大いなるゲーム | ジョン・ワトソンのブログ

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更新が遅くなって申し訳ない。一連の出来事をこうして整理するのに時間が掛かってしまった。それは、爆発音と共に始まった。爆発の原因はどうも向かいの家でのガス漏れらしい。シャーロックと同居するようになった今、「どうも~らしい」という表現が、ほとんど意味をなさない情報に使われることは十分に承知している。だが、現場検証の結果、爆発物が仕掛けられていたことが判明した。手掛かりはもう1つ。現場に残された箱の中にあった封筒。その中には何とピンクの携帯電話が入っていた。僕のブログの読者の皆さんなら、以前アップした「ピンク色の研究」を思い出すかもしれない。その偶然に驚いたのは言うに及ばず。

「僕のブログの読者」。この唐突とも思える発言からも察するだろうが、自分の毎日を書き記すことが、楽しく思えるようになってきた。スコットランドヤードの警官たちも僕のブログを読んでいると知ったからか、尚更そう思う。その詳細は、また今度。

ピンクの携帯の電源を入れると、伝言メッセージが1件あった。

「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ」

5回の時報音、5つの種…。シャーロックはそれが「警告」であることを悟った。過去に、5つのオレンジの種をシンボルとする秘密結社がいたのを思い出したからだ。それだけじゃない。空き部屋の写真が添付されたメールもあった。シャーロックが見覚えのある部屋、地下室…。そこは、ベーカー街221Cだった! すぐそこに向かうと、部屋には1足のスニーカーが置いてある。そこで、例のピンクの携帯が鳴り出した。声の主は女性で、泣いている。この女性は何者かに誘拐され、体に爆弾を巻き付けられていた。女性は、何者かの指示通りに、メッセージを一字一句正確に読み上げた。余計なことを言えば…。シャーロックは迷うことなく冒険の渦中に飛び込むが、何の罪もない人が死の恐怖に怯えていることなど、気にも留める様子はない。電話の向こうの女性は涙ながらに訴えてきた。最初の問題の制限時間は12時間。

僕たちは、スニーカーを調べるのにバーツ(聖バーソロミュー病院)に向かった。いつものことだが、僕には問題そのものさえ分からないし、問題の答えなんて尚更分からない。ラボにいると、モリー・フーパーに恋人のジムを紹介された。どうも病院のIT部で働いているらしい。ここでもあえて、「どうも~らしい」という表現を使っておこう。2人の「出会い」のきっかけを、今ちょうど読んだところだ。

それより、ジムが部屋から出るとシャーロックは、彼がゲイであることをモリーに事細かに説明し始めた。シャーロックらしいが、モリーにとっては知りたくもない真実だということはお構いなし!

スニーカーに話を戻そう。僕はシャーロックに言われるがまま、自分なりの推理を披露してみたが、無駄に恥をかかされただけだった。シャーロック曰く、スニーカーは20年前のもの、付着していた花粉から持ち主はサセックスの出身。そこでシャーロックはある名前を口にした。「カール・パワーズ」。シャーロックが子供の頃に、プール事故で亡くなった少年の名前だった。世間は不慮の事故だと決めつけていたらしいが、シャーロックはプールから消えた少年のスニーカーが気掛かりだったという。それが今、20年の時を経て目の前に現れた。スニーカーに付着していたボツリヌス菌を見つけたシャーロックは、カールの死因が毒殺であると推断。皮膚炎の治療薬に毒物が混入されていたという。問題が解けたことを犯人に伝える為、シャーロックはブログにメッセージを書き込んだ。読者のみなさんの中には、あの意味不明な書き込みを読んで一体何事かと不審に思った方もいたのでは…。

ピンクの携帯に再び女性から電話があった。女性の居場所が判明し、その後無事に保護された。ただ、僕はシャーロックの「見事だ」には、正直頭にきた。それはどういう意味だと尋ねると、「僕以外に退屈にしている人間がいるんだ」という答えが返ってきた。爆弾魔の標的がシャーロックであることは明白だが、どうやら当の本人もそれを楽しんでいるようだ。

「ピッ、ピッ、ピッ、ピーッ。」

新たな伝言メッセージと画像。今度は、乗り捨てられた1台のスポーツカーが写っていた。そして先程の女性同様、恐怖に怯えた1人の男性から電話がかかってきた。残された時間は8時間。スコットランドヤードの▓▓▓▓▓▓▓▓が車の居場所を突き止め、シャーロックが推理を始めた。その車はヤヌス・カーズという会社のレンタカーだった。車を借りに来た男性の名は、▓▓▓ ▓▓▓▓▓▓▓▓。彼の行方が分からなくなっていた。シャーロックにとって今回の事件は楽勝だったらしい。行方不明の男性の妻に話を聞き、ヤヌス・カーズに出向いただけで、シャーロックは事件の真相を突き止めた。よくある保険金詐欺だ。シャーロックは再び、ブログへ答えを書き込んだ。そして、体に爆弾を巻き付けられた男性が無事保護された。男性が保護された場所は、ロンドンの中心部。もしシャーロックの推理が外れていたら…。ともあれ、さっきも書いたがシャーロックは楽しんでいる。僕もハドソン夫人も、爆弾魔に操られた人達も、ゲームの駒にすぎないらしい。その時、僕の頭に今まで何度か耳にした事のある「モリアーティ」という名前が浮かんだ。相手はヤツなのか? そうシャーロックに問いかけると、彼は眼の奥を光らせた。

