高校時代、彼女はクラスの母親のような存在でした。


頭が良く、学級委員長を務めており、誰からも慕われていました。


一方私は、勉強が苦手な落ちこぼれで、皆からは弟のように扱われていました。


そんな彼女には小さい頃から、「ファッションデザイナー」という夢がありました。


昔、彼女にきいたことがあります。


「なぜ服飾系の高校に行かず、この高校に来たのか」と。


彼女は凛とした態度で、


「服飾系が夢であることは間違いないけれど、市内で一番頭がいいこの高校に行って

大学に進学した方がいいのか、それとも本当にファッションデザイナーになりたいのか確認したかった。」


と答えました。


「海賊になる」という夢の私と「ファッションデザイナー」という夢の彼女。


相反するような2人は、いつの間にか親しくなりました。



高校卒業後、彼女は宣言通り、東京の服飾系の専門学校に入学しました。


学校のテストで、クラスで1位を取ったこともある彼女は、進学することなく夢を選びました。


一方の私は、大学受験に失敗し予備校に通っていました。




次第に疎遠になり、連絡は取らなくなったものの


彼女はファッションの世界で頑張り続けていたようで、


インターネットの記事で彼女の名前を見かけたこともありました。









そんな彼女は、自殺しました。誰にも伝えることなくひっそりと。



―――…



「あの子が高校生の時、『お弁当作るの手伝って!!』って、よく頼まれたわ~。

授業の予習も大変そうだったのに。一体誰に作ってあげていたんだか(笑」


彼女の母親がこう言っていた、と人づてに聞いたとき、私は衝撃を受けた。


「明日のお弁当、何が食べたい?好きなものでいいよ」


と私の前では自信満々に言う彼女の、家での顔を初めて知った。


勉強も出来て、みんなにも慕われて、本当に完璧だと思われていた彼女の


小さな小さな意地っ張りを見たような気がした。


お弁当の感想、もっとちゃんと伝えておけばよかった。