ここ数年来、メディアで電気自動車(EV)についての記事を見ない日はありません。原油価格の高騰からガソリン価格の高騰に始まり、地球温暖化への有効な対策として、ハイブリッドカーが登場し、主役を占め続ける中、電気自動車、燃料電池車の炎がチロチロと小さく燃えていたのが、フォルクスワーゲンのディーゼル不正が契機となって、一気に電気自動車がクローズアップされてきました。実際には電動車という意味が正しいような気がしますが。いずれにしろ、バッテリー、つまり電池の進化があってこそでしょう。

 

 EVで良くも悪くも話題の中心にいるのは、アメリカの電気自動車専門メーカーのテスラ(Tesla)です。一回の充電での走行距離や走行性能など、ある意味、電気自動車のベンチマークとなっていることは間違いありません。他にもディーラーを介しないユニークな販売方法や、また、乗用車にとどまらず、電気トラックという思いもよらぬジャンルにも進出してくるなど驚かせてくれました。これらは創業者であるイーロン・マスクの成せる技なのでしょう。

 

 彼は、これまでの自動車業界の全てを疑うというか、忌み嫌っているようで、とにかく自分が思いついたことを全て良しとし、事業に落とし込んでいるような気がします。その中で一つ疑問に思うのが、テスラ車のドアです。第一にドアハンドル。テスラのドアハンドルはドアの中に埋め込まれていて、キーを持ったオーナーが近づくと自動的にポップアップする仕組みになっています。他の一般的なクルマは、高級車も含めていわゆるグリップ式のドアハンドルになっている中、これはいかにも先進的な仕掛けに思えます。でも、本当にそうなのでしょうか。以前、ドイツ車の安全に対する取り組みを取材したテレビ番組を見たことがあります。その中で、グリップ式のドアハンドルは数々の事故に学びながら生み出されたものと説明されました。

 

 

 ドイツの場合はご存知のアウトバーンがあり、クラッシュした時にはかなり大きなものとなります。救護に駆けつけた時、まずは乗員を車内から救出することが最優先されます。居住セルができるだけ原形を保っていることが前提なのですが、その際にドアが外側からしっかり開かねばなりません。事故にもよりますが、ドアは多少変形しているかもしれません。そんな状況があったとして、外部からドアを最も開けやすいドアハンドルの形状が今多く見られるグリップ形状なのです。上からでも下からでも手を入れることができます。経験上でも最も開けやすいというのは納得です。以前は日本車にも多かった、下からのみ手を入れる、いわゆるカンチレバー式のドアハンドルは軽自動車の一部を除き、ほぼ姿を消したと理解しています。グリップ式に比べると力を入れにくいのは考えるまでもありませんから。一方、テスラの自動ポップアップ式はどうでしょう。一刻を争うだろう状況で、もしドアハンドルが埋め込まれたままでいたら、救出作業に一手間以上の労力が必要になるはずです。事故が起きた時のことを考えれば、シンプルさが一番です。ドアハンドル一つにしても、自動車の発展に伴って、事故をも教訓に進化してきている、そんなかなり重要な歴史をテスラは、否定しているように思えてなりません。もちろん、筆者が不明なだけで、何かあった時にもドアを開けやすい仕組みが施されているのかも。その場合は謝るしかありませんけれど。

 

よく見られるグリップ式のドアハンドル。

 

 第二点は、モデルXの後部ドアです。ファルコンウイングドアとテスラ は名付けています。非常に狭い場所でも開くし、乗り降りもしやすいのだと、テスラはPRしています。ちょっとした仕掛けはありますが、いわゆるガルウイングドアの一種です。鳥の翼のように上に跳ね上がる形状ですね。このようなドアを採用したクルマはなくはありませんが、限られています。エキゾチックなスーパーカーぐらいです。ステーションワゴンやハッチバック、SUVなどバックドアは上に跳ね上げるものがほとんどですから、技術的には問題ないはず。コストの問題もあるとは思いますが、一番の問題はやはり安全性だと思います。もし車両がひっくり返った時、上下が逆さになった場合、跳ね上げ式の形状では、ドアが開かないんですね。こちらの問題点も乗員の救出です。ドアハンドルと同じくテスラは何らかの対策をしているかもしれませんが。フロントドアは普通に横に開くからいいんだというのはダメですよ。

 

 自動車にはこれを企画し、設計し、生産し、マーケットに送り出してきた長い歴史があります。その中で、様々な出来事を教訓に、試行錯誤し、必然的に収斂してきた形があると思います。革新性はとても大事だと思いますが、安全性という範疇では過去からの流れを尊重することはとても大事ではないでしょうか。また、そういうことを指摘しないメディアもメディアだと思います。気が付いておられる方もいるはずです。少なくともきちんとした説明をすべきと、考えます。

 

 

 ちなみに、アメリカのクラッシュテスト(NHTSA)では、クラッシュ時にドアが衝撃と変形で開いてしまうことはないか、というチェック項目はあるのですが、その後に外部からドアが開くかどうかという項目はないように見えます。どうやって開けたのでしょう?テスト時は窓ガラスを下げているようなので、内側から開けたのか?ご存知の方がいらっしゃったら、教えてください。なお、クラッシュテストでテスラは非常に優秀とされています。

 

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