昨日の夜はかなりの波が来た。
四十九日前だからか。
子供達の前なのにコントロール出来ない。
しかも、二年前、家族で旅行に行っていたのだ。
その時の写真がスマホにこの日の思い出として、表示されたから。
『また行きたいって言ってたじゃん!今度はあのお店に行こうって言ってたじゃん!何でだよ!何で、何で、俺もそっちに行きたい』
祭壇の前でのたうち回るほど泣き叫んだ。
子供達は黙って見ていたが、次女が私を後ろから抱きしめてきた。
『ごめんね。パパがあの日ちゃんと家にいたらママはこんな事にならなかった。だからパパが悪いんだ』
『パパは悪く無い、パパは誰も悪く無いって言ってたじゃん』
『でも、ママはいなくなったんだよ!お前達の大好きなママが!パパも大好きなママが!だからパパはもう生きていたく無いんだよ!』
『何で、パパはママは心の中に生きてるって言ってたじゃん。生きようよ。みんなで生きようよ。私達が大人になっても育てるって言ってたじゃん』
次女は泣きながら私に訴えた。
長女は黙って涙を流しながら、離れて見ていた。
『生きれるかな、パパ、生きれるかな』
『いろんな人達に助けてもらおうって自分で言ってたじゃん。そうすれば良いんでしょ』
自分で言った言葉を8歳の次女に言い返させられる。
こんな子供達に妻は育ててくれたんだ。
俺は何という小さな人間なんだろう。
妻の愛とはどこまで大きかったんだろう。
この小さな身体からそこまでの言葉を紡ぐ次女。
黙って涙をポロポロ流す長女。
私は、出来るのだろうか。
子供達を育てられるのだろうか。
不安は尽きない。
でも、私のために泣いてくれる子供達はこの子達しかいない。
『そうだね、そうだね』
長女も呼び、3人で抱きしめ合った。
『今までは、タイヤが4つあった。でも。今は3つになった。3輪車だ。タイヤが1つ減ったから、不安定になった。ヨロヨロしちゃう。まっすぐ進むのも、曲がるのも。だから、一人一人のタイヤを大きくしようね。大きくてしっかりしたタイヤになろう。そうすれば、3輪車でもしっかりと進める、曲がれる。だから、今までより大変になるけど、大きなタイヤになろうね』
子供達に、そう言うと、思い付いた。
『円陣を組もう!』
『何それ?』
『3人で肩を組んで、パパが『行くぞー!』って言うから、お前達は『オー!』って大きい声で言うんだ。パパも言うから』
妻の祭壇の前で円陣を組んだ。
『行くぞー!』
『オー!』
夜だって構わない。
これは家族4人の決まり事にするんだ。
『これからいろんな時に円陣組もうね』
『わかった。ママ嫌がらないかな?』
『ママもやってくれてるよ。大丈夫』
その後、お風呂に入って寝た。
今朝は、長めに寝れた気がする。
でも、目が覚めても布団から出たくなかった。
一旦トイレに行って、また布団に戻って。
子供達が起きて、部屋を出る音がした。
目を閉じて聞いていた。
私は、身体を左に向け、自分の手で自分の両肩を抱き、胎児の様な体勢をしていた。
段々と意識が薄れるが、子供達の声も聞こえる。
そのうち、寝ているのと、起きているとの中間の様な感覚になった。
ぼんやりとした風景が浮かんだ。
どこかの店の中。
バザーの会場の様だ。
机と椅子だけの店。
妻と私の父親が座っている。
父親は私に、パンを渡してきた
『コレ、辛いけど食べな』
私は受け取り食べる。ソーセージが入った硬めのパン。辛くは無い。
すると場面が変わり、妻とテレビを見ている。
立ったままで。電器店だろうか?家の様な気もする。
テレビでは街のお店が紹介されている。
ヒルナンデスみたいな番組だ。
その街は、割と近い所。
『ねぇ、ここ行こうか?』
妻に聞く
『ウ~ン』
どっちでも良い感じの返事だ。
『ねぇねぇ、行こうよ』
私はそう言うと、妻を横から抱きしめた。
柔らかい感触がした。妻の感触だ。
『あー、わかったよ』
面倒くさそうに言う妻。
私は思い切って妻の顔に近づく。
そのままキスしようとした。
『ちょっと、ちょっと、やめてよ』
フッと目が覚めた。
良い夢で出て来てくれたよ。
続きが見たくて、もう一度その体勢をしてみたが、駄目だった。
何で父親も一緒だったんだろう。
父親は4年前に病で旅立っている。
でも、その前に妻は私の実家に遊びに行った時、父親の異変に気がつき、急遽病院に運ばれた事で、事なきを得た事がある。
私自身は、父親と仲が良かった訳では無い。
でも、妻は私の父親を
『面白いから好き』
と、言っていた。
だから、あちらではもう会ってるんだ。
一緒に見守ってるよ。って事なんだろう。
子供達と、3人揃って、いつもより長めに手を合わせた。
『心の中でママに言いたい事を言って』
そんな日曜日だ。