一般的にはお盆も終わり、ご先祖さま初め死した人々はあちらの世界にお帰りになるころですね。(もっとも一説によれば本当のお盆は9月中頃まで続いており、死者の皆様はまだこちらにいらっしゃるそうです。)
私も含めて我が家族は何かしらの霊的な体験をしているので今回は時節柄、亡き父を偲び彼が生前体験した怖いお話を書こうと思います。

 

私の生まれ育った所は元々城下町で、私の生家はお城のお堀の先にある川を越えた所にありました。お堀の脇には国道が通っており、今でこそ立派な道ですが昔は車がやっと2台対向できる舗装もされていない細い道でした。昭和30年代ですから街灯も少なく、お堀の途中にぽつんと1つあるだけで夜は暗い道でした。またその街灯の横にはこれ見よがしに柳の木があり、偶然とはいえ不気味さを演出していました。

 

父が母と結婚し、私がもうすぐ産まれようとしていた夏の夜。父は仕事帰り(と言ってましたが本当は博打の帰り)に大きなスイカを一つ買って、自転車の荷台にくくりつけて走っていました。夜も更けてちょうどお堀に差し掛かった時、遠くに見える街灯脇の柳の木の辺りに人影が見えました。走り近づいて行くとそれは白装束を着て髪はボサボサの老婆だったそうです。自宅に帰るにはその道を通るほか無いため、父は気味が悪いと思いながらもさっさと走り去ろうと自転車を漕いでいたところ、その老婆は柳の木から父の自転車の前に急に飛び出してきました。そして白目を剥いてケタケタと笑ったのです。父は仰天して全速力で老婆を避けて逃げました。ところがその老婆は笑いながら尋常じゃない速さで自転車を追いかけてくるのです。父はとにかく追いつかれまいと必死にペダルを漕ぎ続け、自宅まで一目さんに帰りました。自宅に着いた時、老婆の姿はありませんでした。助かった!…と思い荷台のスイカに目をやると、一部がえぐられた様な形になって無かったそうです。あんなに怖かったことはないと、生前父は話してくれました。

 

その父も亡くなって今年で6年経ちました。幸いにも父は、四十九日までは何かと騒がしかったですが納骨後はパッタリと気配が無くなり、無事にあちらの世界に逝った様で安心しています。