何が起こるかも知らされず
何かが起こるとどこかで信じ
しばし待っている
ある時間の影像を
人間は待機する装置である
そのトランクの中には神経の根が
方々張り巡らされている
だからこそ追い剥ぎや引ったくりは
その人の精神を余白に浸すのだ
身包みだけの無名体へと
彼は透き通ってしまう
その時、機械こそより人間らしく
より生命を備えた愛らしいものだと
閃光が走り抜ける、上へ上へと
確信するのだ、滑稽とはいかなるものか
不在の所有者、不在の使用者の
おどけた表情が双眼鏡の向こうに
浮かび上がる、月の貝殻を通して
山高帽とステッキと外套が
我々を置き去りにして
しおりのない旅に出る
船着き場には彩々の観念が舞う
もう二度とその手書きを見ることも
ないだろう、あの接続法の海塩のため
矯められた中括弧のため
その権利すらささくれた藤籠から
漏れていく、縁のない共鳴洞へと
渋皮混じりの葡萄酒のように