トヨタのTVコマーシャルを見て驚きました。「TOYOTA H2」と画面に大きく表示されています。何、「H2」!!! これは大変だ。H2といえば、カワサキのハイエンドバイク。スーパーチャージャーで過給し、市販車世界最速ともいわれるプレミアムバイクです。それをトヨタがリブランドして、TVコマーシャルまでしているのか?

https://www.kawasaki-motors.com/mc/lineup/ninjah2carbon/

 

 もちろんそんなことはなくて、MIRAIという燃料電池車のコマーシャルです。燃料電池車の燃料は水素なので、その元素記号と分子構造から「H2」と表現したのでしょう。次世代電動車の本命の一つですね。トヨタの力の入れ具合が見て取れます。

https://toyota.jp/mirai/cp/h2/?padid=from_mirai_top_topics_h2

 

 確か25年ほど前でしょうか、ベンツが初代Aクラスを世に出した時、シャシーが二重構造になっており、それは将来の燃料電池のためのスペースであると説明されていたと記憶にあります。さらに、5年後までには数万台の燃料電池車を販売予定ともリリースしていたような。でも全く実現しませんでした。ベンツもなあ、とガッカリしたりして。曖昧な記憶なので間違っているかもしれません。その場合、ごめんなさい。

 その次世代車が高価ではあるものの手が届きそうなレベルになった、その象徴となるコマーシャルですね。SUVスタイルでこの半額くらいの価格だったら、かなり売れるかもしれません。筆者も欲しい。

 一つ気になるのは、数年前エネファーム(家庭用燃料電池です)を検討したことがあるのですが、寿命はと訊いたところ、10年くらいと言われ、取り止めた経緯があったこと。クルマの場合はどうなんでしょうか。技術は進化しているでしょうから、寿命という点ではもっと伸びでいるのでしょうけれど。モーターもどうなんでしょうか。パソコンのファンなど、半年もするとうるさくなってきますから、気になります。

 

H2に話を戻します。クルマファンにとってみれば、「Z」といえば、フェアレディZでしょう。でも、バイクファンではカワサキの「Z」になります。輸出された900㏄「Z1」に国内向けの750㏄「Z2」、後者は「ゼッツー」と呼ばれていました。カワサキには他にもアイコンとなるアルファベットが2つあり、一つがブリティッシュレトロの「W」、もう一つがとことん速さにこだわった「H」です。「Z」も含めて、いずれも型式から来ています。この辺はトヨタの「86」と似ていますね。型式がやがて車名となる点がです。現行のカワサキのH2は、世界最速と言われた伝説のカワサキバイクの名前を頂戴しているというわけです。自社製品ですから、何の問題もなく、とてもいいマーケティングだと思います。

 

で、「H2」の「2」は何かというと、「Z」と同じく、「H1」というバイクがあったんです。これの次のバージョンということで「H2」となるわけです。この辺はバイクファンであればもうよくご存知のことでしょう。釈迦に説法になってしまいます。でもちょっと説明させてください。「H1」は2ストローク3気筒500cc。商品名は「500SS」、ペットネームはマッハIII(スリー)でした。3気筒であることと、当時、今でもですが最速の戦闘機の最高速度を連想させる秀逸のネーミングでした。これも十分速かったのですが、さらに他車に差をつけるべく開発されたのが、排気量を750ccに拡大した「H2」です。「750SS」(ペットネームはマッハIV(フォー))です。世界的にもファンが多いようで、フランスのバイク漫画では、スピード狂が乗るバイクとして描かれていましたっけ。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/カワサキ・マッハ

https://www.pinterest.jp/pin/472737292111902049/

 

過去の映画でも若き日のアラン・ドロン扮するギャングが警察の包囲網をウイリーしながら突破していくシーンが印象に残っています。(ここはさらに記憶が曖昧です。映画名も覚えていませんし、設定も出鱈目書いたかもしれません。カワサキ・マッハであったことは確かですけれど、H1かH2かは定かではありません。)

 

 現在は排ガス規制と燃費により絶滅の憂き目にあってしまった2ストロークエンジン。その加速は強烈の一言でした。一度ヤマハTZR250という2ストレーサーレプリカに試乗したことがありました。低回転域では、くすぶったような感じでイヤイヤをする幼児のみたいなのに、一旦パワーバンドに入るや否や、凄まじい加速力でスリムなアスリートに変身するのです。リッターバイク(1000ccクラスの4ストローク)と比べても勝るとも劣らずという感じです。もっとも、リッターバイクは凄まじい加速が長続きするのに対し、2スト250は一瞬なんですけれど。それでも排気量が倍、3倍あったら、一体どれほど凄かったのか。

 

 ある時、2スト250か350(cc)に乗ったことのある四輪のジャーナリストが、ヤマハRZV500という2ストローク4気筒500ccのレプリカバイクに乗ったところ、説明では「2スト250あるいは350に毛の生えたくらいの性能ですよ」だったのにそれはとんでもない「毛」だったと書いていたこともありました。

 

 もう今では望むべくもない2ストローク大排気量車。その恐れを知らない加速感をスーパーチャージャー搭載という他にはない手段で現在に蘇らせたカワサキ。一方トヨタの燃料電池車MIRAIは「H2」をアイコンに未来の姿を示しているように思えます。

最近のカワサキは他のバイクメーカーがやらないような製品を続々と送り出し、独特のポジションを作り上げているように見えます。メグロの復活、250cc4気筒のロウンチなども。ぜひトヨタの燃料電池車と同じように、環境に優しく、しかも個性的なバイクを開発していって欲しいものです。燃料電池バイク?電動バイク?それとも?