おそらく、世の中の財務・経理・税務の仕事の中で、最も少数精鋭で報酬が多く、それ故あまり情報が出回ることが少ないのではないでしょうか?狭き門ではありますが、USCPA取得者のキャリアとしては、ワークライフや報酬面などの魅力は高い外資金融の経理部とその入り方について説明して行きます。

 

さて、形式的なことは業界研究の本などに任せるとして、ここでは三大経営要素のヒト・モノ・カネに無理矢理照らし合わせて、実態を良し悪し抜きに、客観的に書いて行きます。

 

なお、モノ編は興味がある人だけ読んでください。興味がなかったら長くて、つまらないです(笑)

 

 

(2013年の記事をアップデートしました)

 

 

外資金融経理 - ヒトについて

 

  • 組織と人材

トップの部門長はCFOで、その下に経理・財務・税務の各チームがあります。最も、会社によって組織形態が違うので、中にはCFOとは言うものの、実質経理部長なことも。
外資系であるためか、USCPA合格者は比較的多いですが、ライセンスまで取得している人はほとんどいません。みんな試験合格で放置か、たまにCertificate取ってたりします。中には日本の公認会計士や税理士も少数ながらがいます。

経理部として新卒を採用することは少なく、即戦力になる人か、他業界などで数年の会計関連の経験のある有資格者の若手を採用することが多いです。

あまり人を一から育てるという環境ではないため、若手が伸びるかどうかは本人とその上司やチームメイト次第でしょう。いずれにしてもわからないことはどんどん自分から質問して行く積極的な姿勢が必要です。

 

  • 部内の実態
経理に限らずバックオフィスは全体的にそうですが、ワークライフバランスが比較的良く、給料が世の中一般よりはいいので、その気になれば苦労なく長いこと勤務することが可能です。

あまり出世欲もなく長く居座りたい人は、仕事に自分しかできない聖域を作りたがります。これは、価値がないと思われたらクビになるリスクが他業界より圧倒的に高い職場における、最も楽して自分の価値を高めるための常套手段です。

そんな人から引継ぎを受けることになったらそりゃあもう、地獄ですね。

一方、知識も経験もあるレベルの高い人材は大体これまでに転職も複数回、経験しているのが普通です。自分の市場価値についても考えて、能力を磨くことをある程度意識していることでしょう。2~3年で転職するなんてことも比較的に普通に起きる話です。
  • 上司の権力
外資系投資銀行は上司の言う事はある種絶対です。

採用、解雇、ボーナス額の決定などは部門長(経理ならCFO)に多くの権限がありますので、好かれれば昇進もあり得ますが、嫌われるとボーナスの著しい減少やクビすらもあり得ます。従って、上司に反論する人は極端に少なくなります。

上司と反りが合わなくて反論したりケンカを繰り返したりすると、大概の人はそのうちいなくなるので、段々と上司に迎合する人ばかりが残ることになります。つまり、究極のYes Manの集まりです。そうして王国が築かれるのです。

 

外資金融経理 - モノについて

経理における「モノ」ってなんぞや? って話ですが、ここでは、経理というサービスを提供すると捉えることにします。大きく分けて、財務会計、管理会計、そして経費などの支払いをする買掛金・ペイメント(支払い)のチームに別れることが一般的かと思います。

  • 財務会計

財務会計チームでは、USGAAPないしはIFRSで本国にレポートするチームと、日本基準で金融庁や日銀などの監督官庁への報告をする仕事に別れます。また、このチームでは外部向けの単体決算書と注記の作成や、会社によっては税務申告なども行っています。一般的な経理業務全般に携わるのがこのチームということですね。

やはり、一番会計知識を要するのは財務会計です。会計知識を有した上で、どう処理するべきかを考えたり、経済実態を考慮した場合にどう開示するかなどを考える必要があります。
しかしながら、reconcileや証券会社に求められる自己資本規制比率の計算など、毎日ルーティーンで退屈な仕事もめちゃくちゃ多いです。また、何か特殊な事象などがあると、イチイチ本国の意向を確認しなければならないのは外資ならではの特徴です。

そして何よりも、最後の砦です。上流で間違えたのもここで見つけなくてはいけません。監督官庁に提出した後に時間が経ってから大きな間違いが発覚した場合には、CFOが呼び出されてちくちく怒られ、ゲンナリして帰ってきます。人為的ミスを100%なくすのはもちろん無理ですが、それを求められます。

 

どこぞの半沢直樹のようにオネエの金融庁検査官を出し抜いたり仲良くなったりと言うのは、現実にはちょっと難しいですね(笑)


金融機関の会計は事業会社のものと多少違う所も多く、どの金融商品がどのように取引されたらどういう仕訳が流れるかなどはこのチームではしっかり把握していないといけません。地味なくせに、システムにエラーが起きた時の仕訳の修正は、取引量が多いことからも、相当大変だったりします。

 

  • 管理会計

管理会計チームは、Budget(予算、収益・費用計画)を作成して、その後毎月の実績と比較分析を行う部署です。会社の経営陣はここで出される予算と実績を必死に睨めっこして今後の方針を決めて行くことになるので、非常に重宝される仕事であり、ある意味で美味しい仕事かもしれません。

 

最も、会社で使っているシステムにもよりますが、正しい数字がシステム上流れてこなくて、ひたすら上流のシステムと帳簿の間で数字が合うまでReconcileを夜中まで延々とせざるを得ないことも多く、ヘトヘトになることも頻繁にあります。投資銀行は長い歴史の中で自社のM&Aも多く経験してるため、システムは相当にツギハギだらけな上に一つ一つの金融商品の取引が複雑なんですよね。おかげでエクセル作業も多く残っていることも多いです。



