↑家庭犬タイプのうちの子です、
ベビーフェイスもなかなか可愛いワン♡
たまのセントバーナード発信です(笑)
特に怖い病気のひとつが
胃拡張・胃捻転症候群
Gastric Dilatation-Volvulus
:GDV
ですよね。
今回はこちらについて
未来のセントバーナードママに向けて
触れておきましょう。
ドーベルマンとかもそうですけど
好発犬種はザックリ言えば
「胸の深い子」になります。
所謂「胃捻転」と呼ばれることの
多い病気ですが、
正確には、
胃がガスや液体などによって大きく膨らむ
「胃拡張(GD)」と、
胃そのものが回転してしまう
「胃捻転(Volvulus)」が組み合わさった状態を
GDVと呼びます。
Volvulus…というか
GD+Volvulus
という感じですね。
大型犬・超大型犬で有名ですが、
先ほども申し上げましたように
特に胸郭の深い犬で発症リスクが高く
セントバーナードも好発犬種のひとつです。
そしてこれは、
「明日まで様子を見よう!」
とできない「救急疾患」。
発症すると
なんと数時間単位で
全身状態が悪化する可能性があり
治療を受けた場合でも
死亡することのある
非常に重篤な疾患です。
その名の通りの病気ですが、
捻じれた胃をどうするか…
といっても、
その治療方法は限られており、
じゃあ事前に防ごう!と
胃固定術を行ったとしても、
「胃拡張」そのものまで
防げるわけではありません。
※命に関わる「胃の捻転」を防ぐためには
胃固定術は非常に重要な予防処置でもあります。
GDVでは、
胃がガスや液体・食物などによって拡張し
さらに胃が軸を中心に回転します。
胃が捻れるとどうなるかというと
胃の入口である噴門側と
出口である幽門側の
正常な位置関係が崩れるのです。
その結果、
胃の中に溜まったガスを
口からも腸側からも逃がせない状態
になります。
そうすると
胃はさらに膨張します。
「お腹が張って苦しいぞ~」
というだけなら、
ここまで恐ろしい病気ではありません。
問題は、
巨大化した胃が
周囲の血管や臓器を圧迫することにあります。
では、
なぜ胃の病気で「ショック」になるのかというと、
膨張した胃は、
腹腔内の大きな静脈…
特に後大静脈や門脈系を圧迫します。
すると下半身や腹腔内から心臓へ戻る血液量
つまり静脈還流量ですね。
これが低下します。
心臓に戻る血液が減れば…?
当然ながら
心臓から全身へ送り出せる血液も減ります。
その結果、
血圧低下
組織への酸素供給低下
消化管の虚血
腎血流量の低下
代謝性アシドーシス
循環不全
…などが連鎖的に起こり
低血容量性・閉塞性ショックに近い
非常に危険な循環状態
へ進行するのです。
さらに…
膨らんだ胃が横隔膜を圧迫するため
呼吸そのものも困難になります。
つまりGDVは、
「胃だけの病気」なのではなく
急速に
全身の循環・呼吸を
破綻させる病気
と考えて良いでしょう。
おそろしいですね。
胃壁そのものも壊死します。
胃が捻れることで、
胃壁への血流も障害されますよね。
血液が十分に届かなくなった組織は
虚血状態になり、
それが続けば胃壁が壊死。
重症例では
手術の際に壊死した胃壁を切除
しなければならないこともあります。
胃と解剖学的に近い位置にある
脾臓も胃の回転に巻き込まれる
ことがありまして、
血流障害や捻転が重度の場合には
脾臓摘出
が必要になるケースも。
さらに重症化すると、
心室性不整脈
敗血症
腹膜炎
播種性血管内凝固(DIC)
多臓器障害
などを起こす可能性もあります。
ここまで来ると、
「胃が捻れた」
という言葉から想像するより
はるかに全身性の救急疾患だと分かりますね。
死に近い病気であり
発症しないような管理が大切です。
ですが、
GDVにはこれといった明確な原因が
ひとつだけあるわけではなくて、
複数の因子が関与すると考えられています。
