高性能オートバイといえば、日本製という評価がかたまったのは、1960年代から。それ以前といえば、イギリス製のオートバイが最速、と言われていました。トライアンフ、ノートン、BSA、ベロセットとあまたあり、日本のオートバイメーカーもエンジン形式、フレームなどお手本にしていたようです。ホンダのCB450やカワサキのW1(メグロといったほうが正確ですかね)など、よく知られていますね。

 

 それらイギリスのオートバイメーカーの多くは、日本製オートバイメーカーの台頭により、市場から消えていきました。ですが、往年のブリティッシュバイクを懐かしみ、好む人も多くいるようで、トライアンフを代表として、復活したブランドが出てきました。そして単なるレトロに終わらない高性能メカニズムにより、世界でファンを再び獲得しています。ブリティッシュバイクならではの魅力で。そういえば、フランスのバイカーコミックに”Joe Bar Team”という有名なものがあり、登場人物がそれぞれの身上にあったバイクに乗っている設定がされています。クルマやオートバイはその所有者を表す、なんて。この辺は日本と相通ずるところがあります。ホンダのCB750Kを愛するもの、カワサキの750SSに乗るスピードマニア、ドカティ900SSにぞっこんなバイカー、ヤマハV-Maxのマッチョとか。その中でブリティッシュバイクしか乗らないというバイカーもいて、ポリシーとして絶対に日本製のオートバイには乗らないのだとか。多数派の日本車に対抗する変わり者という位置付けなんでしょう。

 

 それはいいとして、数年前でしょうか、イギリスのオートバイメーカーで知る人ぞ知る、高名なブランドが再興されました。それがブラフ・シューペリア(Brough Superior)です。トライアンフやノートンより一昔前、第二次世界大戦前に全盛期を迎えたメーカーです。一品一品を顧客のオーダーに基づいてハンドメイドしていく高級志向により、オートバイのロールスロイスと呼ばれていたそうです。そのブラフ・シューペリアがクラシックな外観に最新のテクノロジーをまとって復活したわけです。エンジンは過去に習い、V型2気筒。挟み角は広げられ、水冷とされていますが、スタイルは紛れもなくクラシックで、戦前の雰囲気を醸し出しています。オールEU製を謳っているのですが、イギリスがEUから離脱したらどうなるんでしょう。日本へと輸入する商社はまだ決まっていないようですね。走る姿はYouTubeで観ることができます。

 

 オリジナルのブラフ・シューペリアが有名な理由の一つに、一人のオーナーが挙げられます。納車されるはずだった8台目の前の7台目の所有車で事故に遭い、当の人物は亡くなりました。その人物とは、トーマス・エドワード・ロレンス(Thomas Edward Lawrence)。アラビアのロレンスとして知られた人物です。彼はアラビアからの帰還後、ブラフ・シューペリアを乗り継ぎました。愛車にはGeorge(ジョージ)と名付けて I(ギリシャ数字の1)からVII まで。そのGeorge VII でロレンスは命を落とし、先ほど書いたように、VIII にはロレンスが乗ることはありませんでした。

 

 ロレンスはオートバイが大好きだったそうで、聞くところによると次のようにバイク好きが涙ぐみそうな言葉を残しているとか。曰く「四輪のクルマより、オートバイの方が好きだ。なぜなら、歩行者にぶつかりそうになった時、オートバイは自らを投げ打って、相手を危険から遠ざけることができるから。」と。ただ、この出典を探そうと、幾つかのロレンスの著書を探してみたのですが、残念ながら見つけられませんでした。皮肉なことにロレンスは愛車のライディング中、郵便配達の少年が乗る自転車を避けようとして、転倒したとのこと。先の言葉が本当だとすれば、まさにその通りとなってしまったわけです。

 

 このロレンスの名が有名になったのは、やはり映画の「アラビアのロレンス」でしょう。古い部族という観念に囚われたアラビアの人たちに全身全霊でぶつかり、内側外側両面の困難に立ち向かいながら、アラブの独立を求めて、アラブ人と共にドイツが支援するオスマン帝国と戦う、しかし、結局は自身の自己矛盾に苛まれ、またイギリス上層部に利用されていただけと気づき、挫折するというようなストーリーです。映画で描かれたような、アラブの英雄というものではなく、食えない人物であったという説もありますが、それは知る由もありません。映画はアカデミー賞を7つ受賞し、砂漠の地平線から太陽が昇るところなど、非常に有名なシーンが目白押しでした。個人的には、主人公役のピーター・オトゥール、アラブのベトゥイン族のオマー・シャリフはもちろん、アラブのファイサル王子を演じたアレック・ギネスが印象深く残ります。イギリスの俳優がアラブ人役!アラビアなまりの英語に唸ってしまいます。「戦場にかける橋」にもイギリス軍人役で出演していたほか、若い方には「スターウォーズ」のオビ役で知られているのではないでしょうか。

 

 映画はイギリスに戻ったロレンスがブラフ・シューペリアに乗るところから始まります。そしてイギリスの田舎道を気持ちよくライディングし、事故に遭います。長い前置きでした。ここからが今回の眼目です。実際にロレンスが事故死したバイクのナンバーは「GW 2275」です。”George VII”です。で、映画で出てくるオートバイのナンバーは「UL 656」。画面で見る限り、このオートバイは間違いなくブラフ・シューペリアでしょう。そしてこのナンバーは、ロレンスが所有していたブラフ・シューペリア、”George VI”のナンバーなのです。1台前の所有車です。ということは、映画では本物のロレンスのバイクを使用したのでしょうか?それとも、全く関係のないブラフ・シューペリアにこのナンバーを付けたのか?もし、そうならば、「GW 2275」をつけたはず。このことについては、誰も触れていないと思います。もし、真実を知ってらっしゃる方がいらっしゃったら、ぜひ教えていただきたく、お願いします。

 

 

ナンバーを確認できるシーンを、イラストで描きました。

 

PS:LINEのスタンプを作成しました。よろしかったらチェックしてみてください。

https://line.me/S/sticker/4740368

https://line.me/S/sticker/4895085

https://line.me/S/sticker/5027358

以上です。お願いします。