3/30(水)16時

3/31(木)13時

両日ともセンターの10列台で観劇。

座席が千鳥に配されてないので、センターでも前の方の座高に左右される観劇環境です。舞台前方に立つ演者の足元までは見えませんが、ストレスなく観られて幸せでした。


  ストーリーについて 

はっきりと『復讐』ということですから、ドロドロに暗いことは明白。しかし大は戦争から小はケンカや小競り合いまで、抗争モノのときいつも思うことですが、立場によって正義は異なってくるもの。当事者以外にはその空虚さは哀しいほどです。誰かにとっては悪人でも、別の誰かにとってはいい人かもしれない、ということはあり得る話。価値基準なんて実にプライベート。幼いオクターヴに慈愛深かった父オーギュスト、事業上では冷酷、狡猾だったらしく、息子オクターヴ以外、周辺からは恨まれていた模様。それでも殺害していいわけはなく、その辺りのズレが今作品の根底を流れている。

真実がなんなのか、それを知ってどうするのか?オクターヴとアンブルの物語はこのエンディングのあとに始まるのだな、と。


病気やら事故やらで、人の命が今より簡単に失われる時代だったとは思いますが、それでも父親の仇に恨みを晴らしたいと思うほどには、身近な人の死は重いものだったはず。復讐のためになん人も傷つけ、命を奪ったオクターヴが、自分が傷つけたその人にも(家族を含め)大切な人たちがいることに気がつくことはあるのだろうか?もしかすると今度は自分が仇と狙われるかもしれないことに?憎しみの連鎖はどこで断ち切れるのか…


この芝居の中での唯一の無垢な良心ミシェルとエルミーヌのカップルの代に至ったとき、この家族のわだかまりがなんとかほどけていきそうな光明が見えるのが救いですね。


  印象に残った演者について

印象に残った演者について、まずはセンター以外のかたを。

幕開け、咲乃深音の美しい歌声にまず心を掴まれました。影ソロの常連さんですがほんとに美しい歌声。プロローグでは、重なっていく合唱が重厚さと共にこれから起こることへの不安感もあおる導入部で、一瞬で世界に引き込まれます。


侑輝大弥くん、名前はちょいちょい聞いていましたが、本人を認識したのは初。貧乏学生役。鼻筋の通ったちょっときつめの美しい顔ですね。正義を信じて突っ走る若干暴走ぎみの危ないキャラ。強い怒鳴り声や激しい掴み合いに負けない体格のよさも男役として頼もしい感じ。爆上げ中でしょうかね?


青騎司くん、彼はいや、彼女は『花より男子』で牧野つくしの弟役だった子ですよね?学ラン姿が男子学生にしか見えないと話題になったので覚えています。アンブルに求婚する実業家として登場。すごくノーブルな佇まいで、牧野弟とはあまりに違うキャラに目を見張りました。オペラでガン見しました(笑)


ゆりさん。なんかね(ゆりさんてこんな声だったんだ~)としみじみ。上級生なので最近は年配者の役を演じるものの、重要な配置でもなくセリフはほとんどないことが多くて、ほぼ佇まいだけで役柄を表現していた近年でした。ちょっとハスキーな低めの静かな声。そこに立つ美しい女性の姿にふさわしく品のある話し方。専科に移って初の作品、初の女性役。今後の露出が楽しみです。


一樹さん。年配の男性俳優なら別に普通の有り様かもしれませんが、なにせここは宝塚。こんな芝居のできる『女性』がいるとは驚き。すごく厚みが出ますよね。


そしてセンター付近のかた。

つかさくん。いつも場を盛り上げるややおっちょこちょいの明るい役が多いですが、今回は警視総監という重めの立場、しかも若干悪事に手を貸した感もある憎まれ役。いつもの軽いノリを封印して、端正な顔立ちを更に引き締めて立派な紳士役でした。


ほのかちゃん。こちらはつかさくんとは逆に、いつもだとフェアリー系か主人公の仲間寄りのいい人枠ですが、今回は狂気のアナーキスト役。言葉も激しく熱くて、圧が強くケンカっ早そう。言ってることも正義のようなそれでいて自分勝手なような、反発を煽るのが得意な、好ましくはない性格の役柄。眉を剃ったり髪型も部分的に刈り上げたり、形からもアプローチ。凄まじいほどの気迫を感じる役作りで、なにか一皮剥けた感じ。ヴァランタン本人の言うように『覚悟』なのかな?


美咲ちゃん。彼女を実見するのはPrins of Roses、銀ちゃんの恋に続いて3度めです。新人公演のヒロインもやらずに別箱ヒロイン3回目。本人のプレッシャーは相当でしょうが、やっぱり経験値激増してますね。見るたびに良くなっていると感じます。なんかものすごく急いで育成中ですが、自組では席は空きそうにない(気がする)ので輸出されるんでしょうか?素でのインタビューなどを見るとまだ口もよく回らない感じですが、舞台に立つと実に堂々としているのが根っからの舞台人なのかもしれないですね~。


ひとこ。コメディも悲劇もいけると思いますが、どちらかと言えば私は悲劇で観たい役者です。なにか影を背負った人物がとても似合いそうです。芝居とは別に、終演後の挨拶など聞くと花組でなじんでいる様子で、単純にそれもうれしかった ニコニコ 組替は負担も大きそうですが、このカンパニーに春妃さん、紅羽さんの同期が配されているのも心強いでしょうね~。


今回の梅芸遠征では、東宝のヅカ友さんたちと観劇がかぶり、大阪の空の下で「おつかれさま~」などと言い交わすのもうれしくもふしぎ。一人観劇から始まったヅカライフ、思えば遠くへ来たもんだ…