先月(2021年5月)末に地上波テレビでアメリカ・ハリウッド版のゴジラ(ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ)がオンエアされました。ラドンやモスラなど東宝の映画でお馴染みの怪獣も出てくるし、稀代の悪役(悪怪獣?)、キングギドラも登場するわで、ゴジラと同学年の筆者としてはなんとも言えない気分を持ちながら観ました。怪獣に親しんだ世代が世界にいて、今もまた再生産されている。自分たちだけではなかったのだ、と。

 

 ストーリーは元々荒唐無稽なのが怪獣映画なので、面白ければそれで良いとなりますが、どうにも違和感を感じたのはゴジラの姿です。

 

 ゴジラを現実的に肉食獣と定義するのは間違っているのかもしれませんが、凶暴な肉食獣は、捕食した獲物の肉を噛み切り、骨まで砕くような巨大で頑丈な顎を持っているのが常です。ライオンや虎、ワニ、それにティラノサウルス。多くに当てはまるものと思います。

 

 そこから考えると逞しい筋肉質のボディはともかくとして、頭骨が小さすぎ、顎も貧弱。生命あるものが本能的に知る危険な生命体の特徴が希薄に思えます。むしろゴジラの象徴ともいえる背鰭群のせいもあって、草食恐竜としてよく知られているステゴサウルスが二本足で立ち上がったようにしか見えません。捕食される側の恐竜です。逆にゴジラを四足歩行にすると、そのまんまステゴサウルスに見えます。顔だけ怖そうに見えてもいけないと思います。

 

https://www.jurassicworld.jp/books/stegosaurus.html

 

 一方、悪役となるキングギドラは、東宝版のオリジナルに近いデザインで、日本古来のヤマタノオロチに通じる三つの頭を持つ怪物感満載の魅力的なキャラクター。それだけデザイン的に完成された怪獣といえるのでしょう。物語は悪役が魅力的であるほど面白くなりますよね。

 

 主役のゴジラ。荒唐無稽さの中にはリアルさも必要です。だからこそ現実の都市を戦いの場としているのでしょうから。戦うゴジラを考えたとき、そのシェイプには違和感しかありません。