すっかり話題にもならなくなったアベノマスク。ようやく6月半ばに配布は完了したとのことですが、こんなに時間がかかっては上手くいったと言えません。でも、それ以上に問題なのは、誰も、と言って良いと思うのですが、ほとんどの人が着用したいと思っていないことです。現実に、アベノマスクらしきガーゼマスクを着けている人は、未だたった一人しか見たことがありません。
このマスクには決定的にファッション性が欠けています。デザインした気配が全くありません。これでは、ファッションやデザインに敏感な若い人たちと言うよりも、戦後に生まれ育った世代にとっては、例えマスクが不足していたとしても、配布されたマスクが実用性を充していたとしても、カッコ悪いものは着けたいと思わないでしょう。安倍首相のマスク姿を見て、カッコ良いとかどう見ても思えません。他の閣僚も官僚も着けていないことも、それを物語っています。市販のマスクでは、3Dデザインが普通なのに、平面的で、良い意味でのレトロ感すら無い。良く言われているように、小学校の給食で食事を配る当番が着けているようなデザインですから。
個人的な経験ですが、その昔、自分たちの商品にノベルティ、つまり景品を付けることを企画しました。値の張る製品でも無いので付けられるものは限定されます。ボールペンが精一杯。そこで色々探し、さらに予算を出来るだけかけたくない、と、日本製より半分以下の価格、三分の一くらいだったと記憶していますが、そんな新興国製のボールペンを選びました。より多くの人に配れるし、とほくそ笑んだものです。
ところが、その当時の新興国製のボールペンはまだ出来が悪く、インクが残っているのに書けなくなったものが続出してしまったのです。その時のお客の反応は忘れられません。ノベルティの提供者に対する怒りが生まれていました。タダで手に入れたものなのに。
タダほど怖いものはない、と言いますが、これは受ける側だけに当てはまるものではない、与える側こそ肝に命じなければならないのです。
思わず懸念してしまうのは、アベノマスクを企画し、承認した行政の人達に市井の人々の行動原理が全くわかっていないように見えることです。もっとも社会に敏感でなければならない人達であるのに。寄り添えていない。