その昔、バブル華やかなりし頃、クルマを題材として取り上げたTV番組の代表に「カーグラフィックTV」がありました。いや、今でもBSで新作が放映されていますから、正しい表現ではないですね。

 

ヨーロッパの高級車やスポーツカーをメインに取り上げ、それらに対する愛情をしっとりとした美しい映像で表現するスタイルを貫く、長寿番組です。趣味としてのクルマというコンセプトで制作されています。

出演は自動車誌「カーグラフィック」の元編集者・田辺憲一さんと音楽家でクルマに詳しい松任谷正隆さん。筆者にとっては、ちょっと縁遠い世界なので、最近はほとんど観ていないのですが・・・・・。

 

オープニングのタイトルバックに流れる音楽も松任谷正隆さんのオリジナルでなかなかのお洒落な曲、雰囲気のあるものです。YouTubeで検索するといくつかヒットします。何回かリニューアルされていて、ブガッティのエンジン始動から始まるオープニング  -  第二期が有名なようです。

筆者が気になるのはオープニングではなくて、エンディング。同じ曲のスローバーションが流れ、声優の古谷徹さんのナレーションで、美しい映像が流れたと記憶しています。今考えると地に足がついていないようなバブリーな絵だったような。100円ショップの出現前です。そうそう古谷徹さんと言えば、筆者の世代にとっては「星飛雄馬」なんですけど。声変わりませんね、素晴らしい。

 

筆者が目指すエンディングの映像はYouTubeにもなくて残念なのですが、そこで印象に残っているのは、ウインカーの映像です。ベンツかBMWのだと思います。雨が降る中、黄色ともオレンジともつかないウインカーがふんわり点いて、フウッと消える。多少スローにしてあったのでしょう。それもあって何か動くファッション誌(それも高級な)を観ているようで、詩情が溢れていて、アーッ、高級車ってこういうえも言われぬ雰囲気を持っているんだ、クルマって単なる工業製品ではない、人間の感性を刺激する芸術品のようだ、と思ったものです。また、スタッフの美意識、絵作りのセンスに、脱帽でした。

 

そんなウインカーの点滅に高級車 - プレミアムの神髄がある、と考えていたのですが、最近の輸入高級車というと、LEDのバルブを装着しているものが多く、ウインカーはパッと点灯して、タッと消える、極めてクリアな点滅をします。最初は違和感があったものの、慣れてくると、高級車のウインカーにはこういうのが相応しいと考える自分がいました。あれだけ、そして長い間、プレミアムなウインカーとはふわっとした点滅を繰り返すものだと思っていたのに。

 

クルマのデザインにも、同じことが当てはまることがあります。なんか違うなあ、と思っていたクルマがだんだんカッコよく見えてきたり。ま、そうでないことの方が多いんですが。

 

技術の進展は、人間の感覚、ものの見方ですら変えていってしまうのだなあ、と、クルマのウインカーの点滅を見るたび、改めて考えるようになりました。

後でもう一度考えたら、ただ単にベンツやBMWの御威光に惑わされていただけかも知れませんね。