普段生活をしていると、他人の心の襞に触れるようなことは本能的に避ける。見てはいけないもの、触れてはならぬものがあると思うからだ。
でも、この本にはあちらこちらにその種の見てはならぬものを見てしまった時のような罪悪感を感じる箇所がある。例えば、
P209
「人は、住み慣れたはずの場所で、よく迷子になる。無意識に選択してきたことを、どこで間違ってしまったのかと、反芻する。
あそこまではよかったのか、いや、あの場所に行かなければ。あの人に出会わなければ。あんなことを言わなければ。
でも決して、過去に戻れない。過去を否定することはできない。ならば進むしかない。たったひとりで。」
彼女の女優人生で、大きな悲劇があったのだと思う。
以下は 2015年11月24日の読売の記事から
20代半ばで女優をやめようかと悩んだ際に「本に救われた」と感じてからは、より強いものとなった。芸能界は不確かな世界。誰かの一言で、決まりかけていた仕事が流れることもある。
「人って簡単に他人のものを奪えるんだと思ったことがあったんです。じゃあ、誰にも奪えないものは何だろうって。それが私には本でした。読めば、自分の中に確かに蓄積されていくものがある」
彼女の心が大きく傷つく出来事があったことを率直に語っている。いったい誰に何を奪われてしまったのか(お父さんがそいつを怒ってきますよ)
私はまるで自分の娘に不幸が訪れた時のような不憫さを感じた。それでもたった一人で前を向いていこうとする彼女の姿に「もうそんなに頑張らなくてもいいよ。ただ、幸せになることを考えてほしい」と念じてしまう。