「ピッ、ピッ、ピーッ」

新たな伝言と3つ目の画像。僕には写真の女性が誰だかすぐに分かったが、シャーロックは全く見覚えがないようだ。たまには、シャーロックに勝つのも気分がいいものだ。写真の女性は、先日亡くなったコニー・プリンスだった。破傷風に感染して死んだと報じられたが、爆弾魔は明らかに別のことを示唆している。ピンクの携帯に電話が掛かってきた。声の主は、目の見えない老婦人。誰がそんな惨いことを考える? そんな酷いことが誰に出来る? 僕は、コニーの弟のケニーを訪ねた。シャーロックはというと、コニーのファンサイトで情報を集め、いつもの巧みなスタイルとコネを使い「解答」を見出していた。僕たちは、破傷風で亡くなったとされていたコニーが、実は毒殺されていたことを突き止めた。使用人の▓▓▓▓▓が、ボトックスの治療を装い、コニーに致死量の毒物を注射したのだ。あの悲劇さえ起きなければ、この事件の真相には「笑えた」と言ったかもしれない。シャーロックは、ブログに答えを書き込んだ。今までと同様、被害者から電話が掛かってきた。ただその時、老婦人は致命的なミスを犯してしまう。僕たちに爆弾魔の情報を伝えようとした瞬間… 爆発が起きた。老婦人の住まいは、グラスゴーにあるアパート。12人が命を落とした。

僕は、理解が出来ない。シャーロックと宿敵の謎解きゲーム…。ヤツをシャーロックの宿敵と呼んでいいものか。何の罪もない人々が、12人もの人が命を落としてしまったというのに、人の命などこれっぽっちも気にしていない様子のシャーロックに、僕は激怒した。シャーロックは「気にしない」と言い切る。確かに、気にしたところで人の命は救えない。でも、そう簡単に割り切れるのかと問い詰めると、「割り切れる」と何の迷いもなく返事が返ってきた。サリー・ドノヴァンの言う通り、シャーロックは「変人」なのかもしれない。

「ピッ、ピーッ」

新たなメッセージとテムズ川の写真。スコットランドヤードに連絡を取ったシャーロックは、テムズ川沿いで死体が発見されたことを告げられる。現場に到着するやシャーロックは亡くなった男性が警備員で、ヒックマン・ギャラリーでお披露目が予定されている名作、失われたと思われていた絵画に何らかの繋がりがあるはずだと言い放った。そもそも絵画は贋作だとか。ここで推理の過程を説明することは簡単だが、あれは正に「その場にいた者にしか分からない」感動だ。それだけじゃない、警備員は何者かに殺害されたらしい。「何者か」と人間扱いするには少しムリがあるが…。それは、後に実物に遭遇した僕の正直な意見だ。その名も、ゴーレム。素手で命を絞り取る暗殺者! だが、なぜ警備員は無残にも殺されたのか。その謎を解くため、僕は警備員のアパートに行き、そこで▓▓▓▓▓▓教授が警備員に残したとされる留守番電話のメッセージを聞いた。「何かおかしい」と電話をしてきた警備員に、教授は何か知らせたいことがあった様子だった。その他の手掛かりと言えば、警備員は天文マニアだったこと。シャーロックによると、ゴーレムに殺された理由は、絵画が贋作であることを知ってしまったためだとか。僕たちは、▓▓▓▓▓▓教授の勤務先であるプラネタリウムに急行したが、教授はゴーレムに殺された後だった。そして、ゴーレムはシャーロックに襲いかかってきた。恐怖に歪むシャーロックの顔を見るのはあの時が初めてだったと思う。僕はというと、あまりの恐怖に下着を汚しそうになったさ。アフガニスタンで地獄の戦闘を経験した僕だが、ゴーレムは人間ではない。ヤツは正真正銘の怪物だ! 何とかシャーロックを救い出したが(銃でゴーレムの頭を一撃… 僕は自分を頭脳派だとは一度も言ってない)、ゴーレムにはまんまと逃げられた。