その中でも重要なのが
体格・胸郭の形態
それと
遺伝的素因です。
大型・超大型犬、
胸の深い体型の犬ほどリスクが高く、
セントバーナードはGDVの好発犬種として
獣医学資料でも挙げられています。
加齢
GDVを発症した一親等の血縁犬がいる
痩せ型の体格
早食い
1日1回の大量給餌
食事時のストレス
神経質、恐怖心の強い気質
高い位置に置いた食器
なども、
疫学研究や獣医学資料で
リスクとの関連が報告されています。
特に興味深いのは遺伝的要因でしょう。
親・兄弟・子など、
一親等の血縁犬にGDVの既往がある犬では
リスクが高くなることが知られています。
単純に
「食後に走ったから起きる病気」
「飼い主の注意で防げる病気」
とは括れないということです。
とはいえ、大型犬の飼育では、
「食後は運動させない」
という話をよく聞きますし、これは大切。
食事直後の激しい運動を避けることは
現在も予防策のひとつとして推奨されています。
ただし重要なのは、
運動さえ避ければGDVを防げるわけではない
ということです。
GDVは
体格
胸郭形態
遺伝
年齢
食事量
食べる速度
ストレス
など
複数の要因が絡む
多因子性疾患です。
「食後○時間休ませれば絶対に大丈夫」
という明確な安全ラインが
科学的に確立されているわけではありません。
ここ大事ですね。
我が家でも食事前後の運動には
かなり気をつけていますが、
それは
「これを守れば胃捻転にならない」
という意味ではなく、
変えられるリスク要因は
できるだけ減らしておきましょう
という考え方になります。
また、
食器の高さ問題
これもありますね。
大型犬ではよく議論されるところです。
昔はですね、
「大型犬は首を下げずに食べられるよう
食器を高い位置に置いたほうがいい」
と勧められることがありました。
しかし現在は、
GDV予防という観点では
高い位置の食器は推奨されていません。
むしろ
raised feeder(高い位置に設置した食器)の使用と
GDVリスク上昇との関連を示した研究があり、
Merck Veterinary Manualや
Cornell University College of Veterinary Medicineでも
高い位置の食器を避けることが
予防策として挙げられています。
大型犬だから高い食器
という昔ながらのイメージだけで
決めないほうがよさそうです。
とはいえ…
セントバーナードは
関節負担も気を使いたいところ。
私は、
あまりに低くしすぎても
関節に負担がかかりそうかしら…
ということで、
「食器は心臓の位置より下」
を我が家ルールにしています。
床にベタ置きのほうがGDVに関しては
安心感があるかもしれませんが、
食後2時間の安静を絶対として
中間を取っている形です。
※「心臓より下」という高さに、GDV予防の医学的基準があるわけではありません。あくまで我が家の場合です。
水も制限したほうがいいか問題
がありますが、
これも注意したいところです。
「胃捻転が怖いから、
食前食後は水を飲ませない」
という
極端な水分制限は
推奨されません。
基本的には
いつでも水を飲めるようにしておきます。
ただし激しい運動の直後などに、
一気に大量の水をガブガブ飲むことは
胃を急激に拡張させる可能性があるため
過剰な一気飲みには注意します。
セントバーナードは
ガブガブお水を飲みたがりますが
極端な大量摂取を避ける
という考え方になります。
大量摂取を避けて
こまめに水分摂取をさせてあげられると
理想的ですよね。
食事回数も大切で
「一度に大量」より分割が原則です。
極端に言えば1日1回の大量給餌は
GDVのリスク因子として報告されています。
大型・超大型犬では
一日の必要量を複数回に分けて与える方法
が推奨されています。
我が家でも食事は1日3回に分けています。
(+おやつ)
