「高3ロックファンのアルバム紹介」
第1回は1992年発表 R.E.M.の名盤 「オートマチック・フォー・ザ・ピープル」 です。
1980年代のロックシーンを振り返る際、果たしてどれだけの人がR.E.M.の残した功績について触れるのだろうか。僕が思うに、多くのロックファンは彼等の偉大さを見逃している気がしてならない。
マイケルジャクソンやマドンナなどのダンスミュージックやデュランデュラン等の甘口ロックが蔓延していた80年代の音楽シーンにおいて、R.E.M.はピュアなロックに飢えた世界中の音楽ファンの期待に応えた数少ないバンドだった。
MTV誕生を発端として、装飾過多と言っても差し支えない音楽が数多く誕生したのが1980年代なのだが「それらの音楽も素晴らしいわけだが」R.E.M.の音楽には一切の雑味がない。
パンク、フォーク、カントリー‥様々なジャンルに影響を受けたR.E.M.メンバーが繰り出すロックは何処までも澄んでいて、それでいて熱い。多くのジャンルを組み合わせているため、一歩間違えれば、鼻白まれるゲテモノ音楽になってしまうわけですが、彼等はそれらを見事に融合させている。本当に天晴れなバンドである。半端ない下積み期間があったのだろう。
彼等のデビューは1983年。デビューアルバム 「マーマー」が専門家に激賞され、全米アルバムチャート36位に食い込むという鮮烈なデビューを飾った。
そんな世間の反応に奢ることなく、ファンに対して何処までも誠実な彼等は 「ドキュメント」や「グリーン」等の歴史的名盤を発表し続けた。
1990年代に突入すると、R.E.M.はアメリカの大物ロックバンドから世界的ロックバンドへ自らを昇華させた。1991年発表のアルバム「アウト・オブ・タイム」が全世界で大ヒットしたのだ。
全米・全英1位 他国のチャートでも軒並みTOP10に食い込んだ本作でR.E.M.は完全にブレークした。ポップな魅力に溢れた「シャイニー・ハッピー・ピープル」や全米4位の大ヒットとなった「ルージング・マイ・レリジョン」等のキラーチューンはロックファンのみならず、様々な音楽ファンの琴線に触れ、全世界で2000万枚近く売り上げるモンスターアルバムとなったのだ。
さて、R.E.M.の次作はどんなものになるのだろうか?音楽ファンの期待が高まる中、彼等は翌年の1992年、今回紹介するアルバム 「オートマチック・フォー・ザ・ピープル」を発表した。
オートマチック・フォー・ザ・ピープル
全米2位 全英1位 推定売り上げ 1700万枚
1 Drive
2 Try not to breathe
3 The sidewinder sleeps tonite
4 Everybody hurts
5 New orleans instrumental no.1
6 Sweetness follows
7 Monty got a raw deal
8 Ignoreland
9 Star me kitten
10 Man on the moon
11 Nightswimming
12 Find the river
最初にこのアルバムを聴いた時の感想は「めっちゃ暗い!」だった。壮大なストリングスを使用した曲が多く収録されているが、歌詞は死をテーマにしたような内省的なものが多いのだ。しかも難解。
R.E.M.は鬱になったのか?と一瞬思ったくらいです笑。はっきり言って、最初はこのアルバムを受け入れることが出来なかった。前作までのR.E.M.とのギャップに困惑したな。
しかし、繰り返し繰り返し聴く内に、どの曲も実は素晴らしいメロディを持つことに気づく。例えば1曲目の「ドライブ」。病的なまでに重いサウンドとボーカルに最初は辟易したが、徐々にそれらの虜になっていく自分がいる。気づけば、自分は何十回も繰り返し本作を聴いていた。
彼等は鬱なんかじゃなかった。「ありめーだ」むしろ、安定感のある切れ味鋭いソングライティングを随所で見せてくれる。特にアルバムラスト3曲は圧巻の完成度。いつ聴いても鳥肌が止まらない。
聴く内に気付いたことは他にもある。このアルバムは悲壮感だけでなく、未来への希望もしっかり提示しているのだ。それはアルバムのラスト「Find the river」等で確認できる。政治的に混乱していた当時のアメリカに不安を感じながらも、「それでも僕たちは前を向いていかなくてはならないんだぜ。」
R.E.M.のそんな想いが本作のサウンドを生んだのかもしれない。もしそうならば、実にR.E.M.らしい、素敵な話じゃないか。彼等のそういう誠実さにファンは惹かれているのだから。
万人受けするアルバムではないかもしれない。しかし、絶望と希望を同居させた本作が持つ魅力はいつまでも色褪せることはない。僕は一生このアルバムを聴き続けるつもりだ。
ニルヴァーナのカート・コバーンは自殺する直前にこのアルバムを聴いたらしい。
彼は人生の最期に何故本作を選んだのか?彼は本作を聴きながら何を思ったのか?
そんな答えの無い問いに考えを巡らせながら、今夜もこのアルバムに耳を傾けようと思う。