僕たちはギャラリーに戻り、館長を問い詰めた。彼女は全てを否定し「絵画は本物」と一点張り。話すだけ無駄だと思い始めた時、携帯が鳴った。

子供の声がする。

電話の向こうで、10からカウントダウンする子供の声が聞こえてきた。シャーロックは電話に向かって絵画が贋作だと叫ぶが、爆弾魔は証拠が欲しいらしい。子供が死へのカウントダウンを続ける一方、シャーロックは食い入るように絵画を見つめる。残りわずか数秒。その時、シャーロックはある物を見つけた。警備員も同じように贋作の証拠となる物を見つけ、プラネタリウムで働く教授に電話をしたのだろう。この絵には、1858年まで存在を知られていなかった超新星が描かれていた。つまり、この絵が1640年代の芸術家による作品であるはずがない。死のカウントダウンが止まった。

館長は贋作であることを認めざるを得なかった。そして彼女が接触した人物たちは、皆同じボスの手下だったそうだ。そう、モリアーティ。

アパートに戻った僕たちは次の電話を待った。だが、連絡が来る様子は一向になく、僕は恋人のサラに会いに行くことにした。表に出るなり、一台のタクシーが目の前で止まった。運転手に「乗っていくか」と聞かれたが、地下鉄に乗るつもりだと答えると、「聞いているんじゃない。乗れと言っているんだ」と言われた。運転手の顔を見ると、銃口が見つめ返してきた。僕は従うしかなかった。

どうやら気絶させられたらしい。気が付いた時は、塩素の臭いがした。そこは、スポーツセンターの中にあるプールだった。体には爆弾が巻き付けられている。コート越しに伝わる感触。その時、耳の中で「声」がした。どうやら、イヤホンを付けられていたらしい。「お前もバカじゃないはずだ。今から俺の言うことをそっくりそのまま繰り返すんだ。さもないと2度とブログがかけなくなるぞ」と声は言った。

声に指示されるままプールサイドに出ると、シャーロックがいた。どこか聞き覚えのある声は、僕の「台詞」をささやき始めた。それは、まるで僕が一連の事件の黒幕であるかの印象を与える発言だった。この僕、ジョン・ワトソンこそが「モリアーティ」だったと。それを聞いたシャーロックの目は「怒り」ではなく、迷子の子供のような「悲しみ」に満ちていた。シャーロックが一瞬でも僕を疑った思いは、シャーロックのその人間的な感情の表れにかき消された。シャーロックは僕との友情に思いを向けてくれた。あのシャーロックが不本意ながら「心」を見せたのだ。僕が体に爆弾を巻きつけているのに気が付くと、シャーロックは全てを悟った。

モリアーティが姿を現した。ジムだった。バーツ(聖バーソロミュー病院)で紹介されたモリー・フーバーの恋人、IT部で働くジムだった! あのちょっとした出来事も、モリアーティが仕掛けたゲームの一部にしか過ぎなかったというわけだ。シャーロックとモリアーティは念願の対面に嬉しそうだった。だがレーザーポインターが僕の胸に定められた時、自分がゲームの駒に過ぎないことを思い知らされた。少しでも妙な動きをすれば、闇に潜む狙撃手にこの爆弾を撃ち抜かれることは明白だった。会話を続ける2人を観察してみると、あることに気付いた。ジム・モリアーティとシャーロックは対照的なのだが、どこか似ている部分がある。モリアーティは自分を「コンサルタント(諮問)犯罪者」と呼び、依頼人が望むならば何でもする男という訳だ。2人は仲良くおしゃべりを楽しんでいる。僕の体にはその場に居る全員を抹殺するのに十分な爆弾が巻かれているというのに、事の深刻さを理解しているのは、どうやら僕だけのようだ。一瞬の隙を狙って、僕はモリアーティに掴みかかった。こうすれば、モリアーティのアシスタント(いわゆる、モリアーティの「同僚」?)が引き金を引くことはない。だが、レーザーポインターはあっさりシャーロックの頭に移動…。僕はヤツから手を離さざるを得なかった。シャーロックも自分を犠牲にしてでも、僕のことを救おうとするだろうか。一瞬そんな考えが頭を過ぎった。いずれにしても、残された時間は僅かしかない。

だが、モリアーティの気が変わり、僕たちは助かった。「いつかシャーロックを殺す」とは言っていたが、命は助かった。モリアーティにとって、やはり単なるゲームにしか過ぎなかったのだ。モリアーティが去ると、シャーロックは僕の体に巻かれた爆弾を引き剥がした。だが息を整える間もなく、再び無数のレーザーポインターが当てられた。「また、気が変わった」と言いながら、モリアーティが戻ってきた! 今度こそ、お終いだ。シャーロックは、僕から外した爆弾に、銃の狙いを定めた。死ぬ時はモリアーティも一緒だと言わんばかりに。僕は息を殺して「その時」を待った。2人が何を仕出かすか、僕には想像も出来なかった。モリアーティは血も涙もない人間だ。シャーロックには「心」がない。これが運命なのか? 僕は、本当に死んでしまうのか? よりによってスポーツセンターで?その時、モリアーティの携帯に電話が掛かってきた。電話に出ると、ヤツは狙撃手に撤収を命じた。助かったのだ。僕は大きく安堵した。

こうして僕は、シャーロックとまた冒険の日々を送ることになった。