2/15(土)、1530
同級生に誘ってもらって月組をまずは観劇。
その終演15分後にTOHOシネマズ日比谷シャンテにて、お約束の(笑)『ファイアーブランド』を見てきました。宝塚に同行した同級生も、先日『ミュージカルSIX』を観たばかりと聞いていましたので、興味あるかなーと誘ってみたところ良き返事をもらえまして。観劇と映画のダブルヘッダーという長丁場になりました。

ヘンリー8世の最後の妻、キャサリン•パーにフューチャーした2時間の映画。
以前も貼りましたがあらためてこちら。
https://longride.jp/firebrand/
昨日封切られたばかりなのに入りは1割?(多くても2割弱ほど)時間も1845からと遅いせいもありましょうが、継続が危ぶまれるレベル
一年ちょっと前に見た『エリザベート1878』よりはだいぶお金も人手もかかっていそうな印象。イギリスの中世の歴史に詳しいわけではないものの、時代考証もそこそこしっかりしていたようで見応えがありました。
監督のカリン•アイヌーズはブラジル人だそうで、娯楽大作と言うよりも、「ある視点部門」とか「パノラマ部門」とか、語弊を恐れずに言えば、問題作を撮って世界の映画祭に出品している感じのひとですかね。
こちらの作品も「歴史とは、男と争いのことだった」という問題提起から始まっています。「ほかのことは推測するしかない」とも。
歴史に名高い暴君?のヘンリー8世の6番目にして最後の妻の話を、その義理の娘のエリザベス一世目線で描いています。権力者その人のことではないので、文書とか証言とかきっとあまり残ってはいなくて、ある程度史実に沿いながらも想像、創作の余地を充分に活かした驚きの展開を、固唾をのんで見入りました。
キャサリン•パーが前妻の子どもたちを集めて身近においてかわいがったことや、神と人の間にはなにもなく、宗教的な対立や弾圧には心を痛めていたこと、二度夫と死別したあとヘンリー8世の目にとまり王妃となり、恐れてはいたが、おそらく愛してはいなかったこと、三番目の妻ジェーン•シーモア(エドワードの母)の兄であるトマスに惹かれていたことなどこのあたりはたぶんある程度史実通り。
王に望まれれば女性側に拒否権はないでしょうし、やむを得ないことには従いつつも、自分の信じる道は曲げずに生きた女性なのかな〜と感じました。
ヘンリー8世亡きあと、その年のうちにトマス•シーモアと結婚したことも、彼女の一途さを示すものと思えます。ただその結婚も長くは続かず出産によって命を落とし、娘も夭折したようで、太く短くなんとも濃い人生。彼女の年齢を計算して見間違いかと思うほど。1512年生まれ、1548年死去、なんと36年!成人も早い当時としては、とりたてて短い人生ではなかったのかもしれませんが…
片やヘンリー8世の生命力たるや驚異的で、晩年は壊疽に苦しみながらも59歳まで生きて6人の妻を持ち、離縁し、処刑し、お産で失い、、、彼のセリフの中で「繰り返しだな」と何回も使われるのが、その人生の業を表していたようでした。男児を得るためだけに妻をとっかえひっかえしたことは、誰も非難できなかっただけで当時としても許される所業とは思えません。女性に王位継承権がなかったわけでもないようですし、どうしてそんなに男児にこだわるのか意味不明ではあります。そんな好き放題自分勝手な生き方をしたことで、映画では子どもたちにも見かぎられていますが、まったく同情の余地無し
彼の死後たった一人の男児エドワードが王位を継ぐものの、15歳で死去、その後アラゴンの娘メアリー、そしてブーリンの娘エリザベスが継ぐものの、ご存知の通りエリザベス一世は未婚で後継ぎを残さず、チューダー朝は途絶えたのは周知のことで、歴史を振り返るとヘンリー8世の退場は頃合いだったかと。いやむしろ遅すぎた?
ただそれは後世からなので言えることで、その時代を共有した人にとっては命の危険を伴う綱渡りだったことは想像に難くなく、ほんとにこの時代に生まれなくてよかったと心から思います。
今の時代だって混沌としていて、転びようによっては経済的に命の危険を含む大きな損失が出るかもしれないし、実際戦争をしている地域だってある。地球規模の気候変動もあり、決して安定しているとは言えないです。王の考えがダイレクトに生活に反映される中世古代よりずっと複雑かもしれない。その中を泳いでいかなければならない私たちはなんと弱くはかないものか…
自分がどう生きたいのかを芯に持って、たかだか百年の命を終わるときに後悔しないことを願うばかりです。
『ミュージカルSIX』からの、キャサリン•パーをめぐる周辺を知る映画まで、こうやって関心が広がっていくことが幸せですね〜
このあと映画のネタバレありますので、これから映画を楽しみにしている方は閉じてくださいませ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
Ready?
『ファイアーブランド』では、
死の床にあるヘンリー8世は、キャサリン•パーに絞め殺されます(ここは創作でしょう)
「何が起こったかは誰もかまっていなかった」というエリザベスの独白が入り、
ヘンリー8世の埋葬の準備のため体を切ってニュルニュルと内臓を取り出す映像があり(これ必要?)、
嫣然と微笑む少女エリザベスのアップが映り、
プロローグの問題提起と呼応するように「(エリザベス一世の時代は)歴史は、男と争いではなかった」とテロップが出て、幕となります。
「最後の妻」であるからには、キャサリン•パーが政敵によって異端として投獄されても、これで処刑されたりすることはないと思ってみていましたが、まさかこんなどんでん返しとは!さすがに驚かされました。
映像作品をあまり頻繁に見るわけではありませんが、舞台とはまた違ったリアリティがあっていいものですね。
友人には長丁場のおつきあいに感謝します。