借りていた、美智子「橋をかける 子供時代の読書の思い出」(文藝春秋)を読了した。
本書は、98年の国際児童図書評議会IBBYで流された、当時の美智子皇后の約1時間の基調講演を収録したものである。以前致知で紹介されていて、今さらながら読んだ次第である。
人は自分と周囲との間に一つ一つ橋をかけ、人とも物ともつながりを深めると表現され、それがタイトルの「橋をかける」の意味するところとなっている。読書にもその機能があることが、自身の読書遍歴を交えて述べられている。
神話や伝説は、正確な史実ではないが不思議とその民族を象徴する。死生観や自然観が分かる。またそれ故他国に親しみを持つ入口にもなりうるという。正しい歴史でないからと切り捨てるべきではないということを学んだ気がした。
人生の全てが決して単純ではない。我々は複雑さに耐えていかねばならない。それは人と人、国と国との関係においても。読書がそれを教えてくれると語り、本への感謝を込めて文章が締めくくられている。本書には多数の文学者や書籍の名前が次から次へと出て来ており、それらを紹介する注釈のページも多くなっている。幅広い読書量と知性、そしてその優しさに圧倒された。