子どもカウンセリングを担当していると、思春期のアダルトチルドレンに接する機会が多くなる。

父親が「アルコール依存症」であったり、両親の仲が悪かったり、嫁姑関係が悪かったりするような、「機能不全家族」に育った子どもたちが多い。

 

彼らは家庭内暴力、非行、シンナー中毒などの薬物乱用、拒食症、過食症、不登校などの問題を抱えて、カウンセリングに訪れる。

 

アルコール専門病棟をもつ国立久里浜病院の鈴木らの児童相談所での調査では、「アルコール依存症」の親を持つアダルトチルドレンは、持たない子どもたちよりも、被虐待、非行、不登校などの問題が多かったと報告している。

また緒方も、不登校と思春期時代の狭義のアダルトチルドレンとの関係を指摘している。

そしてシャフェッツらやハーバーマン、アロンソンらは、アダルトチルドレンは学校に関するトラブルを多く持っていると報告している。

 

ただ、ここで付言しておかなければならないことは、児童相談所を訪れる不登校は家族問題を持つ子どもが多く、文部省の調査でも、不登校はいじめや学校問題で起きるものが多いので、不登校の一部に思春期のアダルトチルドレンがいるということである。

 

さて、アダルトチルドレンには、このような問題を起こすような思春期を送る子どもたちが果たして多いのであろうか。

 

アダルトチルドレンは「共依存」と関係し、その「共依存」の人口あたりの出現率はかなり高率なので、むしろ「静かな思春期」を送っているアダルトチルドレンの方が多いと思われる。

しかし鈴木らの指摘のように、「アルコール依存症家族」では、家族が崩壊しているので、相談する比率が低いだけであり、社会的に一見すると「静かな思春期」を送っているのかも知れない。

ギグリオとカウフマンは、狭義のACOAはCOA(チルドレン・オブ・アルコホリックス)の精神病理(サイコパソロジー)に由来していると指摘しているので、思春期のアダルトチルドレンも、成人のアダルトチルドレンの心理的特徴、心性などを持っていると考えられる。

 

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ところで、クリントン大統領は、義父と実母の「なだめ役」と高成績の「家族英雄」の役割をとって暮らしていた。

しかも、義父がアルコール依存症であることを家族以外の者に口外していない。

多くの思春期のアダルトチルドレンは、5つの役割を取りながら、むしろ問題を起こさずに、「良い子」とも形容できる姿で暮らしている。

 

ただ、「アルコール依存症家族」「機能不全家族」に育っているので、友達を家に呼べなかったり、家族のことを知られるのを恐れて、友人にしゃべれなかったりする悩みはいつも抱え続けている。

家族を憎みながら愛し、愛しながらもこころのなかで捨て去る日々を送るアダルトチルドレンたちの「静かな生活」は、激動の青年期を迎える前奏曲とも形容できる。