管理会計の部署は、多くの場合、会社のどの部門が利益を上げているかを分析するRevenueチームと、経費を分析するExpenseチームがあります。

Expenseチームでは全社共通で発生する費用をどうコストセンター内で配賦(Allocation)するかなどの議論も行われます。地味ではありますが、会社のコスト構造の理解には繋がって行くでしょう。

Revenueチームは、ミドルオフィスでトレーダーと直にやりとりをしているチームとの接点がが多く、会社の様々なトレーディングの内容に触れる機会も多くあります。バックオフィスとは別会社かと思うくらい雰囲気が違うフロント側も少し覗けます。

一方、各トレーディングデスク毎のPLも管理している部署でもあるため、間違えるとフロントからものすごいクレームがきます。ボーナスに直結するから、当然ではありますが。

 

またそもそもの話ですが、投資銀行においてはお金を稼いで来る部署が間接部門をも養っているという考えの元に成り立っているので、経理は新しい商流が問題ないかを聞かれることはあっても、基本的にはほとんど事後報告的にしかデータが回ってこないなんてことも。

 

この辺はフロント至上主義なんですよね。まぁ、仕方が無い部分もありますが。

 

 

管理会計は場合によっては会計をきちんと理解していなくても意外に回ってしまいます。基本的にPLしか見ないし、システム間のReconcileをすることはあっても、BSは見ていないので、あまり会計的な発想はしていない印象が強いです。その一方、PLについては相当シビアですけどね。

 

また、痛い点として、日本語を使う要素がそれほどないので、海外アウトソースの対象にはなりやすいでしょう。会社によっては既に日本にないこともあり得ます。

 

  • 買掛金及び経費支払

財務会計と管理会計が経理の両輪ですが、その数字全ての基となる細かい一つひとつの支払業務を行っているチームです。世間一般の『経理』のイメージそのものですね。毎月請求書が来て、その支払いを行い、仕訳を切る。必要なら前払いや未払い(Accrual)の処理をします。

ちなみに、このチームでは、株のトレードの約定代金の支払いなどは行っていません。同じくバックオフィスに位置する、オペレーションチーム(経理ではなく、業務部に相当)が約定の株数や代金を東証などの市場や他の証券会社などとリコンサイルを行った上で受領・支払いをしていてるので、経理では財務会計チームに質問こそきますが直接支払いなどは行わないのです。

買掛金チームで取り扱うものは本業と直接的にはあまり関係ない費用です。例えば電気代とか、家賃とか、社内の内装工事代とか、メール便の料金支払いとか・・・。

 

ただし、請求書自体を受け取る処理は必要ですが、毎月の仕訳を切る仕事に関しては既に海外にアウトソースされている会社がほとんどであり、国内の人は人数は少なく帰りも早い傾向にあります。


ところで、外資系投資銀行は、コストの約8割が人件費です。
その内の8割くらいはフロントのトレーダーやバンカーの給料&ボーナス。

給与やボーナス関連の仕事は匿名性が要求されるため人事部のみが扱うことが多く、経理では処理方法は理解していても、実際に処理は行いません。

最も、前述の管理会計チームは部門ごとの収益やコストを見ているので、各チームのボーナスの規模間はみることができます。そして大概自分のボーナスと桁が1つ違うのを見てとても微妙な表情をしていることが多いです。
 

 

外資金融経理 - カネについて

外資金融の給料は基本的に年俸制です。年初に、

『あなたの来年の給料はxxxx万円です。』

って書いてある通知をもらいます。月収はそれを12で割った金額となります。残業代は一切付きません。ですが、上記年俸の外で年に1回のボーナスが出ます。

ボーナスの金額は会社の業績が大きく影響します。例えば、今年の東京オフィスは業績が悪かったとなると、本国から東京へのボーナスの割り当てが減ってしまいます。マネージメント層はボーナスをより多く勝ち取る闘いをするわけです。

各拠点への配分が決まれば、後はその中でパイの取り合い合戦です。
最も、ここも業績のいい部署・悪い部署で大きく金額が変わってくるものです。そして、各部門長は自分が得た額を部門のスタッフに分配していく、というシステムです。

ハッキリ言って、外資金融の人はこのボーナスのために仕事をしていたと言っても過言ではないほどなので、もはや戦争です。

・・・というのが一般的なフロントのお話。



バックやミドルはというと、給与体系は一緒ですが、ボーナスの金額は毎年たいして変動しません。というか、会社全体の人件費水準から照らすと、大きく変動するほどもらってない、というのが正しいかもしれません。とはいえ、グローバルの会社全体や、拠点全体の業績が悪ければ多少は影響が出ることは出ます。

ちなみに、個人への支給額は、最終的に部門長判断による配布制です。基本で「何ヶ月分」という概念がないので、部下の能力やゴマスリ度合いに応じて傾斜をつけることもよくあることです。

 

以前、CFOと大喧嘩し、その後の態度が悪いせいでクビになった人は、ボーナスがゼロだったという話も聞きました。その分、部内の誰かのボーナスが増えていることでしょう。


では、経理にいると、実際にみんなどれくらいもらえるんだ?って話ですが・・・。

 

さて、では具体的な給与はいくらくらいか?という話ですが、以下の記事に記載しています。少し古い、2013年頃の情報ではありますが、現在でも大きく変わっていないかと思われます。

 

 

 

 

お金が全てだとは思いまさんが、とは言え、お金に困って本当にやりたいことの選択肢が狭まってしまっては意味がないので、やはりお金はたくさんあるに越したことはないと思ってます。

でも、カネのためにつまらない仕事を我慢する人生は、しんどいですけどね。。何事もバランスでしょうか。