町田町蔵「ほな、どないせぇゆうね」1987年 | 音楽温故知新<A Night With Johnny★Marr>
「これ遊興費で買うな。 生計費(イノチ)削れ。」
$音楽温故知新<A Night With Johnny★Marr>
1. 神の扉(こうべ),開けたまへ
2. ずぼらの花嫁(インストだて)
3. 木偶(でく)の棒陀羅(ぼうだら)
4. 烏滸(おこ)の沙汰なり

「メシ喰うな!」(INU/1981年)、
「牛若丸なめとったらどついたるぞ!」(THE ORIGINAL INU/1984年 ※1979年の音源。未CD化)、
「どてらい奴ら」(町田町蔵from至福団/1986年・カセットブック、1991年CD再発)
に続く町田町蔵の4作目のアルバム。
アルバムと言っても収録時間17分のミニ・アルバム。

個人的にお気に入りの町田町蔵(町田康)。
サインを貰いに行ったとき、私が持ってるのと同じYohji Yamamotoのスーツを着てた、なんて事も有った。
彼の作品は全て好きであるが、特に「どてらい奴ら」と本作「ほな、どないせぇゆうね」が良い。

「どてらい奴ら」は、パブリック・イメージ・リミテッド等の音のコラージュ的手法、ザ・ポップ・グループ等のミスクチャー・サウンド手法に、エレクトリック・サウンドと演劇的な要素を取り込んだ、実に斬新で素晴らしいコンセプチュアルな作品であった。

これらの手法は、本作「ほな、どないせぇゆうね」にも生かされている。
わずか17分のアルバムであるが、この中には、サイケデリック、ブルース、パンク・・・様々な音楽が詰まっている。
歌詞は意味不明であるが、意味が明確、論理的、具体的であるとイメージの拡がりが制限されてしまう。
町田町蔵の詩は「イメージ」「言葉の響き」「面白さ」「インパクト」を優先したものであろう。

ヴォーカルスタイルも、聴き手が飽きない様、歌唱のみならず、印象に残る「台詞」をふんだんに盛り込んでいるのだと思う。
そもそも「歌」は「語り」でもある。
町田町蔵は、ヴォーカルでありながら、俳優でもある。
そんな風に思っている。

「様々な音楽」「喜怒哀楽、驚、嘆、笑・・・あらゆる感情」アイディアが詰まった作品。
どう考えても、このバラエティと感情の起伏は、完全に意図的なものだ。
散漫にならずバランスも取れており、拘りが貫かれている部分はコンセプチュアルでさえある。
このアルバムを聴いて「病気」「狂気」と評する人は、全く何も分かっていない。
純粋に音を聴いて欲しい。
海外のサイケ・パンク・プログレ系の音が好きなロックファンに聴いて欲しい位だ。

町田町蔵の個性が良く出ている力作であり、ロック史に残る唯一無二のオリジナリティを持った名作だと思う。
こんなに素晴らしい作品が廃盤とは、なんとも嘆かわしい。



1. 神の扉(こうべ),開けたまへ
2. ずぼらの花嫁(インストだて)
3. 木偶(でく)の棒陀羅(ぼうだら)
4. 烏滸(おこ)の沙汰なり