伊澤理江「黒い海 船は突然、深海へ消えた」を読み終えた。衝撃だった。怒りも湧いた。
2008年6月、太平洋上で第58寿和丸が沈没した。20人中、奇跡的に生き残った3人の証言で事故の様子が明らかとなる。1・2章では、あっという間の転覆・沈没の様が描かれ本当に恐怖が伝わってきた。
3年後に運輸安全委員会が出した結論は、予想に反し、波が原因だというものだった。生存者や直後に救出に向かった証言をすべて無視したものだった。
著者は、船を所有していた野崎社長や様々な専門家の証言や見解を集める。著者の調べた過程が素人にも理解できるように書かれている。それ故この事故とその結論がいかに不可解であるかがよくわかった。
原因の1つとして、潜水艦によるものではないかと挙げられている。オレの印象は極めて黒である。しかし船体は5~6千メートルの深海に沈み調査も事実上不可能であるのだ。また、そういう調査の結論に至った資料の開示も十分になされていない。
野崎社長には東北大震災の影響も大きくのしかかり、本当に理不尽という言葉でいっぱいだと思った。
オレとしてはとにかく終章のタイトルにもなった「希望」にすがるしかないと思っている。とにかくまじで本当に腹立たしい。
本書は想像を超える力作だった。