11月25日、18時半。
今日は9/25兵庫以来の『柳生忍法帖』、2ヶ月ぶりです。知り合いに取り次いでもらって組総見に見参。2階7列下手。いいお席です。
組総見も偶然居合わせたことや、参加したこともありますが、組によってまたは会によってずいぶん様子が違うものなんですね。
星組の組総見はウェアと呼ばれるお揃いのスカーフの着用は必須ではなくて、とてもフレンドリーな感じでした。会のスタッフのかたも丁寧で好感が持てたな~
さて久しぶりの『柳生』でしたが、もちろん筋書きは覚えてますし、配役も頭に入ってましたので余裕がありました。
前回あまり注目できなかった、今日は天華くんを登場から追ってみることに。セリフもありますが、セリフのないところの立ち居振舞いも、ちゃんとキャラ立ちしててその表情にゾゾッとしました。プログラムには「野性味のある精悍な男」とありますが、「精悍な」って普通は褒め言葉だから、そもそも悪漢に使うのになじまないし、本人も線が細いのもあって、たくましい方向に寄せるのは悩んだんじゃないかな~と思われます。「精悍な」と言うよりも、残忍な若造風に作ってきましたね。原作通りでなくても本人なりの寄せかたがあっていいと思うので、けなしてるわけではないんですよ。彼女なりの平賀孫兵衛はこんな仕上がりなんだな、という感じ。ロミジュリの『死』のときも思ったんですが、自分の役作りの解釈というのをとてもだいじにするかたなのではないかしら?役者としての気概を感じますね。意外とすぐに死んでしまうので、長く見られなくて残念でした。バウとか別箱で、重要な役で見たい役者です。突き抜けた役でも、複雑な役でも見ごたえありそう。
あいかわらず輝咲さんには目を奪われっぱなしでした。殿本人はただの女狂いの暗愚で、芦名銅伯に操られていたように描かれていましたが、なかなかどうして、その黒幕を食ってしまうかのような存在感でした。加藤明成の名誉のために言えば、実際の本人は為政者としてそれほどのバカ殿でもなかったようです。ただ執着心は異様なほどみたい。対立して出奔した家臣の堀主水を憎んで私怨?を晴らそうとしたようで(→会津騒動)。そこを膨らませて小説にしたのでしょうね。
ほかに印象に残ったことは、「モテる男十兵衛」。
祭の直前の場面で、堀家の女たちがこっちゃん十兵衛を取り合うところとか、後半で、芦名かたに捕らえられている女性たちが、媚薬に操られてこっちゃんに迫るシーンとか、娘役さんたちの公私とりまぜた(笑)本気がみえておもしろかったです。最後はゆらが命を懸けて守りに立ちはだかりますしね。慕われてますねぇ…
やはりこの時代今よりもっと、女は商品というか、道具としてしか扱われてなくて、それを十兵衛は人として敬意をもって接してくれた。それに尽きますね。もっとも現代でも、そういう人が慕われるのはまちがいないところです。
また観劇記録には珍しく、作家の先生のこともちょっと。
OGのかたがたの観劇レポもあちこちで上がってて、それらを拝見しますと、「目が足りない」という感想がこれまでに増して多い気がして。なんとなれば、多くの生徒さんに見せ場があるからではないでしょうか?宝塚の事情をよく知る、大野先生の神配慮を感じます。センター近くでない生徒や、普段はあまりピックアップされない娘役、そして卒業の生徒にもそれぞれの役を振り分け、役に生きられるように配置している。私はこの演出家が好きとか、苦手とか通常あまり思わないのですが、今回はさすがベテランだなぁと唸らされました。ただ登場人物が多過ぎて、初めて見る一般のお客さんはちょっと混乱するし、消化に時間がかかりますよね。いわゆる大野ワールドってやつ?(笑)
OGさんがたは知り合いばかりだから、もちろんそんなことはないんでしょうが。
それと、そんなに年配でなくても、男尊女卑がちらつく男性演出家っていると思うんですが、大野先生にはそれを感じません。男女同権を目指す世界潮流で、ましてや女性だけの演劇集団、観客も圧倒的に女性が多い場で、やるべきこと、やっていけないことを、素か計算か、選り分けることのできるかたなのかもしれないと思いました。失礼ながらいわゆる○作もなくはないですが、オリジナル脚本で全てが佳作というのはハードル高いと思いますし、得難い作家のお一人ではないでしょうか。
長くなってしまったので、モアダンの話はまたあとで。