wowwowで「唐版滝の白糸」の放送がありました。
2013年の作品。大空祐飛さんが卒業して初の外の作品。ご贔屓を失って感情的に迷子だった私は、とりあえず彼女の新しいスタートを応援しなければ、という義務めいた思い?で劇場に向かいました。チケットがあっさりとれたことにも、中に入ると空席があったことにも新鮮な驚きを感じました。宝塚では簡単にはとれなかったし、空席なんて少なくとも東京はなかったですから、、、
泉鏡花原作、蜷川幸雄プロデュースという作品をリスタートに選んだのが、祐飛さんらしいと思いました。
実は大学時代親しい同級生がアングラ演劇をやっていましたので、そっち方面には少し免疫?がありました。しかし今回テレビの放送を見て、あらためてこんなお話しだったのか~と。(笑)
筋書きがすんなり入ってくるタイプの芝居ではないですよね。なんというか、、玄人好み?
一度しか観ませんでしたが、祐飛さんファンとしての率直な気持ちは「見なくてよかったかな」。。
もちろん感銘を受けた人もいると思います。私の感想は私の個人的なものなので。
泉鏡花×蜷川のイメージは、「耽美的」。別の言い方をすれば「おどろおどろしい」とでも言いましょうか。
筋書きはあるようなないような、それより一人一人のキャラクターが立って、その演者の独白でコマが切り裂かれて展開していく感じ。そんな中でダントツ目立っていたのが平幹二郎でした。その周囲に立ちこめるオーラが半端なくて、驚くほど滑舌がよく、声に張りがあって…すごい役者だなぁと当時も感心しました。
今か今かと固唾をのんで登場を待っていましたが、外の舞台に初めて立つ祐飛さんは、なんだか別の人のようにはかなくて、、、真っ赤なヒラヒラしたドレスが頼りなくて、、、むしろ後半で水芸を披露する着物姿の時の方が、肝がすわって安心して見られました。
その後彼女の舞台は、必ずチェックはしているものの見に行っていません。もし芝居でなくコンサートの方に先に行っていたら、今も彼女の舞台を見に行っていたかもしれません。あまりにも宝塚時代の佇まい、立ち位置と違っていて、ご贔屓を失ったばかりの私にとっては受け入れるのが心理的に難しかった。たぶんそのせいもあって、彼女の現役時代の作品を長いこと見られなかったのではないかと、今では分析しています。男役の祐飛さんはもういないのだ、と認めたくはなかった。
この時の経験から、卒業後のジェンヌさんの舞台を観に行くのには慎重に考えた方がいいと思うようになりました。自分の中のイメージとギャップがあった時、受け入れられるか?ご贔屓の進む道だから応援したいと心から思えるか?
さほどのファンではない時は客観的に見られるので、男役から次第に現実に馴染んでいく様子が、余裕をもって眺められます。「変身」じゃないですけど、興味深いですね。
これまで型に嵌められていたので、それを破ってみたい人もいれば、素に戻っただけという人もいる。
髪をのばして前髪を作ってドレスを着るのを好んでいるようなかんじの元男役は、現役時代はホントにムリをしてたんだなーと思われて、ちょっと興ざめだったりします。この線でいいなと思えるのは、最近ではまぁ君。スカーレット役で見慣れていたせいもあるかしら?
時に髪をのばすことはあっても、その時々の舞台の役に合わせて髪型を作ったり、私服は基本パンツスタイルのかたは元男役としてはとてもナチュラルですね。ちえさんがそんな感じ。
髪の長さなどには特にこだわりはなさそうで、服装もとてもフェアリーなのに、自然体でとても女性らしく変身を遂げたかたもいらして、代表格はりかさん。なんというか「男役」という衣装を脱ぎ捨てたら、そのまますてきな女性だった、ような印象です。
娘役はほとんどイメージを変えることなく、いわゆる「外の舞台」(宝塚界隈独特の言い方ですw)にも立てるのに、有名になればなるほど男役は退団後が大変でしたよね。こういう風に世間に順応していかなければ、みたいな固定観念もあったと思いますし。
ネット社会が加速してきたこともあり、活躍の場も多くなって、早く女性に戻らなければ(という言い方も妙ですが)退団後に仕事にあぶれる…的な逼迫感も薄れてきているのかな。やる気ならオファーがなくても自分から発信できますしね。
価値観も多種多様で、ジェンダーフリー(ジェンダーレス?)もだいぶ市民権を得てきているので、かいちゃんやみやちゃんのような中性的な魅力も自然で、それはそれで「個性」として受け入れられるようになっているのを歓迎しています。無理しないところで似合っていればいいんじゃないかと。
ファンもそのままの彼女についていく人もいるし、離れる人もいる。また退団後にファンになる人もいるわけで。
私は祐飛さんの退団後を気にかけつつも、舞台にはご無沙汰です。ずっと応援しているファンのかたをすごいなーと思います。なんだろう、その人をまるごと受け入れるって、もはや身内?どんなに変身しても、多彩な仕事をしても、見守り続けるってなかなかできることではないと思う。
祐飛さんへの恋に落ちたのはその当時は偽りではなかったけれど、無償の愛とまでは言えなかったのかもしれない。これ自分で言ってておもはゆい。現実的には所詮はスターとファンの関係に過ぎず、そこまでのものでもないのは、どこかで冷静な私が知っている。でも宝塚にはそう思わせる魔法がある。宝塚歌劇というすばらしい世界にいざなってくれた祐飛さんには、今でも心から感謝しています。
次回は、前週オンエアされた「家政夫のミタゾノ」について。