4/19の宙組my楽からおよそ1ヶ月。

折しも東西両方の宝塚歌劇の上演が中止となり、プライベートの生活がそれなりに多忙だったのもあって、『宝塚歌劇』を心理的にちょっと突き放して見る気持ちになっています。

毎週のように劇場に通いキラキラを浴びていると、高揚感に一種マヒして舞い上がっているのですが、しばらく生の観劇がない時にはふっと我に帰るときがあるというか…まぁこういう時間も重要なのかな。


以下、今つらつら思うことを綴ってみますが、演劇フリークの方や、有識者の方とは違う考えかもしれません。もちろんそれ以外の一般観客の皆さんともです。あくまで個人的な考えですのでご容赦ください。


劇場のない地方に生まれ育った私にとって、舞台というのはすごく遠い場所で、なんならテレビの向こうの人たちより遥かな人たちだったかも。お正月に父に連れられて東京のホテルに泊まり、なにかお正月公演を観るというのが私のハレの体験で、世代も世代だし、(ミーハーな?)父のチョイスだからそこに宝塚歌劇はなく(笑)、帝劇や日生劇場のような超メジャーな劇場ばかり。観るとそれなりに楽しめたものの、行くまではまったく不服だった作品がほとんどでしたが、記憶にある中で衝撃だったのは、松本幸四郎(当時)と鳳蘭のミュージカル『スウィニー・トッド』。ミュージカルってこんなものなのか!と(しかし今思えばこれが標準でないことはわかる)。そして今思えば(2回目)、なんかすごくいい席だった気がする。一階の前方センター。初ミュージカルが、これもまた今振り返れば(3回目!)ソンドハイムってのもなんかすごい話で、キャストも豪華だわ。その後年、森繁久彌の『屋根の上のバイオリン弾き』も観ましたが、申し訳ないながらこっちはほぼ記憶にない。それほど衝撃的でした。

その後の私の舞台に対する考えのベースは、贅沢なはなし、やはりそこということになります。

今宝塚の生徒さんのほとんどが、首都圏と京阪神圏なのもわかります。単純に都会周辺の人口が多いだけでなく、学生のときに生の舞台に触れる機会はその後の人生を左右するものとなる。正直地方に生まれたらそもそも生の舞台を観る頻度が激減ですから。


私も第一次ベルばらブームの時に、テレビで宝塚の舞台中継を観て以来、一度観てみたいと思いながら、実際に劇場で見るまでにはざっと40年!かかりました。笑笑。その間、就職、結婚、子育てなどはさまりましたしね。ま、特に私が異例でなく、普通演劇一般に触れる機会はそんなもんだと思います。ぶっちゃけ時間とお金が必要ですしね。平たく言えば「ゆとり」です。節約はありですが、ご飯を抜いたり、大事な仕事を放り出したり、看る人のいない病人を置き去りにしたり、留守宅に子どもを閉じ込めてまで無理をして行く(というか行ける)ところではない。そんなこんなの調整ができるようになってようやく行けるハレの場所。だからみんな楽しみにやってくるし、期待するからこそ、評価も厳しかったりする。


本来なら、極端な話し戦時下だったり、(昔であれば)飢饉のような極限状態で湧き上がるように生まれて大衆に支持されるものが芸術なのかもしれませんが、平和な今の日本では、芸術はつくる方にも選民意識がなくもないのでは?不特定多数の大衆に支持されることは望んでなくて、自分が作りたいものを作り、それが受け入れられなければそれでもかまわない。

話しは突然先日電撃退団?した、宝塚の上田久美子さんに飛びますが、彼女の退団後の初作品となる『バイオーム』の内容を見て、やっぱりこっち方面にいくのか…となんとなく納得できました。

上田久美子さんは好きな作り手です。誤解のないように念のため。


宝塚歌劇を頻繁に観に行くようになって以来、様々な舞台作品がGoogle先生によってスマホに紹介されてきますが、(これ観たい!)と思えるものがなくてむしろビックリします。難解というか、ひとりよがりというか、大衆に受けようという迎合が感じられないのはなんなら清々しいくらいですが、あ、でもマンガ原作で、ビジュアルのいい若手俳優さんをつかった舞台は違う路線ですかね?ただ動員には苦心しているようで、大手チケットサイトで大幅値下げしてましたっけ。

演劇はテレビや映画と違ってそもそも箱そのものに物理的限界がありますし、キャストのスケジュール調整も含めて、公演期間の長さにも縛りがありますよね。

だからこそ実見した人には特別感があるのですが、逆に言えばそれ以上には広がらない閉じられた輪のようなものに思います。『屋根の上のバイオリン弾き』『放浪記』のように一人の突出した俳優に支えられたロングラン公演のほか、ミュージカル専門集団の劇団四季と、宝塚歌劇団以外は主として収益を考えると普遍性を保つのは難しくて(霞を食べて生きていけませんから)、だから宝塚歌劇団にはそれを守る意義がある気がします。


佳作も駄作もあって、スターの動員力にも波があるけれど、それでも続いていく続けていける企業体力と、長年の固定客の支持は得がたいもの。今回はイマイチだったけど、次の演目はおもしろそうと思わせるのが宝塚の真髄なのかな?