今度は携帯電子書籍のヒットした要素を別の観点から見てみる。
コンテンツはあくまでも条件が揃い、その環境に乗って売れただけである。

その要素を以下に。
1.普及台数
2.課金
3.通信手段

1.普及台数
日本人の一人一台は持っているであろう携帯電話。これが圧倒的に大きい。
これから普及させようとしてた電子書籍端末に比べ当初から多くのシェアを得ているアドバンテージはやはり有利だった。
且つ汎用的なのである。本を読む為だけだけに端末を高価な金額を出して購入するのと違い、
あくまでも電話をする為に購入し、そのおまけとしてi-modeを利用したりezwebを利用する。
これが大きい。本を読みたいユーザーに加え、ちょっと興味があるから試しに買ってみようかなというユーザも取り込める。

2.課金
この時代、まだネットでのクレジット決済に抵抗があるユーザが多数いた。その為PCでモノを購入するという行為は敷居が高かった。それに比べ携帯電話はキャリアが代行し、携帯電話料金と一緒に請求してくれる。これになれているユーザの方が多かった。
それに付随し、多くの携帯電子書籍サイトは月額制の為配信会社は安定した収益を得られる。
その為多くの携帯サイトが乱立し、より大きなマーケットになった。

3.通信手段
この時代の専用端末はインターネットに直接アクセスする事が出来なかった。
一度コンテンツをPCにて購入し、それから端末にコンテンツデータを移動させるのである。
ユーザとしては非常に手間であった。
それに比べ、携帯電話なら欲しいコンテンツを直接サイトからDLでき、どこでも場所を選ばず(通信が届く範囲なら)読みたい時に読める。

この3つの要素が専用端末比べ優位性を築いた為、大きな市場へと成長して行った。

コンテンツ的な切り口から見て行くと、
最初に売れ筋となったのはハーレクイーン等のラブロマンス系がそこそこ出ていた。
これは市場の7割が女性ユーザであった為である。
ハーレクインコミックなんて街の書店さんではほとんど見かけない。
出版社は宙出版。

次にBL(ボーイズラブ)が売れた。このジャンルは男×男が恋愛するという自分からすると
相当異色なジャンルなのだが、女性にとってのH本のようなもので相当ニッチなコンテンツだ。
いわゆる腐女子と呼ばれる彼女たちが好むジャンルだが、腐女子は通常紙の本で買うので
一般女性が本屋で買えない本を買っていたんだろう。
ちなみに今でも一定的に売れている。
出版社としてはリブレ出版や秋水社、フロンティアワークス等が主。

その次にTL(ティーンズラブ)。出版社としてはコアマガジンや竹書房が主で
女性向けのラブコメ的な漫画なのだが割と表現が直接的なジャンルだ。
どうもこの辺で男性ユーザーも食いついてくる様になった。

そして男性用H系漫画。いわゆるマル成やビニ本的なジャンル。
出版社は松文館、辰巳出版、実業之日本社等。
これで一気に男性ユーザーも取り込み携帯コミック市場は爆発的な広がりを見せた。
厳密に言うと女性ユーザーが多いサイトでもこのジャンルは割と売れているそうなので
女性ユーザーも買っているのだろうと推測される。

このように見て行くと携帯コミックを加速させたのは割と性に関わる漫画ばかり売れている。
つまり、書店で購入しづらく、家に置いておいて不都合があるものに電子書籍としての需要があったといえる。売れている時間帯も深夜が中心だ。

もう一つ注目すべきポイントは中小の出版社ばかりが売れ筋として上がっている。
つまり、この市場は講談社、集英社等の大手出版社が牽引したのではなく
中小出版社が引っ張っていったのだ。

こういっては失礼だがユーザーはコンテンツの質ではなく
携帯コミックに限っては欲望を求めた。
紙の市場が表だとすると、裏の市場は電子書籍が補っている形であろうか。

ちなみにこの携帯コミックは出版不況と言われる中、多くの中小出版社を救ったということは
いうまでもない。
2009年、電子書籍市場の規模は574億に達した。
うち、510億は携帯電子書籍が占めている。
中でも目立つのは電子コミックで携帯電子書籍の70%を占め、
電子書籍の市場規模拡大の大きな原動力となった。

日本のガラパゴス携帯市場の中で、携帯電子書籍はキャリア公式サイトというクローズな市場に守られ、
月額会員費制という安定したビジネスモデルと共に毎年右上がりの成長をみせた。

5年前、こんな読みづらいもの誰が読むんだと思っていたので
こんなに市場が広がるとは想像できなかった。

では何故ここまで市場が大きくなったのか?
次回はこの辺を分析してみたい。