個人的村上春樹Best10 第5位  | [A] Across The Universe

個人的村上春樹Best10 第5位 

個人的村上春樹Best10 

第5位は






「1Q84」






なぜニュースになるほどのベストセラーになったのだろう。

あれほど世間で話題になったのは、ノルウェイの森以来ではないだろうか。
おかげで、入手するのにしばらく時間がかかった。

やれやれ。

大好きな作家だし、多大な人気があることも承知しているが、万人受けする作家ではないような気がするのだが。
独特の展開と文章を受け入れられない読者もたくさんいただろうに。


世間よりもやや遅れて読んだ村上春樹の「1Q84」は、期待を裏切らない非常に面白い小説だった。

驚いたことに、彼が書いた以前の長編小説よりも格段に内容が「わかりやすく」なっている。

このストーリーがだめな読者は、おそらく彼のこれまでの長編作品のどれを読んでも受け入れることができないだろう。
それほど「村上臭さ」が以前より薄れている。

相変わらず、ある種のメタファーなのか、それとも読者に謎を仕掛けているのか、わかりかねる部分が多々あり、戸惑う面はある。

それでも、以前よりもストーリーに吸引力がある。
淡々とページを繰るのではなく、次の展開が待ち遠しくて先へ先へと読み進むのは初めてかもしれない。


ストーリーは、彼得意のパラレルワールド。

登場人物は、新人が書いた小説の書き直しの片棒を担がされる、小説家の卵「天吾」。

もう一人は、美貌の殺し屋「青豆」。


それぞれ過去に複雑な家庭事情を持ち、現在はそれぞれたった一人で生活を送っている。


まったく関連性がない二人の物語が、あるところから微妙に交わっていく。

ところどころに散りばめられたヒントのようなキーワードは、さながら「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」のようだ。

しかし、このストーリーは天吾と青豆という登場人物が、それぞれのゴールを目指す。
そういった点でのストーリー展開は「海辺のカフカ」の要素もある。

日本赤軍、ヤマギシ会、エホバの商人、オウム真理教。
過去に実際にあったさまざまな事象を髣髴させる団体をベースに、小説家の卵と、美貌の殺し屋のストーリーは展開する。

これは間違いなく、村上春樹の生涯のテーマである「生と死」をベースにした純愛小説である。


あの日、教室でしっかりと握られた手。
その手のぬくもりを、いつまでたっても心から消すことができなかった。
その手のぬくもりの記憶だけで、人は生きていくことができる。



思い起こせば、ノルウェイの森も大ベストセラーだった。
今回「1Q84」がこれほどの部数が売れたのも、無意識に恋愛小説を人々が求めたからなのだろうか。

上下それぞれ500ページ以上の分厚いストーリーの果てにたどり着いたのは、驚くことに村上春樹が提示する「愛」だった。

第3部が今から楽しみで仕方ない。






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3 何が言いたいのだろう
2 村上春樹21
4 混沌の時代をシンプルに描く複雑な物語
1 げんなり
3 青豆さんって最初ビッチだと思ってたけど




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5 なるほどこれが村上春樹ワールドなのか
5 こんなハルキ初めて!
4 読ませる力はさすが!
5 現代の神話「1Q84」
1 ベストセラー?嘘でしょ。