一度に胃へ入る量を減らせることに加え、
空腹状態から一気に大量のフードを食べる状況を
避けやすくなります。
早食いする犬の場合は、
食事速度を落とす工夫も検討しなければなりません。
ただ、色々書きましたが、
何より大切なのは
「初期症状を知っていること」
だと思います。
どれだけ予防していても
GDVを100%防ぐことはできません。
だからこそ
超大型犬の飼い主として
私が一番重要だと思っているのは、
「起きたときに気づけること」
です。
代表的な症状は
吐こうとするのに何も出ない
何度もえずく、空吐きをする
大量のよだれ
落ち着きがなくウロウロする
腹部を気にする
お腹が急に膨らむ
呼吸が速い、苦しそう
歯茎が白っぽくなる
脈が速い、弱い
ぐったりする
立てない、倒れる
など。
特に、
「吐きたそうなのに吐けない」
「落ち着かない」
「お腹が張っている」
という組み合わせは要注意です。
ですが、
すべての犬で分かりやすく
腹部がパンパンになるとは限りません。
「お腹が膨れていないから胃捻転ではない」
と自己判断するのは危険です。
そして
疑ったら、家でできる治療はありません。
GDVが疑われる場合は緊急受診一択です。
病院では状態に応じて
静脈路確保と輸液
↓
酸素投与
↓
胃内の減圧
↓
血液検査・画像診断
↓
全身状態を安定させながら緊急手術
という流れで治療が行われます。
胃の減圧には口から胃管を入れる方法や
腹壁から胃に針・カテーテルを刺して
ガスを抜く方法などがあります。
しかし、
ガスを抜けば治療終了ではありません。
胃が捻転している場合は
原則として手術で胃を正常な位置に戻し
胃壁や脾臓の状態を確認する必要があります。
そして再び捻転することを防ぐために行われるのが
胃固定術(gastropexy)です。
予防的胃固定術という選択肢もありますね。
GDVリスクの高い犬種では、
発症していない健康な段階で胃を腹壁に固定する
予防的胃固定術
prophylactic gastropexy
という選択肢があります。
避妊・去勢手術と同時に行われることもあり
現在では腹腔鏡を利用した低侵襲な方法もあります。
ですが、冒頭で少しお伝えしたように、
胃固定術をしても
「胃拡張」そのものを
完全に防げるわけではありません。
固定する目的は
胃が大きく回転して命に関わる
「捻転」を起こすリスクを
大幅に低下させることになります。
GDVを一度発症して
胃を正常な位置へ戻しただけでは
再発率が非常に高いため、
GDVの手術時には通常
胃固定術も行われます。
ですが、
健康な犬に
予防的胃固定術を行うかどうかは
犬種
血縁犬の発症歴
年齢
麻酔リスク
などを含め、
かかりつけの獣医師や外科医と
相談して慎重に決めることになります。
GDVって
「絶対に防ぐ」
ではなくて
「知って備える」
が大切だと常々思います。
胃拡張・胃捻転について
調べれば調べるほど、
「これさえ守れば絶対に防げる」
という病気ではないことが分かります。
だから我が家では、
食事は一度に大量に与えない。
食事前後の激しい運動を避ける。
早食いや一気飲みに注意する。
食事中に余計なストレスをかけない。
そして何より、
異変があれば
GDVを疑えるようにしておく。
ということを意識しています。
もうですね、
食後にちょっと「しゃっくり」なんてしたら
こののんびりマイペースな私ですら
一瞬で目つきは鋭くなり、寄り添って観察します。
これは決して大げさなことではありません。
セントバーナードは
大きくて
穏やかで
見ているだけで安心するような犬です。
でも、
その大きな身体だからこそ
知っておかなければならない病気があります。
怖がるために知るのではなく
「もし起きたとき、迷わず動けるように知っておく」
それが
超大型犬と暮らすうえで
とても
とても
大切なことだと思っています。
