぴあの先行を利用。第二希望が当選して三階A席下手で拝見。



席の埋まり具合は90-95%といったところ、当日券もありました。A席(三階)に空席が目立ちました。

初見は一階でしたが、なんなら三階のほうがセリフがハッキリ聞こえました。上から見ると、オペラを使っている人はほとんどなく、舞台に引き込まれている感じかな?と。

初日よりだいぶ落ち着いているように思いました。(声が?!)と思ったのは、さすがの望海さんもちょっと上ずっていたのかもしれません。今日はいつもの彼女の声でした。


マスタークラスの見学者に見立てた客席とやり取りするかのように、話が進みます。もちろんコンサートのように本当にことばを交わすわけではなくて、その辺を指差したり目線をおくったりして、あたかも実際にやりとりがあったかのように芝居の中でふるまうだけなので、決まったセリフ以上にアドリブで絡んだりはしてこないんですが、対象付近の座席に座っている場合はちょっと緊張しますね。

望海さん自身も素で客席と絡むより、演技として相手に振るほうがたぶん楽に感じているのではないかと思えたのですが、どうでしょう?本人は意外に人見知りというか、立場として色々な人と話さなければならないけれど、誰とでもすぐに友達になれちゃうタイプではないのでは?と推察しています。


一つ一つ明瞭に覚えているわけではありませんが、心に響くセリフがいくつもありました。それは音楽についてのものだったり、芸術全般に関するもの、あるいは人生や心の持ち方についてのことばも。

マリア・カラスという方がたとえ私生活がどうであって、どんな生涯の幕引きであったにしても、一時代を築いた歌姫であったことは揺るぎなく、音楽に対する自負は相当なものであったことはまちがいないでしょう。そうしたプライドに裏打ちされたことばの重みが、時を経ても私たちの心を打つのだと思います。


はじめは台本を読み進めているうちに、カラスのことをだんだん嫌いになってきたと望海さんが苦笑していたのを、どこかで見ました。それは、たとえば「緊張するのは準備不足だから」とか、まるで自分のことを指摘されているように感じたのだと。同じく舞台に立つ身として、私たち客席側より更に強く響くものがあったのでしょう。

カラスは「芸術にはそれなりの報酬が支払われるべき」と言いながら、「私たちにとって拍手は命です。私たちが受け取れるものは、それだけかもしれません。」とも言います。観客にとっても拍手をおくることは、感動や感謝を演者に伝える大切な手段です。心のこもった拍手をとどけたいとあらためて思いました。


望海さんが8割しゃべっていますが、もちろん他の出演者も熱演です。ソプラノの池松日佳瑠さん、林真悠美さん、テノールの有本康人さんの3人は生徒役としてカラスと丁々発止のやりとりをします。音楽監督兼ピアノ伴奏者の谷本喜基さんは、いつも静かにピアノに向かい、舞台の重りのようなバランスの中心となる役をつとめています。時々出てきてかみ合わないやりとりをする道具係の石井雅登さんは、重くなりがちな舞台をすっと和ませるスパイスです。


歌手役の三人は、それぞれ声楽の専門教育を受けたプロ。ミュージカルで聞く歌唱とは違う歌を聞かせてくれます。本職の歌のほかに、生徒としての演技も必要ですが、プロフィールを見る限り池松さん以外はあまり演技の経験は無さそうです。歌手役なので歌が歌えることが不可欠ですが、演技は素人っぽくてもあまり問題はないのかもしれません。しかし3人それぞれ歌い手だけに舞台度胸がよく、キャラクターをうまく演じていたと思います。なかでも私は林さんの、自信にあふれた登場からの、最後にはメチャクチャにキレるキャラをおもしろく拝見しました。ちょっとお笑いタレントの横澤夏子さんに似た面差しのような?気がしますが、体当たりの演技が印象に残りました。


私の『マスタークラス』の観劇はこれで終わり。

望海さんの挑戦を見ることができて幸せでした。

これまで聞いたことがないカラスにも心が動き、何か音源を探して聞いてみようかと思ったりします。

よき演劇は興味の広がりも呼びますね。

最後にプログラムがまるでスコア(楽譜)のような装丁で、深緑色の表紙もステキですし、内容も読み物が多く充実しており、望海さんの写真もたくさん載っているのでオススメです。





3月後半は、宙組を挟みながら、様々な舞台に足を運ぶ予定です。