神の子どもたちはみな踊る / 村上春樹 | [A] Across The Universe

神の子どもたちはみな踊る / 村上春樹

「地震のあとで」というテーマで書かれた短編集。

地震とは。

そう。
あの1995年の阪神淡路大震災。


すべての話に震災が絡んでくる。

この短編集は私にとって特別な位置づけにある。
といっても、最初の話が「UFOが釧路に降りる」という題名で、私が釧路出身だからに過ぎないのだが・・・

おそらく村上春樹も釧路を訪れたことがあるのだろう。
春先の道脇の除雪された黒ずんだ雪や、街のはずれの石屋とラブホの並んだ通りなど、釧路に住んだことがあれば、ありありと目に浮かぶ場面が登場する。


震災を受けて書かれた、という背景からか、全体のトーンは総じて暗い。

しかし、震災がメインテーマになっている話は一つもない。
でも、あの悲劇の記憶が静かに重くひとつひとつの話に絡んでくる。


唯一、「蜂蜜パイ」という作品のみが心を落ち着かせてくれる。
女一人、男二人。
ずっと仲良くやってきた三人の関係が少しずつ変わっていく。
それでも絶妙なバランスをとりながら関係は継続していく。
みんな最後まで仲が良いのに、微妙に関係がずれていく。

柔らかな希望がこの作品にはある。

この作品集の最後にこの作品を配列したのは、やはりかすかな希望を見たいと言う村上春樹の願望もあるのかもしれない。

なんとなく「ノルウェーの森」を思い起こさせつつ、まったくフレーバーの違う作品に仕上がっている。





神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社
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おすすめ度の平均: 4.5
3 短いからこそのよさ。
5 個人的には『タイランド』も好みですが
5 感激のかえるくんが震災を救う
3 実体のない水
4 人の心の拠り所とは