著者の久保田沙耶氏が、瀬戸内の粟島にある古い郵便局舎を蘇らせたアートプロジェクトである。
「届け先のわからない手紙を受け付ける郵便局」として預かった4万通(当時)の手紙から、お母さんあて, お母さんからの手紙を収録した漂流郵便局第2弾の書籍である。ちなみに前作は未読である。
冒頭から達筆で素敵な手紙がいくつも掲載されている。内容は亡くなった母親への手紙が多い。がそのうち、存命な母親に直接は言いづらい感謝の言葉を綴った手紙なども紹介されていく。逆に母から子へのものも取り上げられていた。
とにかく感動した。しかし自分には書けない文章であり、現実離れした感じも拭えなかった。それはオレの性格上仕方のないことなのかもしれない。
本書の最後の方に、著者が祈りについて書いている。辞書で引いた言葉から、意思疎通そのものでなくそうしようとすることが大事ではないかと述べている。漂流郵便局に出す手紙は本人宛てでなく、著者が祈りとも言える行為であるかのように感じた。
このご時世にわざわざ紙に書いて切手を貼ってポストに投函するという行為を採るのはどこか不思議な感覚である。ほぼほぼ印刷でごく少ない年賀状を出すしかない自分にとっては非常に新鮮な気もする。出す相手などすぐには思いつかないのだが、昔お世話になりながら不義理してしまった人たちに、せめて自分だけでも納得させたくて手紙を出してみたいという気になってきた…。
漂流郵便局については、マンガ「ミステリと言う勿れ」で初めて知って興味を持っていたものである。実際に行けばそこに届けられた手紙を読めるという。本書のテーマである母にまつわるもの以外の様々な手紙を読んでみたいと感じた。幸い住んでいる岡山県からはそれほど遠くはない。まじで行ってみたいと思った。